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第一章
第15話:将来の不安と結婚
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リジィ王国暦200年5月20日:ロッシ侯爵家王都屋敷
(おい、こら、無視するな、返事しろ、俺様は命の恩人だぞ!)
アリアは仲良くなったはずの叡智の精霊を無視していた。
ずっと自分を大切にしてくれてきた家臣使用人を、叡智の精霊が犠牲にしようとしていたと聞いて、信じられなくなったのだ。
これは価値観の相違だった。
アリアにとってはとても大切な人々でも、叡智の精霊から見れば愚かな下等生物でしかないのだ。
「レオ閣下、叡智の精霊を名乗る悪魔を無視したいのですが、おかしくなりそうなくらい繰り返し話しかけてくるのです!
どうすればいいのでしょうか?!」
「効果があるかどうか分かりませんが、結界魔術を使ってみましょう。
悪意善意に関わらず、アリア嬢を苦しめる全てを防げ。
パーフェクト・フィット・シールド」
「あ、止まりました、声が聞こえなくなりました!」
「それはよかった、定期的に結界魔術をかけて差し上げますから、何の心配もありませんよ」
「ありがとうございます。
それで、私の蘇生術は成功したのでしょうか?
それとも、聖女だと言うのも、叡智の精霊を名乗る悪魔の嘘なのでしょうか?」
「どうやら聖女候補というのは本当だったようです。
死んだ1万人の敵の内、100人程度は蘇りました。
私が文献で読んだ事のある、どの聖女の蘇生術よりも強力です。
アリア嬢は類稀なる大聖女で間違いありません」
「そうですか、それは良かったです。
もう普通の結婚は無理だと思っていたのです。
聖女として生きる事で、お父様の役に立てれば、これまで大切に育てていただいたご恩返しができます」
「レオ閣下、これほどの力を持ったアリアが普通に生きていけるのでしょうか?!
あらゆる国や組織から狙われるのではないですか?!」
「間違いなく狙われますね。
それも、とんでもなくしつこく狙われます。
自分達の手に入らないなら、絶対に殺そうとするくらい目の色を変えて狙います」
「レオ閣下、なんでもします、アリアを助けてやってください。
学院で、大陸連合魔道学院で匿ってもらえませんか?!
もうアリアに会えなくなると思うと、胸が張り裂けてしまうかと思うくらい苦しく辛いですが、アリアが殺されるくらいなら……」
「アリア、アリア、アリア!」
「お母様、お母様、お母様」
とんでもない愁嘆場になってしまった。
叡智の精霊の言葉が本当かどうか試してみただけだ。
これほどアリア嬢やロッシ侯爵家を苦しめる気はなかったのだ。
ただ、万が一の事を考えていなかったわけではない。
アリア嬢やロッシ侯爵家が、念願の復讐ができた上に、誰にも手出しさせない策は既に考えていたのだ。
「それほど心配しなくても大丈夫ですよ。
命を最優先に考えるなら、学院に入学すればいいだけです。
学院の教師や生徒に手を出す馬鹿は滅多にいません。
学院は中立ですから、敵に回られる心配もなくなります。
アリア嬢と離れ離れになるのが嫌なら、この国の王になればいいのです。
復讐するだけの大義名分がりますし、ウァレリウス氏族の宗家はアウフィディウス帝国の侯爵家でしょう?
宗家を頼って、帝国の属国に留まると皇室や帝国政府に願い出れば大丈夫です」
「え、いや、学院の生徒にならなければ狙われるのでしょう?
私が王になってしまったら、アリアは属国の王女です。
属国の王女になってしまったら、宗主国に来いと言われてしまい、逆らえないのではありませんか?」
「申し訳ない、分かり難い言い方をしましたね。
王女が学院の生徒になるのです。
王都の一部を学院に寄付するのですよ。
王家への復讐とこの国を攻め取るのに、私に力を借りたので、報酬として王都の土地を割譲したと言えば、今回の件に関わった9カ国は文句が言えません。
大使が協力すると署名していますし、本国の大貴族や大商人も関わっていますから、今更知らないとも言えません。
私の権限で、そこに学院の分校を設立します。
アリア嬢は分校に通えばいいのです。
ロッシ侯爵閣下と夫人、いえ、ロッシ陛下と王妃殿下には、学院に特別室を設けますから、そこから王城に通われればいい。
なんならこの屋敷を学院に寄付していただけませんか?
