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反乱編

12話

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 アリアンナから証言の約束をとりつけたクリスティアンは、亭主としてアリアンナをもてなす事に集中した。
 その会話は女性を喜ばせるツボを心得ていた。
 髪形を褒め、肌艶を褒め、初めて会ったはずのアリアンナの事を知っていて、過去の努力や成果を褒めていた。

 最初は皇叔に褒めてもらうことに恐縮していたアリアンナだったが、過去の人知れず頑張っていた事を褒められて、心底嬉しくなった。
 陰に隠れた努力を褒められるというのは、人の琴線に触れるのだ。
 まあ、クリスティアンは神々の御子で何でもお見通しだから、アリアンナの望む時に望む言葉を口にする事ができる。

 一つ褒めた後で、次にどんな言葉を望んでいるかが分かる。
 何とも恐ろしく凶悪な能力だ。
 そんな能力を使われたら、人は簡単に魅了されてしまう。
 だから普段はクリスティアンもそんな能力は使わない。
 そんな能力で得た信頼や友情、愛情は信じられない気がしたからだ。

 だが何故かアリアンナには使ってしまった。
 アリアンナに信頼して欲しいと思ってしまった。
 自分自身には、亭主としてもてなすためと言い訳をして使ってしまった。
 そもそも皇帝エマヌエーレの尻を叩く時に、アリアンナの名前を出していた。
 皇室に連なるモノは皆殺しにして、新たな世を開くのも神々の御子の役割だ。

 それを何かと言い訳をして、アリアンナを助けようとした。
 ファインズ公爵の名前が出たのは、ついでというか、言い訳でしかない。
 無意識にアリアンナに魅かれていたのだ。
 神々の御子に感知できる範囲にいた人の中で、無意識に心惹かれていたのだろう。
 一目惚れではなく、一感知惚れだろう。

 アリアンナはすっかりクリスティアンに魅かれていたが、心配事がどうしても頭を離れず、食事しただけでは恋するというとこまでは至らなかった。
 クリスティアンは次に負傷した姫騎士達の介護を行おうとした。
 それもアリアンナの心をつかむためだった。
 実際にアリアンナに会って、会話をしながら食事をしてみて、自分がどれほどアリアンナに魅かれているのか理解したのだ。

「旦那様。
 姫騎士の方々は既に食事をされておられます。
 今応接間に入られると、姫騎士の方々が食事を中断される事になります。
 いましばらくこちらで談笑なされてはいかがでしょうか?」

 給仕をしていた紙兵の言葉を聞いたアリアンナは、心から安堵した。
 あれほど重傷だった姫騎士達が、既に食事ができるほど回復しているのだ。
 普通なら絶対に信じられない話だが、クリスティアンとその手の者の話なら信じられるから不思議だった。

「分かった、だったらこれからの皇国について話そう」
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