持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

第二章貴族偏

更迭

　私は全面的な抗争を覚悟していました。
　ベルハーヴェン伯爵家はもちろん、レオン第四皇子にまでケンカをふっかけたのですから、皇室皇国との戦いも覚悟しました。
　勝てないまでも、誇り高く戦う事を心の中で誓っていました。　

　マリア達弟妹も私の考えに賛同してくれました。
　領地で築城中の義父も母も、完成前の城に籠城する覚悟を伝えてくれました。
　義父と母だけでなく、領地にいる家臣達も、私と一緒に戦ってくれるとの事です。
　もちろん魔都にいる騎士団徒士団も、一緒に戦ってくれると言ってくれています。
　本当にありがたい事です。

　ですが、彼らを巻き込むわけにはいきません。
　少しでも早く、事を片付けないといけません。
　皇室皇国が動く前に、ベルハーヴェン伯爵家を皆殺しにすれば、皇室皇国も無駄な内乱戦争を始めないかもしれません。
　面目を潰されたと怒り狂って、全戦力を投入してくる恐れもありますが、今迄の皇室皇国のやり方からは、内乱を拡大させない政策をすると思っていました。

　以外だったのは、ドウラさんをはじめとした、新興城伯仲間が私の考えに賛同してくれたことです。
　皇室皇国から逃げ出すという以前の考えなら、一緒に別大陸に行くという考えに同調してくれましたが、士族から貴族に、しかも城伯家に叙勲されたのですから、友情よりも忠義を選ぶと思っていました。
　特にジョージ様達ゲイツ系の方々は、絶対に忠誠を優先すると思っていたのです。

　一番意外だったのは、ベルハーヴェン伯爵が全面的に詫びてきたことです。
　それも、私が殺しに動く前に、皇室の魔術師を使った緊急便で、全ての罪と責任を認め、巨額の賠償金を支払うと伝えてきたのです。
　ジョージ様かマルティン様が皇室皇国に連絡して、皇帝陛下直々にベルハーヴェン伯爵を説得したのでしょうか？
　それとも、私には絶対に勝てないとベルハーヴェン伯爵が判断したのでしょうか？

「この度の事はレオンの判断ミスであり、失政だった。
　だからレオンは更迭された。
　今日から私が魔都の城代となる」

　最初は信じられませんでした。
　皇帝陛下や皇国が失政を詫びたわけではありませんが、皇族であるレオン第四皇子が失政を行ったことを正式に認めたのです。
　画期的というよりは、その報復が恐ろしいです。
　私がなにか失敗した時には、ベルハーヴェン伯爵や皇国以上に厳しい責任を問われることになります。

「よろしくお願い申し上げます。
　ヨジップ第三皇子殿下」

「うむ、よろしく頼むぞ。
　では早速魔境の巡視に同行してもらおうか」