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30話

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「ええい、なにをしている! 
 さっさとどけろ。 
 この程度の扉を壊せなくてどうするか!」

 エリアスの腐れ外道がわめき散らしています。
 思い通りにいかなくて苛立っているのでしょう。
 もうアマゾーンの四人は逃げてしまっています。
 私とネイは、いつでも逃げられたのですが、わざと残っているのです。
 逃げ損ねたように見せかけて、窓から四人に助けを求めるような姿を、見張っている兵士たちに確認させたのです。
 アマゾーンたちに見捨てられたように思わせているのです。

「殿下。
 私に任せてください」

 どうやら、それなりの強さの騎士が、扉の破壊に加わったようです。
 大魔境か大ダンジョンで鍛えたのでしょう。
 今までとは違って、一撃で扉やバリケードが破壊されるのが感じられます。
 これに安心して、エリアスの腐れ外道も入って来てくれればいいのですが。
 これはエリアスの性格しだいですね。

「ふ、ふ、ふ、ふ。
 どうやら仲間に見捨てられたようだな。
 私は寛大だから、その娘を差し出したら許してやる。
 いや、私の正妃に遇してやろうではないか。
 その代わり、分かってるだろ?
 実家と連絡を取って、裏切るように勧めるのだ。
 勝利の暁には、実家の領地も倍増してやる。
 だから自害するような馬鹿な真似はするな。
 その短剣を捨てろ」

 私の思惑通りになりました。
 エリアスは最初慎重で、手先にだけ最上階に送り込んできました。
 でも私がネイを背中にかばい、短剣を喉に向けて待っていたら、エリアスの腐れ外道が、私を戦争の切り札に使うために、のこのことやってきました。

「愚かですね。
 私の罠にかかってくれましたね。
 ネイ、よくこの男を見るのです
 この男が貴女のお父さんの敵です。
 私が敵を取ってあげますから、貴女は復讐になどとらわれず、自由に幸せに生きるのですよ」

「はい、ママ」

「はぁあ?
 なにを言っている?
 まいったな、こんなバカを正妃にせねばならんのか。
 だが王侯貴族の結婚は政略だ。
 我慢するしかあるまい。
 このバカ女を殺さずに捕らえられるか?」

「お任せください、王太子殿下」

「バカはあんただよ!
 罪を悔いろなんて言わない。
 苦しみ抜いて死にな!」

 とは言いましたが、ネイに残虐な殺しを見せるわけにはいきません。
 普通の殺し合いは、この世界では慣れるしかありません。
 ですが拷問や残虐な処刑方法まで見せる必要はありません。
 逃げるためにも城内で火事を引き起こした方がいいので、私が使える最強最大の火炎魔法を立て続けに放ちました。

「「「「「ギャアァアア」」」」」

 同じ階にいた敵が炎に包まれ一瞬で灰になりました。
 一瞬とはいっても、身体強化と装備している護りの魔道具に差でがありますから、多少の差はあります。
 多少鍛えられていた騎士は少し長く生き延びました。
 エリアスも防御の魔道具を装備していたのでしょう、多少は持ちこたえました。
 ですが、魔法書の限界ギリギリ、九十九発の中級上の火炎魔法を受けては、魔道具も受け止めきれなかったようです。
 私はエリアスが死んだのを確かめてからアマゾーンたちを追いました。
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