嫌われ伯爵令嬢の生涯

克全

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8話

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「よほど大切なお話しなのね。
 話は人払いをしてから聞くわ。
 その前にお茶にしましょう。
 急使をもらってから楽しみにしていたのよ。
 オリビアと二人だけでお茶できるのは初めてだもの」

 義母上の言葉を、いえ、慈しんでくださる表情を見て、涙がこぼれそうになりましたが、必死て耐えました。
 いえ、耐えようとしました。
 ですが、ついてきてくれたいたエミリーに諫められたのです。

「お嬢様。
 正直になられてください。
 お嬢様が正直になってくださったから、運が開けたのです。
 ここで無理に我慢されると、せっかく開けた運が閉じてしまいますよ」

 私はハッとしました。
 義母上と乳母の顔を、不躾にも交互にしてしまいました。
 そこには、私が喉から手が出るほど欲しかった、慈愛の表情がありました。
 先ほど以上の、溢れんばかりの愛情がこもった笑顔でした。
 私は号泣してしまいました。

 後で顔から火が出るほど恥ずかしかったですが、同時に憑き物が落ちたような、清々した気分にもなれました。
 乳母エミリーの視線に助けられ、おずおずと義母上の手を取ることができました。
 義母上は、優しく、そして力強く、抱きしめてくださいました。
 私が泣き止むまで、優しく背中をさすりながら、抱きしめてくださいました。

 その時、感じたのです。
 刺すような憎しみの視線を!
 なんとも表現のしようがない、妬み嫉みの籠った悪意を。
 私は義母上に抱かれながら、視線の相手に気がつかれないように、視線の主を確認しました。

 ハッとしました。
 今まで気がつかなかったのですが、ダーシィといた所を見たことがあります。
 ダーシィと繋がっている侍女です。
 さっきまで全く目立たない存在でした。
 義母上に仕える侍女の中でも、低い身分なのでしょう。

 もしかしたら、今迄は表に出ていなかったのかもしれません。
 裏方専門の侍女だったのかもしれません。
 私が約束もなく緊急で押しかけたので、仕方なく接待役を命じられたのでしょう。
 ダーシィと繋がっていたのなら、警戒しなければいけません。

「義母上、お恥ずかしいところをお見せしました。
 でも、義母上のお陰で心が軽くなりました。
 今迄積もりに積もっていたモノが、全て洗い流されました。
 それで大切なお話なのですが、人払いしないで話したいのです。
 どこで誤解されて、義母上に迷惑がかかってはいけません。
 身勝手なお願いですが、義母上にはずっと元気でいて欲しいのです」

「そうですね。
 私も色々と陰口を言われる身です。
 オリビアを護るためには、レイノルド伯爵夫人として、確固たる地位を築く必要がありますね。
 分かりました。
 皆のいるところで話をしましょう」
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