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反乱編

11話

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「あの、本当に食べてもよいのでしょうか?
 これは、正式な宮廷料理のフルコースだと思うのですが?」

「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」

「私は公式な賓客ではありません」

「そんな事か。
 公式非公式は、客を迎える亭主である私が決めることだ。
 アリアンナは公式な賓客に相応しいと思った。
 まあ、それ以上に、愚かな一族が迷惑をかけた詫びでもある」

 アリアンナはクリスティアンの言葉にほっとした。
 愚かな一族とは皇太子ディエゴの事だと分かったし、あの行為の詫びとして賓客として扱ってもらえるという事は、自分もファインズ公爵家も罪に問われないと言われているのと同様だったからだ。

 それでも初めて会う皇族、それも皇叔と食事を共にするのはとても緊張する。
 アリアンナも公爵家の出身だから、マナーは完璧に覚えている。
 だが食事を美味しくするための会話が難しい。
 初めて会っただけではなく、全然見も知らなくて、事前情報もないのだ。
 どんな話題を振ればいいのか全く想像がつかなかった。

「ところでアリアンナ嬢。
 貴女は皇太子ディエゴをどう思う?
 今回の被害者として、忌憚のない意見を聞きたいのだが?」

「どうと申されましても、一介の公爵令嬢には荷の勝ちすぎる質問だと思います」

 アリアンナは思わずクリスティアンの顔をまじまじと見てしまった。
 その表情から、自分や父上を陥れるための罠だとは思わなかった。
 だが、叩き込まれた皇室への忠誠心から、讒言するのは躊躇われた。
 いや、讒言ではなく真実なのだが、それを言えば皇太子ディエゴを罵ることになるので、口にできないでいた。

「ふむ。
 口にするのが憚られるような、皇族にあるまじき恥知らずな行為だという事だな。
 アリアンナ嬢が黙っていても、先ほどの紙兵達が調べて報告してくれる。
 だが彼らでは皇太子を断罪するときの証人にはなれない。
 だから、アリアンナ嬢に証人になって欲しいのだよ。
 どうであろうか?」

 アリアンナは返事に迷った。
 皇太子を断罪しなければ、自分も父上も冤罪で処分されてしまう。
 その事は分かっていたが、諫言して心を改めてもらうのが臣下の務めではないかという迷いもあったのだ。
 だがその迷いも、クリスティアンの言葉で雲散霧消した。

「ディエゴのような性質のモノは、決して心を改めたりはしない。
 そのような嘘を吐くときは、誰かを騙して陥れる時だ。
 ゆめゆめ信じてはいけない。
 アリアンナ嬢やファインズ公爵一人の名誉や命だけでは済まないのだよ。
 家臣領民の全てが奴隷に落とされ、子々孫々屈辱の中で生きていかなければならなくなるのだよ」

 クリスティアンの言葉を聞いてアリアンナは決断した。
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