そうすれば、夜はこれまで通り、家族と信じられる家臣で過ごせますよ」
「それで、本当に帝国や周辺国は手出しして来ないでしょうか?
直接何かをやらなくても、裏から色々と仕掛けてくるのではないでしょうか?」
「絶対にないとは言えないでしょうね。
1番安全なのは、閣下と夫人が人質にとられないように、アリア嬢と一緒に学院に来る事ですが、それでは国も侯爵家も捨てる事になります」
「アリアのためなら国も侯爵家も捨てましょう。
国を皇室に献上すれば、アリアを見逃してくれるでしょうか?
ウァレリウス氏族の宗家に侯爵家を献上すれば、協力してくれるでしょうか?」
レオがロッシ侯爵の不安を宥めていると、レオに痛い目に遭わせられた大使が意趣返しを仕掛けた。
単なる意趣返しだと、レオがレオナルド皇太子に戻った時の報復が怖い。
だから自分の才能を見せつけつつ、アリア嬢とロッシ侯爵に恩を売りつつ、レオが自分の心に言い訳できるようにした。
大使も皇帝陛下に抜擢されるくらいの才能があるのだ。
ずっと人を避け、帝国や皇室からも距離を置いてきた皇太子が、どのような理由があるにしても、アリア嬢を助けているのだ。
「ロッシ侯爵閣下、これ以上ない安全策があるではないですか。
レオ閣下にアリア嬢を貰ってもらうのですよ。
万の軍勢を瞬殺する事が証明された、学院主任教授の夫人を狙う馬鹿など、南北両大陸の何処を探してもいないです。
皇帝陛下であろうと、学院主任教授夫人を帝国に来いとは言えません。
アリア嬢に好きな相手がいるとか、政略結婚させなければいけない相手がいるとかしない限り、レオ閣下の妻に迎えてもらうのが1番ですよ」
「え、いや、それができれば1番ですが、レオ閣下ほどの方が、そのお年まで独身な訳ないですよね?」
「……」
「大丈夫、偶然ですが、私はレオ閣下が独身なのを知っているのです」
大使が更にレオを追い詰める。
「本当ですか?!
だったらお願いします、レオ閣下、アリアを妻にもらってください。
もらっていただけるのなら、ロッシ侯爵家を差し上げます。
何なら養子縁組もして、リジィ王国も譲らせていただきます。
アリアが生きて幸せになれるのなら、何もいりません」
ロッシ侯爵が娘の幸せだけを考える父親になっている。
「お願いします、レオ閣下、アリアを、娘を助けてやってください!」
夫人まで、レオに縋りつきかねない勢いでお願いしてくる。
「……いや、アリア嬢の気持ちが大切でしょう……
こんな年の離れたおっさんと結婚など……」
「レオ閣下は私達の命の恩人です。
復讐を叶えてくださった救世主です。
こんな、婚約者に殺されかけ、適齢期を過ぎた女と結婚するのは嫌でしょうが、そこは好きな女性を愛人にする事で……」
「いや、私はアリア嬢の過去も年齢も何とも思っていません。
むしろ先ほども言っていたように、私の年齢と性格に問題があると思っているだけなのです」
「レオ閣下、学院に入って魔術の探求をする方が普通の人と違うのは当たり前です。
そのような事は気にされないでください。
どこかに価値観の違いはあるでしょうが、今日までのレオ閣下の言動を見させていただけば、とても女性に優しい方だと分かっています。
どうかアリアを妻にしてやってください。
私に用意できるモノはできる限り集めさせていただきます」
「分かりました、本当に幸せにできるかどうかは分かりませんが、幸せにする努力は怠りません。
これだけは神に誓います」
「「「「おおおおお!」」」」」
(おい、こら、無視するな、返事しろ、俺様は命の恩人だぞ!)
