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2話

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「いい加減にしておけよ。
 これ以上やるなら、余にも覚悟があるぞ」

「どういう覚悟があるのです、陛下」

「そうですわ、国王陛下。
 いったいどのような覚悟がおありなのですか」

 暴走するエドワードとジェシカを、国王陛下が止められました。
 その声は、覚悟の決めた男の言葉に聞こえます。
 なのに、エドワードには全く響かないよです。
 ジェシカに至っては、小馬鹿にしたような返事です。
 このままでは、国王陛下が殺されてしまいます。

「本当に馬鹿だな、お前達は。
 余を殺せば、周辺各国がお前達を簒奪者として断罪するだろう。
 この国に攻め込んでくるだろう。
 お前達に彼らと戦う覚悟があるのか?
 勝つ能力があると本気で思っているのか?」

「エドワード王太子殿下。
 ジェシカ陽光姫様。
 国王陛下の申される通りです。
 少々ふざけ過ぎでございます。
 馬に襲わせるなど、さすがに近隣諸国に外聞が悪すぎます。
 例え陛下が本当に病死なされても、近隣諸国は信じますまい。
 いえ、言い掛かりをつけてでも、攻め込んでまいります。
 今しばらくは陛下にお元気でいていただけないといけません」

 宰相のライリーが、エドワードとジェシカを諫めながら、国王陛下を忌々しそうに睨みつけてます。
 言葉と心が裏腹で、とても醜い表情です。
 奸臣佞臣とは、このような男の事を言うのでしょう。

 今は亡きマイケル王太子殿下に、自分が養女にしたジェシカを妃に押し込み、この国の実権を握ろうとしていたのが宰相のライリーです。
 その計画には、太陽神殿の大神官ジャクソンも加わっていました。
 あの時にその事を知っていたら、全力で妨害していたのですが、私も養父も月光姫の修行に夢中でした。

 この世が終末を迎える危機を感じとり、それをなんとか防ごうとして、月神殿の事だけで精一杯だったのです。
 太陽神殿も同じように備えていると信じていました。
 いえ、書簡のやり取りや使者の往来はあったのです。
 太陽神殿からは、同じように取り組んでいると返事が来ていたのです。
 それが、偽の陽光姫を仕立て上げ、王国の実権を握ろうとする謀略だったとは、全く気がつかなかったのです。

「では、エルンスト王国に犯罪者を送ってもらおうか。
 国王陛下が勘違いして自害でもされたら大変だ。
 だから、ここは、国王陛下の近衛騎士に送っていただこうか。
 しかし、国王陛下の近衛騎士が、自らの愛馬で犯罪者を襲わせたら?
 あのような高潔な言葉を仰られた国王陛下の面目は丸潰れだな」

 寒気がしました。
 ライリー宰相が近衛騎士をけしかけています。
 愛馬で私を襲えとけしかけています。
 あの目は、やらなければ厳しい処分をするぞと脅しているのです。
 ああ、私は死を選ぶしかないのですね。
 誇りを護るためには、死を選ぶしかないのです。
 でも、自分の誇りを選ぶと、この大陸は、人類は滅ぶでしょう。
 
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