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1話

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 ジュウウウウウウウ。

「キャァアァアアアァアア!」

 余りの激痛に我慢できませんでした。
 誇りにけて、悲鳴は上げないようにしようとしていたのに。
 我慢できずに悲鳴をあげてしまいました。
 自分の肉が焼ける臭いがします。
 焼鏝を外されても、灼熱感と激痛が絶え間なく襲ってきます。

「どう、反省した。
 農民の娘が王太子殿下の正妃になろうなんておこがましいのよ!
 それどころか、殿下を暗殺しようなんで、なんで極悪非道なの。
 その罪からは絶対にに逃れられないわ。
 どこに行ってもその額の焼印で明確よ。
 自分の犯した罪から逃れられないわよ!」

 極悪非道は貴女です、ジェシカ!
 全ては王妃の地位につきたい貴女が仕組んだ謀略でしょう。
 蔑むようなその眼。
 隣に並ぶ王太子もそうです。
 いや、貴男などに王太子の資格はありません。
 善良だった兄を謀殺して、王太子の地位を奪った極悪人でしょう。

 言いたい!
 全てを暴露したい!
 でもそれはできません。
 ルイス様をはじめ、月神殿の人達が人質にされているのです。
 私が何か言えば、月神殿の人達が皆殺しにされてしまいます。

 私の婚約者だった第二王子のエドワード。
 兄を殺して王太子の座を奪った簒奪者エドワード。
 私の本心は、こちらから婚約を解消して月神殿に籠りたかった。
 ですが、それでは、この国が滅んでしまいます。
 いえ、この大陸が滅んでしまうかもしれません。

 陽光姫が本物だったら、偽称の偽者でなかったら、私は婚約を解消していました。
 ですが、嫌らしい眼で私を見下ろすジェシカは偽者です。
 下劣なエドワードと並んで、陰謀の成功を二人よろこぶジェシカは、腐りはてた太陽神殿が欲望を満たすために創り出した偽者の陽光姫なのです。
 偽者の陽光姫に、魔獣を魔境に押し込める力はありません。

 今は私の力でかろうじて抑えていますが、それは月神殿と王宮神殿の両方を使えているからです。
 月光姫の力を全て使っても、月神殿からだけでは封印の力が弱いのです。
 血を吐き血の汗を流して祈っても、封印の力が足りないのです。

「さあ、後は追放刑に処すだけだ。
 く、く、く、く。
 その身一つでどこまで生き延びられるかな?
 ずっと抱けなかったその身体、惜しい気はするが、ジェシカの願いを無にするわけにはいかないからな。
 追放刑を実行する騎士の役得にしてやるよ」

「まあ、それは物好きというものですわ。
 あのような醜い焼印を押された女など、騎士が抱くはずありませんわ。
 最初の男は、乞食がいいのではありませんか?
 あ、いいことを思いつきました。
 騎士の馬に相手させてはいかがです?」

「「ワッハハハハ!」」
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