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3話

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「養母上、どう思われますか?」

「そうだねぇ、ジオラの絵図が正しいのなら、この魔法陣で大丈夫だ。
 この絵図通りなら、二種類二十二個の結界が張られている。
 これ一枚で微妙な組み合わせを破ることができる。
 だが発動させる場所には気をつけるんだ。
 ここ以外で発動させたら、魔法陣を仕掛けた者の所に、魔法陣が破壊されたことが伝わるよ」

「分かりました、養母上。
 ……やはり手伝ってはもらえませんか?」

 私は調べて描いた塔の内部の絵図面を、養母上に見て貰いました。
 私も養母上に色々と教えていただいて、それこそ手取り足取り教えていただいて、裏の世界で名の知れた密偵になれました。
 ですが、まだまだ養母上には及びません。

 時間があるときは必ず相談します。
 ジェイムズ騎士家の名誉と、家族の命がかかっているのです。
 失敗して、ジェイムズ騎士家の娘が盗賊だと知れたら、養父上も養母上も処刑されてしまうのです。
 失敗して正体を知られるわけにはいかないのです。

「もうジオラは一人前だよ。
 これは間違いなく一世一代の大仕事だと思う。
 成功したら歴史に名が残る大仕事だ。
 だからこそ、ジオラが一人でやらなきゃいけないよ。
 私が手伝ったら、歴史に残るのは私の名前になってしまうよ。
 相談には乗ってやるし、下準備も手伝ってやる。
 だが、やるのはジオラ独りでやらなきゃいけないんだよ」

「それは分かっています。
 でも私は、養母上の名前が残る方がうれしいのですが?」

「同じだよ。
 私はジオラの名前を残したいんだよ。
 それにこの仕事は、ジオラに指名できた仕事だ。
 やれる限りは、ジオラが独りでやらなきゃいけないんだよ」

 なんだか寂しく思ってしまいます。
 養父上と養母上は、実の両親に捨てられた私を育ててくれた大恩人です。
 お二人に受けた恩は、山よりも高く海よりも深いのです。
 返せる機会には、命を賭けて返さなければいけません。
 そんな事を口にしたら、養父上と養母上に怒られてしまいますが、それが私の偽りのない本心です。

「明日にでももう一度確認してきな。
 潜入したことがバレていたとしても、イェルク様が殺されることはないと思うけど、移動させられている可能性はあるからね。
 再潜入に成功したら、もう一度塔の中の魔法陣の種類と数を確認すんだ。
 もちろん塔の外側もしっかり確認すんだよ。
 見落としがあると、命にかかわるからね。
 歴史に名前を残してもらいたい想いはあるけど、その為に死んじまったら無意味だからね」

 うれしいです。
 嘘偽りなく心配してくれているのが分かります。
 心から愛してくれているのも分かります。
 だからこそ、この依頼を受けるのは嫌だったのです。
 指名であろうと礼金が巨額であろうと、断りたかったのです。
 でも、養父上と養母上が乗り気ならしかたありません。
 お二人のために全力を尽くすだけです。
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