夢にまで見た異世界転移だけど、勇者に成る気はありません。引き籠って生きたいのです。

克全

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第二章

第49話:応援

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転移75日目:山本光司(ミーツ)視点

「今日は王都に泊まるから、城から出ないようにしてくれ。
 何かあったら直ぐに地下に逃げて、俺が戻るまで地上に出ないように」

「「「「「はい!」」」」」

 俺はネイと一緒に瞬間転移した。
 王都に作った孤児院に不安があったので、一時的にリアルトの拠点に戻って、リアルト゚で暮らしている寡婦や孤児達に安全第一の生活を指示した。

 支配下に置いた肉食魔獣をリアルトの都市内に放し飼いにして、敵が内城に入り込めないようにしているが、絶対はない。

 人間が相手なら絶対に負けなと思うが、まかり間違ってドラゴンが空からやってきたら、陸生の肉食魔獣ではどうしようもない。

 まあ、ドラゴンに襲われても壊れない物理と魔術の防御魔術を施している。
 ワイバーンの強さから考えて、ドラゴンブレスでも守り切れるように計算した。
 だが、慎重な俺の予測を超えた力を、ドラゴンが持っている可能性もある。

 そんな普通では絶対にありえない危険も考えて指示を出す。
 地上の内城をドラゴンブレスで破壊されても、地下に全く被害がっでないように、全身全霊を込めて地下に避難所を築いていた。

 俺の指示を受けたリアルトの寡婦と孤児は、普段は好きな場所で寝起きしているのだが、今日は避難がしやすい地下階段の近くで眠る。

「王都に行ってくる」

「「「「「行ってらっしゃいませ、お気をつけて」」」」」

「テレポート」

 気がかりだったリアルトの手当てをして王都に戻った。
 俺の優先順位から言えば、リアルトの方が王都よりも遥かに高い。

 だが、それでも、今は王都の危険度が高すぎた。
 リアルトの寡婦や孤児に自助を指示しなければいけないくらい、王都は危険だ。
 だから、王都の孤児院を優先して守る事にした。

 王都の孤児院で1番大きい元商家には、俺の部屋がある。
 魔術を使う所を見られないように、誰も部屋に入らないように命じている。

 元の持ち主だった商人が用心深い性格だったので、執務室と寝室に加えて護衛が控える部屋までついている。

 外につながる窓のある部屋は、護衛の控室だけだ。
 奇襲や暗殺を恐れて、寝室と執務室には窓がない。
 だから瞬間転移魔術を使っても誰にも見られない。

「院長、冒険者ギルドから追加の警備員が来られました」

 孤児院の世話役になった寡婦の1人が、部屋の外から声をかけて来た。
 今日の地回りの襲撃で、警備を更に強化しなければいけなくなった。
 至急応援の冒険者を送って欲しいとギルドに依頼していたのだ。

「会います、入ってもらってください」

「はい、どうぞお入りください」

(パーソナリティ・アプレイザル)

 俺は言葉に出さずに人物鑑定魔術を使った。
 魔境で見境なく狩りを繰り返したおかげでレベルがあった。
 これまで使えなかった新しい魔術を、幾つも使えるようになった。
 その1つが人の能力と性格を知る事の出来る魔術だ。

「「「「「失礼いたします」」」」」

 元商家のかなり広い執務室兼応接間が狭くなるくらい多い、37人もの冒険者が完全武装のまま入って来た。

 普通なら信頼する護衛に守られた状態で、冒険者の代表1人だけを入室させるか、武装解除した状態で会うかだが、人物を確かめたかったので全員に会う。
 冒険者程度では俺の脅威にならないので、警戒する必要も無かった。

「よく来てくれました、私が孤児院の院長カーツ・シャッフルです。
 話は聞いてくださっているでしょうが、今日の昼に地回りに襲われました。
 ギルドを通じて王都の警備隊に訴えましたが、未だに動きがありません。
 地回りは、良識派以外の貴族とつながりがあると思われます」

「なんだって、貴族が絡んでいるのか?」
「そんな話聞いていないぞ!」
「貴族の手先相手に戦って無事に済むのか?」
「ばかやろう、俺達も良識派貴族がバックについているだろうが!」
「そうだ、相手が貴族であろうと恐れる事はない!」

 「お静かに、なので連中は、少々の事をしても捕まらないと思われます。
 夜襲、それも放火の可能性もありますので、厳重な警備を願います」

「そんなバカな、これまでの内乱でも放火だけはなかったぞ?!」
「放火なんてやったら、大貴族だって処罰されるぞ」
「幾ら何でも放火まではやらないだろう、考え過ぎだ」
「黙れ、最悪の状況を想定して準備するのが冒険者だ」
「そうだぞ、甘い見込みで依頼に望んで、死んだ奴は数えきれないんだぞ!」

「まだ覚悟のできていない方が数多くいるのですね。
 大貴族、前宰相の手先と戦う事が怖い方は、帰ってくださって結構です。
 戦いの最中に逃げられると、他の方にまで憶病がうつってしまいます」

「なんだと、俺達を馬鹿にしているのか?!」
「俺達は民を守る誇り高い南冒険者ギルドの会員だぞ!」
「そうだ、俺達の誇りを疑うような依頼人には従えない」
「「「「「そうだ!」」」」」

「逃げる言い訳は差し上げました、前宰相が怖い方は帰ってください」

「なんだと、依頼人でもその暴言は許せん!」
「我々が前宰相如きを怖がるわけがないだろう!」
「そうだ、我らは誇り高い南冒険者ギルドの会員だぞ」

「そうだ、お前のような奴の依頼は受けられない!」
「そうだ、ギルドの誇りを踏み躙るような奴の依頼は受けられない」
「俺達はギルドの誇りを守るために依頼を断る」
「「「「「そうだ!」」」」」

「「「「「え?」」」」」

「何を言っているのだ、1度受けた依頼を断るだと?」
「相手は女子供を襲う大悪人だぞ?」
「今襲って来てもおかしくないのだぞ?」
「それを、少し暴言を吐かれたくらいで断るだと?!」
「まさか、お前ら本当に臆病風に吹かれたのか?!」

「ばっ、バカな事を言うな!」
「俺達は臆病風に吹かれたわけじゃない、ギルドの誇りを守るためだ!」
「そうだ、伝統あるギルドの誇りを守るために依頼を断るんだ」
「お前らこそ、ギルドの誇りを踏み躙られたのに依頼受ける気か?」
「「「「「そうだ、そうだ!」」」」」」

「内輪揉めはその辺にしてくれ。
 前宰相の手先が相手でも、命懸けで戦う気概のある奴だけ残ってくれ。
 憶病者はさっさとギルドに帰って震えていろ」

「「「「「なんだと?!」」」」」
「その生意気な口を利け無くしてやる!」
「俺達に守ってもらわないと生きていけない弱虫が!」

「「「「「あ!」」」」」

 思っていた通り、いや、人物鑑定魔術で確認した通り腐った連中がいた。
 幾ら結成の起こりが誇り高い伝統ある南冒険者ギルドでも、時の経過と共に腐敗していくし、外部からスパイや工作員が入り込む。

 悪逆非道な王侯貴族と敵対してきたのだ。
 性格の悪い王侯貴族が謀略を仕掛けてくるのは当然だ。
 特に今のような内戦状態なら、目障りな南冒険者ギルドには謀略が激しくなる。

 襲い掛かって来たクズには、それ相応のお礼をしなければいけない。
 何時敵に寝返るか分からないような連中は、叩けるうちに潰しておく。

(スリープ)

 ネイに人を残虐に潰す光景は見せられないから、眠ってもらう。
 ネイの目の前で残虐な事をした記憶が薄っすらと思い出されたが、もう二度とやらないと決めているので、過去の事は振り返らない。
 
 グッシャ、ブシュ

 カーツ・シャッフルの時は、できるだけ魔術を使わず、体術だけで問題を解決する気だが、手の内を明かし過ぎる気もない。

 北冒険者ギルドで使った、下顎骨と腰椎の粉砕で止めておいてやる。
 一瞬で22人の冒険者を再起不能、寝たきりにしてやった。

「南冒険者ギルドの方々でも、半数以上が誇りを忘れられたようですね」

「……依頼人を襲うという恥知らずな行動には反論の余地はないが、ここまでやる必要があったのか」

 残った15人の冒険者の中で1番強い奴が言って来た。
 自分達が悪いのは分かっているようだが、1番問題がある点を分かっていない。

「あんな連中を戦力に数えて依頼を受けて、途中で裏切られたらどうする気だ?
 お前たちが死のうが生きようが知った事じゃないが、女子供が死ぬんだぞ?」

「それは、幾らなんでも、そこまでは腐っていない……」

「自分達の憶病、汚さを指摘されただけで依頼者を襲うような連中を信じるのか?
 そんな甘い考えて、悪逆非情な貴族から民を守れると思っているのか?
 女子供を巻き込んで死なす前に、冒険者を止めた方が良いんじゃないか?」

「くっ!」

「とりあえず、今日はこいつらを連れて帰ってくれ」

「しかし、それではここの守りが……」

「ここは俺が何とかする、何時裏切るか分からない連中ならいない方がマシだ。
 とっとと出て行け、恥知らず!」
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