12 / 20
反乱編
11話
しおりを挟む
「あの、本当に食べてもよいのでしょうか?
これは、正式な宮廷料理のフルコースだと思うのですが?」
「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」
「私は公式な賓客ではありません」
「そんな事か。
公式非公式は、客を迎える亭主である私が決めることだ。
アリアンナは公式な賓客に相応しいと思った。
まあ、それ以上に、愚かな一族が迷惑をかけた詫びでもある」
アリアンナはクリスティアンの言葉にほっとした。
愚かな一族とは皇太子ディエゴの事だと分かったし、あの行為の詫びとして賓客として扱ってもらえるという事は、自分もファインズ公爵家も罪に問われないと言われているのと同様だったからだ。
それでも初めて会う皇族、それも皇叔と食事を共にするのはとても緊張する。
アリアンナも公爵家の出身だから、マナーは完璧に覚えている。
だが食事を美味しくするための会話が難しい。
初めて会っただけではなく、全然見も知らなくて、事前情報もないのだ。
どんな話題を振ればいいのか全く想像がつかなかった。
「ところでアリアンナ嬢。
貴女は皇太子ディエゴをどう思う?
今回の被害者として、忌憚のない意見を聞きたいのだが?」
「どうと申されましても、一介の公爵令嬢には荷の勝ちすぎる質問だと思います」
アリアンナは思わずクリスティアンの顔をまじまじと見てしまった。
その表情から、自分や父上を陥れるための罠だとは思わなかった。
だが、叩き込まれた皇室への忠誠心から、讒言するのは躊躇われた。
いや、讒言ではなく真実なのだが、それを言えば皇太子ディエゴを罵ることになるので、口にできないでいた。
「ふむ。
口にするのが憚られるような、皇族にあるまじき恥知らずな行為だという事だな。
アリアンナ嬢が黙っていても、先ほどの紙兵達が調べて報告してくれる。
だが彼らでは皇太子を断罪するときの証人にはなれない。
だから、アリアンナ嬢に証人になって欲しいのだよ。
どうであろうか?」
アリアンナは返事に迷った。
皇太子を断罪しなければ、自分も父上も冤罪で処分されてしまう。
その事は分かっていたが、諫言して心を改めてもらうのが臣下の務めではないかという迷いもあったのだ。
だがその迷いも、クリスティアンの言葉で雲散霧消した。
「ディエゴのような性質のモノは、決して心を改めたりはしない。
そのような嘘を吐くときは、誰かを騙して陥れる時だ。
ゆめゆめ信じてはいけない。
アリアンナ嬢やファインズ公爵一人の名誉や命だけでは済まないのだよ。
家臣領民の全てが奴隷に落とされ、子々孫々屈辱の中で生きていかなければならなくなるのだよ」
クリスティアンの言葉を聞いてアリアンナは決断した。
これは、正式な宮廷料理のフルコースだと思うのですが?」
「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」
「私は公式な賓客ではありません」
「そんな事か。
公式非公式は、客を迎える亭主である私が決めることだ。
アリアンナは公式な賓客に相応しいと思った。
まあ、それ以上に、愚かな一族が迷惑をかけた詫びでもある」
アリアンナはクリスティアンの言葉にほっとした。
愚かな一族とは皇太子ディエゴの事だと分かったし、あの行為の詫びとして賓客として扱ってもらえるという事は、自分もファインズ公爵家も罪に問われないと言われているのと同様だったからだ。
それでも初めて会う皇族、それも皇叔と食事を共にするのはとても緊張する。
アリアンナも公爵家の出身だから、マナーは完璧に覚えている。
だが食事を美味しくするための会話が難しい。
初めて会っただけではなく、全然見も知らなくて、事前情報もないのだ。
どんな話題を振ればいいのか全く想像がつかなかった。
「ところでアリアンナ嬢。
貴女は皇太子ディエゴをどう思う?
今回の被害者として、忌憚のない意見を聞きたいのだが?」
「どうと申されましても、一介の公爵令嬢には荷の勝ちすぎる質問だと思います」
アリアンナは思わずクリスティアンの顔をまじまじと見てしまった。
その表情から、自分や父上を陥れるための罠だとは思わなかった。
だが、叩き込まれた皇室への忠誠心から、讒言するのは躊躇われた。
いや、讒言ではなく真実なのだが、それを言えば皇太子ディエゴを罵ることになるので、口にできないでいた。
「ふむ。
口にするのが憚られるような、皇族にあるまじき恥知らずな行為だという事だな。
アリアンナ嬢が黙っていても、先ほどの紙兵達が調べて報告してくれる。
だが彼らでは皇太子を断罪するときの証人にはなれない。
だから、アリアンナ嬢に証人になって欲しいのだよ。
どうであろうか?」
アリアンナは返事に迷った。
皇太子を断罪しなければ、自分も父上も冤罪で処分されてしまう。
その事は分かっていたが、諫言して心を改めてもらうのが臣下の務めではないかという迷いもあったのだ。
だがその迷いも、クリスティアンの言葉で雲散霧消した。
「ディエゴのような性質のモノは、決して心を改めたりはしない。
そのような嘘を吐くときは、誰かを騙して陥れる時だ。
ゆめゆめ信じてはいけない。
アリアンナ嬢やファインズ公爵一人の名誉や命だけでは済まないのだよ。
家臣領民の全てが奴隷に落とされ、子々孫々屈辱の中で生きていかなければならなくなるのだよ」
クリスティアンの言葉を聞いてアリアンナは決断した。
1
あなたにおすすめの小説
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので
ふわふわ
恋愛
「婚約破棄?
……そうですか。では、私の役目は終わりですね」
王太子ロイド・ヴァルシュタインの婚約者として、
国と王宮を“滞りなく回す存在”であり続けてきた令嬢
マルグリット・フォン・ルーヴェン。
感情を表に出さず、
功績を誇らず、
ただ淡々と、最善だけを積み重ねてきた彼女に突きつけられたのは――
偽りの奇跡を振りかざす“聖女”による、突然の婚約破棄だった。
だが、マルグリットは嘆かない。
怒りもしない。
復讐すら、望まない。
彼女が選んだのは、
すべてを「仕組み」と「基準」に引き渡し、静かに前線から降りること。
彼女がいなくなっても、領地は回る。
判断は滞らず、人々は困らない。
それこそが、彼女が築いた“完成形”だった。
一方で、
彼女を切り捨てた王太子と偽聖女は、
「彼女がいない世界」で初めて、自分たちの無力さと向き合うことになる。
――必要とされない価値。
――前に出ない強さ。
――名前を呼ばれない完成。
これは、
騒がず、縋らず、静かに去った令嬢が、
最後にすべてを置き去りにして手に入れる“自由”の物語。
ざまぁは静かに、
恋は後半に、
そして物語は、凛と終わる。
アルファポリス女子読者向け
「大人の婚約破棄ざまぁ恋愛」、ここに完結。
追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!
六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。
家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能!
「ここなら、自由に生きられるかもしれない」
活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。
「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる