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12話

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「ではこれで失礼させていただきます、国王陛下。
 いきましょう、ローズ嬢」

 正直意外でした。
 ここまで国王ともめたのですから、殺してしまうと思っていました。
 後回しにしてしまったら、国王が体制を整えてしまいます。
 我が家は家臣を私が殺してしまいました。
 正面から王家と戦う力など残っていません。

「心配しなくていいよ。
 謁見場には呪いの術式を残してきたよ。
 さっきの謁見の間にあった王家の魔道具は、全て書き換えた上に新たな術式も創り上げているから、いつでも殺したいときに国王を殺せるのさ。
 こうして国王陛下の髪の毛も手に入れているからね。
 残してきた呪いの術式を全てを国王の解除されたとしても、こいつで呪いをかける事も可能だよ」

「そうなのですね。
 私は何も知らないので、なにをどうしていいのか分かりません」

 本当に驚きの連続です。
 圧倒されるばかりです。
 家臣たちを殺して恨みを晴らしたのはいいですが、今後どうすればいいのか?
 全く分かりません。

「なにも心配しなくていいよ。
 悪いようにはしないよ。
 とは言っても、テンプル公爵家にとって都合のいいようにさせてもらう。
 させてはもらうが、ローズ嬢を殺したり恥をかかしたりしない事は約束しよう。
 公爵令嬢に相応しい礼を持って接すると約束するよ」

「信じています。
 ですがこれからどうすべきか教えていただけますか?
 怒りに任せて恨みを晴らしたのはいいのですが、後どうするべきか分かりません」

「そうだね。
 今直ぐというわけではないが、さっき話したことを真剣に考えてくれるかな」

「さっきの話ですか?」

 まさか!
 ガブリエル様との結婚話でしょうか?
 もしそうなら、一も二もなく応じさせていただきます!

「政略結婚の話だよ。
 ローズ嬢が僕の妻になってくれるのなら、平和裏に両家を統合することができる。
 家臣の減ったマルタン公爵家にうちの家臣を送ることができる。
 ローズ嬢も自分と敵対していた家臣よりは、僕の家臣の方が信用信頼できるんじゃないかな?」
 
 ああ、夢のようです。
 こんな幸運があるとは信じられません!
 私もバカではありませんから、全てがガブリエル様の謀略かもしれないという事は理解しています。

 国王相手にもあれほどの準備を整えていた方です。
 王太子の事も十分調べていたことでしょう。
 その関係で、アンナの事も、私の事も調べていたはずです。
 だから、私が陥れられることも分かっていて、こういう結果になるように誘導したのかもしれません。
 私がこうしてガブリエル様に夢中になっているのも、ガブリエル様の術によるものかもしれません。
 そんな事は分かっているのです。
 分かっていて、それでも構わないと思っているのです。
 このままガブリエル様を愛する心のまま、騙し討ちで殺されても構わないのです!
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