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第一章
第32話:ソフィアとピクニック
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バレンシア王国暦243年10月21日:冒険者ギルド・エディン支部
「お兄ちゃん、今日は何を狩るの?」
「何でもいいよ、ソフィアが狩りたい魔獣を狩ればいいよ」
「私は殺したくないの……」
まだ幼いソフィアが哀しそうな顔をしている。
自分が殺されかけた事で、命の大切さを知っているのだ。
同時に、人を襲う魔獣を狩らなければいけない事も知っているのだ。
「いいよ、今日は何も狩らない日にしよう。
一緒に魔境を散歩して、お弁当を食べよう」
「うん、お兄ちゃん」
グレイソン副支部長は交渉のために王都に行っている。
その間にソフィアに何かあったらグレイソン副支部長に合わせる顔がない。
アレイナスライムが守護しているから、何か起こる事など絶対にない。
俺がソフィアと一緒にいたいから、見守ると言っているだけだ。
教会や王国の犠牲になった子供達の復讐は、どれほど時間がかかっても完璧にやり遂げてみせる。
教会を滅ぼし神官を皆殺しにする。
場合によったら王家を滅ぼし王国を解体するかもしれない。
だがそんな復讐ばかり考えていたら心がすさんでしまう。
心を癒す時間がどうしても必要になる。
ソフィアとのピクニックは最高の癒しだ。
「お母さんがお弁当を作ってくれたの?」
「ええ、ソフィアの大好きな果物と野菜、チーズとバターを使ったサンドイッチを沢山作ってありますよ」
「うれしい!」
俺が貸し与えてからずっと一緒にいるのに、未だに慕い慕われる溺愛の母娘にしか見えないが、実際には血のつながりがないどころか、スライムと人間だ。
現にソフィアを乗せているアレイナスライムの一部は強大なナメクジだ。
いや、スライムが魔境にあわせて長く身体を伸ばしているだけだ。
本体部分はソフィアの母親そっくりの姿に変化している。
アレイナスライムはできるだけスライム感を出さないように、ナメクジ型部分と完全に分離している。
普通は俺の命令がない限り分離などしないのだが、ソフィアの為なら俺の命令がなくても人間感を出そうとしている。
俺が従魔にして育てたから、人間味が出てしまったのだろうか?
ソフィアには悪いが、時間を無駄にするわけにはいかない。
ソフィアの前で魔獣を殺すわけにもいかないが、狩りはしなければいけない。
だからソフィアに見えない遠くで魔獣を狩る。
サクラは元々砦の周囲10キロメートル四方に探索網を広げている。
その気になれば一瞬で一点に集まる事ができる。
亜竜や属性竜ていどなら、身体の1万分の1を集めるだけで狩る事ができる。
まして今周辺にいる赤魔熊や赤魔蛇以下の魔獣なら、探索網のまま狩れる。
そんな簡単に狩れる赤魔熊や赤魔蛇程度でも、この国の冒険者には狩れない。
レベルの高い個体だと、エマでも狩るのが難しい。
「お兄ちゃん、あのお花きれい!」
ソフィアはとても眼が良いようで、高い木の上に咲いている赤い花を見つけた。
直ぐに採ろうとするアレイナスライムを目で抑えて俺がとる。
軽く跳ぶだけで三十メートルはジャンプできる。
「髪に飾ってあげるよ」
俺が前世の死んだ年齢のままだったら他人にはどう写るだろうか?
犯罪者に見られるだろろうか?
孫娘と爺さんに見てもらえるだろうか?
いや、曾孫と曾祖父と言った方が良いだろう。
だがこの世界では、俺はまだ十歳の子供だ。
ソフィアが八歳だから、誰が見ても子供が遊んでいるだけだ。
前世には『男女七歳にして席を同じゅうせず』という故事成語があった。
しかしいくら何でも早すぎるだろう。
「私もお兄ちゃんに花を飾ってあげる。
お母さんが花冠の作り方を教えてくれたの」
教えてくれたのは、幼い頃に死んだ本当のお母さんか?
それともアレイナスライムなのか?
サクラとは、俺が三歳児の頃から一緒に生活していたから。
そのせいで母性が強いのかもしれないが、いくら何でも花冠の作り方を教えるのは、守護の役目と関係なさ過ぎるだろう。
まあ、スライムでなくてもソフィアのかわいらしさには魅了される。
魅了されているから、恥ずかしいのを我慢して花冠を飾ってもらう。
相手が成人した海千山千の女性なら、絶対にさせない。
純真無垢な幼い子供だから、心を傷つけないようにしている。
大人には子供を助ける責任があるのだ!
身体だけでなく、心も守ってあげなければいけない。
まあ、俺も見た目は子供だが、中身は糞爺だからな。
魔境で花の咲く場所まで移動して、完成するまで大人しく待たなければいけない。
「はい、お兄ちゃん、にあっているよ」
「お兄ちゃん、今日は何を狩るの?」
「何でもいいよ、ソフィアが狩りたい魔獣を狩ればいいよ」
「私は殺したくないの……」
まだ幼いソフィアが哀しそうな顔をしている。
自分が殺されかけた事で、命の大切さを知っているのだ。
同時に、人を襲う魔獣を狩らなければいけない事も知っているのだ。
「いいよ、今日は何も狩らない日にしよう。
一緒に魔境を散歩して、お弁当を食べよう」
「うん、お兄ちゃん」
グレイソン副支部長は交渉のために王都に行っている。
その間にソフィアに何かあったらグレイソン副支部長に合わせる顔がない。
アレイナスライムが守護しているから、何か起こる事など絶対にない。
俺がソフィアと一緒にいたいから、見守ると言っているだけだ。
教会や王国の犠牲になった子供達の復讐は、どれほど時間がかかっても完璧にやり遂げてみせる。
教会を滅ぼし神官を皆殺しにする。
場合によったら王家を滅ぼし王国を解体するかもしれない。
だがそんな復讐ばかり考えていたら心がすさんでしまう。
心を癒す時間がどうしても必要になる。
ソフィアとのピクニックは最高の癒しだ。
「お母さんがお弁当を作ってくれたの?」
「ええ、ソフィアの大好きな果物と野菜、チーズとバターを使ったサンドイッチを沢山作ってありますよ」
「うれしい!」
俺が貸し与えてからずっと一緒にいるのに、未だに慕い慕われる溺愛の母娘にしか見えないが、実際には血のつながりがないどころか、スライムと人間だ。
現にソフィアを乗せているアレイナスライムの一部は強大なナメクジだ。
いや、スライムが魔境にあわせて長く身体を伸ばしているだけだ。
本体部分はソフィアの母親そっくりの姿に変化している。
アレイナスライムはできるだけスライム感を出さないように、ナメクジ型部分と完全に分離している。
普通は俺の命令がない限り分離などしないのだが、ソフィアの為なら俺の命令がなくても人間感を出そうとしている。
俺が従魔にして育てたから、人間味が出てしまったのだろうか?
ソフィアには悪いが、時間を無駄にするわけにはいかない。
ソフィアの前で魔獣を殺すわけにもいかないが、狩りはしなければいけない。
だからソフィアに見えない遠くで魔獣を狩る。
サクラは元々砦の周囲10キロメートル四方に探索網を広げている。
その気になれば一瞬で一点に集まる事ができる。
亜竜や属性竜ていどなら、身体の1万分の1を集めるだけで狩る事ができる。
まして今周辺にいる赤魔熊や赤魔蛇以下の魔獣なら、探索網のまま狩れる。
そんな簡単に狩れる赤魔熊や赤魔蛇程度でも、この国の冒険者には狩れない。
レベルの高い個体だと、エマでも狩るのが難しい。
「お兄ちゃん、あのお花きれい!」
ソフィアはとても眼が良いようで、高い木の上に咲いている赤い花を見つけた。
直ぐに採ろうとするアレイナスライムを目で抑えて俺がとる。
軽く跳ぶだけで三十メートルはジャンプできる。
「髪に飾ってあげるよ」
俺が前世の死んだ年齢のままだったら他人にはどう写るだろうか?
犯罪者に見られるだろろうか?
孫娘と爺さんに見てもらえるだろうか?
いや、曾孫と曾祖父と言った方が良いだろう。
だがこの世界では、俺はまだ十歳の子供だ。
ソフィアが八歳だから、誰が見ても子供が遊んでいるだけだ。
前世には『男女七歳にして席を同じゅうせず』という故事成語があった。
しかしいくら何でも早すぎるだろう。
「私もお兄ちゃんに花を飾ってあげる。
お母さんが花冠の作り方を教えてくれたの」
教えてくれたのは、幼い頃に死んだ本当のお母さんか?
それともアレイナスライムなのか?
サクラとは、俺が三歳児の頃から一緒に生活していたから。
そのせいで母性が強いのかもしれないが、いくら何でも花冠の作り方を教えるのは、守護の役目と関係なさ過ぎるだろう。
まあ、スライムでなくてもソフィアのかわいらしさには魅了される。
魅了されているから、恥ずかしいのを我慢して花冠を飾ってもらう。
相手が成人した海千山千の女性なら、絶対にさせない。
純真無垢な幼い子供だから、心を傷つけないようにしている。
大人には子供を助ける責任があるのだ!
身体だけでなく、心も守ってあげなければいけない。
まあ、俺も見た目は子供だが、中身は糞爺だからな。
魔境で花の咲く場所まで移動して、完成するまで大人しく待たなければいけない。
「はい、お兄ちゃん、にあっているよ」
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