54 / 103
第二章
試験
しおりを挟む
「さてどうしたものかな」
「・・・・・」
「御前はどうしたらいいと思う」
「私はただの使いでございます」
「木猿は、与一郎が使いに選ぶほど信頼している者であろう。与一郎が間違いを犯さぬように、諫めたり助言したりするのも忠義ではないか」
「僭越ながら申し上げますが、与一郎様の考えに間違いはないと考えます」
「では何故、儂に無断で玄蕃允を家臣に召し抱える約束をしたと思う」
「羽柴様に玄蕃允殿を目通りさせて、家臣に召し抱えると言う御言葉を断るような事があれば、どうしても玄蕃允殿を切腹させねばならなくなります」
「そうであろうな」
「ですが与一郎様ならば、失敗しても殿様に再度説得を願う事が出来ます」
「ふむ。確かに小一郎に二度目の説得をさせることが出来るな」
「殿様が失敗なされても、羽柴様が説得される事も出来ますし、恥をかかぬように説得せずに腹を切らす事も出来ます」
「ふむ。それはよいとして、親父殿を許せと言うのは、大きく出過ぎているのではないか」
「与一郎様は柴田殿を許すなどと約束しておりません。そのような大事は、羽柴様が決められるべき事なので、どうしても玄蕃允殿が修理進殿の助命を願うのなら、成るか成らぬかは分からぬが、使者だけは送ると申され、私を羽柴様の元に遣わしたのでございます」
「ふむ。よくぞ申した。合格じゃ」
「私が与一郎様の側に仕える資格があるか、試されたのですね」
「当然じゃ。大切な木下家の跡取りの側に仕える者を、儂が試さんでどうする」
「・・・・・」
「それでそなたから見て、玄蕃允はどうだ。助けても裏切るか」
「修理進殿を人質に取っておけば、決して裏切ることはないと思われます」
「親父殿を助けるのは、玄蕃允を働かせるための方法だと申すのだな」
「三法師様を奉じ、御次公が御健在の間は、二度と敵対せぬと思われます」
「・・・・・」
「必要とあれば、伊賀者を総動員して亡き者といたしましょう」
「二言はないな」
「与一郎様が下忍どもにしてくださった御恩は、子々孫々忘れるモノではございません」
「時が至れば、儂が声をかける。決して先走るではないぞ」
「はい」
「又左や内蔵助はどうするべきだと言っていた」
「羽柴様が約束した内容は、殿や与一郎様には関係ない事でございます」
「そう言う訳にもいくまい」
「羽柴様が近江の戦場におられれば、その通りでございますが、実際に槍をあわせ刃を戦わせたのは殿と与一郎様でございます」
「小一郎と与一郎の責任で、全てを任せろと申すのだな」
「与一郎様の御考えでは、又左衞門殿や内蔵助殿には、上杉や北条との戦いを見て本領安堵を考えると伝える方が、羽柴様の蔵入り地が増え、後々の天下の為だと言う事でございます」
「ふむ。ここは与一郎の手並みを見てみるか」
「・・・・・」
「御前はどうしたらいいと思う」
「私はただの使いでございます」
「木猿は、与一郎が使いに選ぶほど信頼している者であろう。与一郎が間違いを犯さぬように、諫めたり助言したりするのも忠義ではないか」
「僭越ながら申し上げますが、与一郎様の考えに間違いはないと考えます」
「では何故、儂に無断で玄蕃允を家臣に召し抱える約束をしたと思う」
「羽柴様に玄蕃允殿を目通りさせて、家臣に召し抱えると言う御言葉を断るような事があれば、どうしても玄蕃允殿を切腹させねばならなくなります」
「そうであろうな」
「ですが与一郎様ならば、失敗しても殿様に再度説得を願う事が出来ます」
「ふむ。確かに小一郎に二度目の説得をさせることが出来るな」
「殿様が失敗なされても、羽柴様が説得される事も出来ますし、恥をかかぬように説得せずに腹を切らす事も出来ます」
「ふむ。それはよいとして、親父殿を許せと言うのは、大きく出過ぎているのではないか」
「与一郎様は柴田殿を許すなどと約束しておりません。そのような大事は、羽柴様が決められるべき事なので、どうしても玄蕃允殿が修理進殿の助命を願うのなら、成るか成らぬかは分からぬが、使者だけは送ると申され、私を羽柴様の元に遣わしたのでございます」
「ふむ。よくぞ申した。合格じゃ」
「私が与一郎様の側に仕える資格があるか、試されたのですね」
「当然じゃ。大切な木下家の跡取りの側に仕える者を、儂が試さんでどうする」
「・・・・・」
「それでそなたから見て、玄蕃允はどうだ。助けても裏切るか」
「修理進殿を人質に取っておけば、決して裏切ることはないと思われます」
「親父殿を助けるのは、玄蕃允を働かせるための方法だと申すのだな」
「三法師様を奉じ、御次公が御健在の間は、二度と敵対せぬと思われます」
「・・・・・」
「必要とあれば、伊賀者を総動員して亡き者といたしましょう」
「二言はないな」
「与一郎様が下忍どもにしてくださった御恩は、子々孫々忘れるモノではございません」
「時が至れば、儂が声をかける。決して先走るではないぞ」
「はい」
「又左や内蔵助はどうするべきだと言っていた」
「羽柴様が約束した内容は、殿や与一郎様には関係ない事でございます」
「そう言う訳にもいくまい」
「羽柴様が近江の戦場におられれば、その通りでございますが、実際に槍をあわせ刃を戦わせたのは殿と与一郎様でございます」
「小一郎と与一郎の責任で、全てを任せろと申すのだな」
「与一郎様の御考えでは、又左衞門殿や内蔵助殿には、上杉や北条との戦いを見て本領安堵を考えると伝える方が、羽柴様の蔵入り地が増え、後々の天下の為だと言う事でございます」
「ふむ。ここは与一郎の手並みを見てみるか」
23
あなたにおすすめの小説
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
マルチバース豊臣家の人々
かまぼこのもと
歴史・時代
1600年9月
後に天下人となる予定だった徳川家康は焦っていた。
ーーこんなはずちゃうやろ?
それもそのはず、ある人物が生きていたことで時代は大きく変わるのであった。
果たして、この世界でも家康の天下となるのか!?
そして、豊臣家は生き残ることができるのか!?
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる