婚約者も聖女の地位も、姉に全て奪われてしまいました。

克全

文字の大きさ
5 / 6
第一章

第5話亡国の足音、国王視点

しおりを挟む
「もう、この国はお終いだ、愚か者の王太子の所為でな。
 いや、余があれを廃嫡に出来なかったのだ、余の責任だ」

「陛下、何を申されるのです、高が女一人の事、しかも公爵家を追放になって何の力もない女です、気にする事などありません。
 それよりは早く隠居されて、王位を譲られてください」

 愚か極まりない王妃だ、我が子可愛さに、何も見えなくなっている。
 いや、違うな、余に嫁いできた時から、度し難いほど愚かだった。
 王太子が愚かなのもこの者の血が濃く出たのかもしれない。
 いや、己の罪と無能を他者の所為にしてはいけない、余が愚かなのだ。
 死の床に就いて、ようやくこの国の現状を受け入れることができた。
 己の弱さ愚かさを認めることができるようになった。

 余の遊興のために余裕のなくなった国庫を、いや、さらなる遊興のために国防費を削り、命懸けで国を護ってくれていた将兵に満足な食糧も武具も与えてこなかった。
 それを四人の辺境伯は未開地を開拓しながら補ってくれていた。
 その四人が、この国を見捨てて独立を宣言した。
 聖女カリーヌを保護したヴァレンティア辺境伯だけではなく、他の三人にも王家王国は見捨てられたのだ。

 愚かで怯懦な王太子は、裏切者を討伐しろと、王国軍の将軍や貴族の命じているが、睨まれただけで失禁脱糞するような臆病者の命令を、何所の誰が聞くのだ。
 命令を聞くふりをして、軍事費を着服して己の利益とする将軍。
 将軍が軍事費を着服したため、遠征軍の将兵には食糧もなく、現地の民から略奪するしかないが、そんな事になれば、民が辺境伯の領地に逃げるだろう。
 いや、領主が辺境伯の配下に入って、諸侯軍を動員して王家王国に叛旗を翻しかもしれない。

 近隣諸国がこの機を逃さずに侵略をしてくるかもしれないが、それは簡単に撃退されるだろう。
 余の身勝手な振舞いで、今迄から彼らは独力で近隣の侵攻を撃退していた。
 今さら王太子と敵対したからと言って、実力が低下するわけではない。
 それどころか、聖女カリーヌを軸に辺境伯連合を組めば、無敵の強さだろう。

 余は、この国を滅ぼした愚かな王として歴にに名を残すことになるだろう。
 直接の原因は王太子だと史書に残るだろうが、余の悪行が見逃される事はない。
 それに、神々が王家王国を許すとは思えない。
 どれくらいの天罰が下るかで、生き残れる民の数が変わる。
 願わくば、少しでも多くの民が生き残れますように。

「陛下、陛下、王位を譲れないとはどういう事でございますか?!
 この状態で国王が軍を指揮できないでは、将兵の士気にかかわりますぞ。
 直ぐに余に王位を譲られるのです、さもないと天寿を全うできませんぞ!」

 自分独りでは、余を弑逆する事すらできないのか。
 エリルスワン公爵とオレリアに余を殺させようと言うのか?
 王位を簒奪しようと言う者が、自ら手を下せないとは、情けない。
 余が王太子に殺されれば、少しは聖女の役に立つかもしれない。
 聖女軍が立つときに、叛乱ではなく正義の討伐に出来るかもしれない。
 寿命の尽きた命を捧げる程度で、今までの罪が許されるとは思わないが、今の余にはこの程度のことしかできない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。 しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。 話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。 スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。 そこから、話しは急展開を迎える……。

処理中です...