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2話

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「その通りです。
 私はユリア姫から頼まれて助けに来ました。
 だから信じてついてきて欲しいのです」

「……すまない。
 まだ信じきれない。
 それに、ここには魔力を封じる結界が張り巡らされている。
 それに併せて、私を閉じ込めるための結界も張り巡らされている。
 しかも私は、この塔に一年も閉じ込められ、食事の量もギリギリに抑えられ、餓えと運動不足で体力が落ちている。
 とてもではないが、塔を伝って降りる事はできない」

「ですが、少しは信じてくださったのですよね?」

「ああ、信じたいと思ってはいる」

「だったら近づいていいですか?
 顔を会わせて話した方が、互いの本心が伝わると思うのです」

「……分かった。
 だが一メートル以上は近づかないでくれ」

「分かりました」

 やっと塔にしがみついている状態から中に入れました。
 塔にしがみついているというのは、結構しんどいのです。
 高い塔ですから、強い風に体温と体力を奪われますし、指も痛みます。
 塔に入って休憩しないと、降りる時に危険なのです。

 臭い!
 臭すぎます!
 一年もこの塔に閉じ込められているのです。
 入浴どころか、身体を拭くこともできなかったのでしょう。
 皮膚病になっているかもしれません。

 ああ、糞尿の処理もあるのですね。
 食事の時に一緒に回収するのなら、奇麗に洗ったオマルを使えるのでしょうが、この様子なら、桶に排泄してそれを窓から捨てているようです。
 一年使い続けたと思われる糞尿用の桶からも、強烈な臭気が感じられます。
 可哀想だとは思いますが、この状態のイェルク様を抱いて塔を降りるのは、絶対に嫌ですね。

「おい!
 顔を会わせてと言いながら、覆面をしたままではないか!
 さっさと覆面を取れ!」

「それはできません。
 私は陰に生きるモノです。
 顔を見せたら直ぐに殺されてしまいます。
 だから眼を見てください。
 眼を見れば本性が分かります」

「く!
 好き勝手言いやがって。
 まあ、いい。
 それで、何を話し合うのだ?」

「逃げる準備です。
 私は結界を破る準備をしてきます。
 イェルク様は、運動をして体力の回復を図ってください。
 それと髪を切り髭を剃ってください。
 身体を清めて逃げる準備をしてください」

「無理を言うな!
 さっきも言っただろうが!
 このガリガリの体を見よ!
 最低限の食事しか与えられないのだ。
 水も最低限しか与えられないのだ。
 身を清める事など不可能だ!」

 そう言われたので、私は魔法袋から必要だと思われるモノを全て取り出しました。
 魔法袋から出しても長期常温で保存できる酒類、ナッツ、チーズ、燻製肉、干肉、堅パン、糒、果物、白パン、水をだしました。
 そして色々と打ち合わせて、一旦塔を後にして拠点に戻りました。
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