アリアは仲良くなったはずの叡智の精霊を無視していた。
ずっと自分を大切にしてくれてきた家臣使用人を、叡智の精霊が犠牲にしようとしていたと聞いて、信じられなくなったのだ。
これは価値観の相違だった。
アリアにとってはとても大切な人々でも、叡智の精霊から見れば愚かな下等生物でしかないのだ。
「レオ閣下、叡智の精霊を名乗る悪魔を無視したいのですが、おかしくなりそうなくらい繰り返し話しかけてくるのです!
どうすればいいのでしょうか?!」
「効果があるかどうか分かりませんが、結界魔術を使ってみましょう。
悪意善意に関わらず、アリア嬢を苦しめる全てを防げ。
パーフェクト・フィット・シールド」
「あ、止まりました、声が聞こえなくなりました!」
「それはよかった、定期的に結界魔術をかけて差し上げますから、何の心配もありませんよ」
「ありがとうございます。
それで、私の蘇生術は成功したのでしょうか?
それとも、聖女だと言うのも、叡智の精霊を名乗る悪魔の嘘なのでしょうか?」
「どうやら聖女候補というのは本当だったようです。
死んだ1万人の敵の内、100人程度は蘇りました。
私が文献で読んだ事のある、どの聖女の蘇生術よりも強力です。
アリア嬢は類稀なる大聖女で間違いありません」
「そうですか、それは良かったです。
もう普通の結婚は無理だと思っていたのです。
聖女として生きる事で、お父様の役に立てれば、これまで大切に育てていただいたご恩返しができます」
「レオ閣下、これほどの力を持ったアリアが普通に生きていけるのでしょうか?!
あらゆる国や組織から狙われるのではないですか?!」
「間違いなく狙われますね。
それも、とんでもなくしつこく狙われます。
自分達の手に入らないなら、絶対に殺そうとするくらい目の色を変えて狙います」
「レオ閣下、なんでもします、アリアを助けてやってください。
学院で、大陸連合魔道学院で匿ってもらえませんか?!
もうアリアに会えなくなると思うと、胸が張り裂けてしまうかと思うくらい苦しく辛いですが、アリアが殺されるくらいなら……」
「アリア、アリア、アリア!」
「お母様、お母様、お母様」
とんでもない愁嘆場になってしまった。
叡智の精霊の言葉が本当かどうか試してみただけだ。
これほどアリア嬢やロッシ侯爵家を苦しめる気はなかったのだ。
ただ、万が一の事を考えていなかったわけではない。
アリア嬢やロッシ侯爵家が、念願の復讐ができた上に、誰にも手出しさせない策は既に考えていたのだ。
「それほど心配しなくても大丈夫ですよ。
命を最優先に考えるなら、学院に入学すればいいだけです。
学院の教師や生徒に手を出す馬鹿は滅多にいません。
学院は中立ですから、敵に回られる心配もなくなります。
アリア嬢と離れ離れになるのが嫌なら、この国の王になればいいのです。
復讐するだけの大義名分がりますし、ウァレリウス氏族の宗家はアウフィディウス帝国の侯爵家でしょう?
宗家を頼って、帝国の属国に留まると皇室や帝国政府に願い出れば大丈夫です」
「え、いや、学院の生徒にならなければ狙われるのでしょう?
私が王になってしまったら、アリアは属国の王女です。
属国の王女になってしまったら、宗主国に来いと言われてしまい、逆らえないのではありませんか?」
「申し訳ない、分かり難い言い方をしましたね。
王女が学院の生徒になるのです。
王都の一部を学院に寄付するのですよ。
王家への復讐とこの国を攻め取るのに、私に力を借りたので、報酬として王都の土地を割譲したと言えば、今回の件に関わった9カ国は文句が言えません。
大使が協力すると署名していますし、本国の大貴族や大商人も関わっていますから、今更知らないとも言えません。
私の権限で、そこに学院の分校を設立します。
アリア嬢は分校に通えばいいのです。
ロッシ侯爵閣下と夫人、いえ、ロッシ陛下と王妃殿下には、学院に特別室を設けますから、そこから王城に通われればいい。
なんならこの屋敷を学院に寄付していただけませんか?
