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31話

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「そうかい、敵を討ったのかい。
 そりゃあよかった。
 だが完全に安心というわけじゃないよね?」

「ええ、国王陛下や他の王子がどう動くか分からないわ。
 この国を出て行こうと思うの」

 空を飛んで、先に逃げていたダニエラたちアマゾーンに追いつきました。
 そこで事情と状況を話して、この国を出て行く決意を話しました。
 王太子を殺してしまっているのです。
 彼らも安全のためについてきてくれるでしょう。
 国境の関所を通るわけにはいきません。
 見張りの少ないところを密出国して密入国するしかありません。

「それで、いったいどこに行くんだい、ポーラ?」

「ヘリーズ王国に行こうと思っているの」

 ヘリーズ王国は、サンテレグルラルズ王国を挟んてエルフィンストン王国の反対にある国ですから、マルティナも刺客が送り難いでしょう。
 それでなくてもサンテレグルラルズ王国ともめていますからね。
 まあ、エリアスの腐れ外道が死んで、証人の私が逃げ出しましたから、サンテレグルラルズ王国の非難がどこまで続くかは未知数ですが。

「そうかい。
 それが順当な判断だろう。
 問題は稼ぎ場だね。
 ヘリーズ王国には稼げる魔境やダンジョンがないんだよね」

 大事なところですね。
 生活の元となる稼ぎ場がないと困るのは確かです。
 普通ならば。
 ですが私には魔法書と魔法巻物を創り出す力があります。
 カルラにもです。
 問題は高値で売れるかどうかですね。

「私とカルラが魔法書と魔法巻物を作って売る。
 他のみんなが護ってくれる生活でもいいのですが、問題がありますか?」

「まあ、それが一番穏やかな暮らしなんだろうけどね。
 単なる護衛じゃ冒険者になった意味がないんだよね。
 それにどうせ魔法書と魔法巻物を売って暮らすなら、高値で買ってくれる国、魔境やダンジョンで潤っている国の方がいいんだよ」

 確かにダニエラの言う通りです。
 冒険者の稼ぎで潤っている国。
 冒険者が大金を積んでも魔法書と魔法巻物を購入する国が、価格的には有利です。
 
「でもダニエラ。
 そういう国は物価も高いし治安も悪いわ。
 ヘリーズ王国が平和で暮らしやすいのなら、そこに腰を落ち着けるのもいいんじゃないの?」

「まあ、そんな穏やかな生活も悪くはないだろうけでどね。
 それに暁の騎士たちを待つ必要もあるからね。
 いいさ、今回はあまりに波乱に満ちた事件が連続したからね。
 一年くらいは休養にあててもいいね」

 街道を外れ、道なき道を逃亡しながら話していると、ティシュトリヤが追いついてくれました。
 五十四頭もの訓練された騎士用軍馬を連れてです。
 これで一気に逃亡が楽になります。

「さあ、逃げましょう」
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