そうすれば、夜はこれまで通り、家族と信じられる家臣で過ごせますよ」
「それで、本当に帝国や周辺国は手出しして来ないでしょうか?
直接何かをやらなくても、裏から色々と仕掛けてくるのではないでしょうか?」
「絶対にないとは言えないでしょうね。
1番安全なのは、閣下と夫人が人質にとられないように、アリア嬢と一緒に学院に来る事ですが、それでは国も侯爵家も捨てる事になります」
「アリアのためなら国も侯爵家も捨てましょう。
国を皇室に献上すれば、アリアを見逃してくれるでしょうか?
ウァレリウス氏族の宗家に侯爵家を献上すれば、協力してくれるでしょうか?」
レオがロッシ侯爵の不安を宥めていると、レオに痛い目に遭わせられた大使が意趣返しを仕掛けた。
単なる意趣返しだと、レオがレオナルド皇太子に戻った時の報復が怖い。
だから自分の才能を見せつけつつ、アリア嬢とロッシ侯爵に恩を売りつつ、レオが自分の心に言い訳できるようにした。
大使も皇帝陛下に抜擢されるくらいの才能があるのだ。
ずっと人を避け、帝国や皇室からも距離を置いてきた皇太子が、どのような理由があるにしても、アリア嬢を助けているのだ。
「ロッシ侯爵閣下、これ以上ない安全策があるではないですか。
レオ閣下にアリア嬢を貰ってもらうのですよ。
万の軍勢を瞬殺する事が証明された、学院主任教授の夫人を狙う馬鹿など、南北両大陸の何処を探してもいないです。
皇帝陛下であろうと、学院主任教授夫人を帝国に来いとは言えません。
アリア嬢に好きな相手がいるとか、政略結婚させなければいけない相手がいるとかしない限り、レオ閣下の妻に迎えてもらうのが1番ですよ」
「え、いや、それができれば1番ですが、レオ閣下ほどの方が、そのお年まで独身な訳ないですよね?」
「……」
「大丈夫、偶然ですが、私はレオ閣下が独身なのを知っているのです」
大使が更にレオを追い詰める。
「本当ですか?!
だったらお願いします、レオ閣下、アリアを妻にもらってください。
もらっていただけるのなら、ロッシ侯爵家を差し上げます。
何なら養子縁組もして、リジィ王国も譲らせていただきます。
アリアが生きて幸せになれるのなら、何もいりません」
ロッシ侯爵が娘の幸せだけを考える父親になっている。
「お願いします、レオ閣下、アリアを、娘を助けてやってください!」
夫人まで、レオに縋りつきかねない勢いでお願いしてくる。
「……いや、アリア嬢の気持ちが大切でしょう……
こんな年の離れたおっさんと結婚など……」
「レオ閣下は私達の命の恩人です。
復讐を叶えてくださった救世主です。
こんな、婚約者に殺されかけ、適齢期を過ぎた女と結婚するのは嫌でしょうが、そこは好きな女性を愛人にする事で……」
「いや、私はアリア嬢の過去も年齢も何とも思っていません。
むしろ先ほども言っていたように、私の年齢と性格に問題があると思っているだけなのです」
「レオ閣下、学院に入って魔術の探求をする方が普通の人と違うのは当たり前です。
そのような事は気にされないでください。
どこかに価値観の違いはあるでしょうが、今日までのレオ閣下の言動を見させていただけば、とても女性に優しい方だと分かっています。
どうかアリアを妻にしてやってください。
私に用意できるモノはできる限り集めさせていただきます」
「分かりました、本当に幸せにできるかどうかは分かりませんが、幸せにする努力は怠りません。
これだけは神に誓います」
「「「「おおおおお!」」」」」
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