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第1章
第8話:抜擢登用
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若殿西尾山城守達の急襲を受けた謀叛人一派は、虚を突かれて大混乱した。
僅かでも罪悪感を持っていた者達は素直に降伏しようとした。
国元での厳罰を知らないので、家を潰されるとは思わなかった。
「斬り抜けろ、生き残りたければ若殿を斬れ!」
だが、側用人の倉橋源蔵は自分の行った事を正確に理解していた。
絶対に許されない事を理解していたので、一派を鼓舞して斬りぬけようとした。
「おのれ倉橋、父上に阿芙蓉を盛った悪行許し難し、手討ちにしてくれる!」
「ふん、凡庸な若君に某が討ち取れますか?」
怒りのあまり周りが見えなくなっている若殿を倉橋源蔵が挑発する。
「山城守様はお前のような下郎の相手はせん、某が相手だ」
佐久間勝三郎がすっと前に出て若殿を庇う。
倉橋源蔵の足捌きと身の熟しで、殿様剣術では殺されるだけだと見抜いたからだ。
これまで余裕な態度でいた倉橋源蔵だったが、一瞬で本気となった。
「そのような大身槍を屋敷の中で使えるとでも思っているのか?」
勝三郎が振るう槍は大身槍と呼ばれる、素槍の四倍は重い剛槍だった。
穂先が三尺と長く、穂先を支える一間柄の部分が重く頑丈な赤樫で作られているうえに、茎が石突のまで達して一体化している。
そんな剛槍を軽々と扱うだけで凄腕の槍使いだと分かる。
実際勝三郎は神業のような槍捌きで鯉を殺さずに捕らえられる。
それが分かるくらいの剣客である倉橋源蔵は、一気に大汗をかきだした。
勝三郎と倉橋源蔵が互いの隙を伺って睨み合っている間に、長谷川平蔵や幕府の密偵が、次々と謀叛人一派を斬り捨てていく。
若殿の近習番五人も必死で謀叛人一派を斬ろうとするが、突出した剣客ではない普通の若侍なので、互いに手傷を負って一進一退だった。
「うわぁあああああ」
命惜しさに一人が逃げ出すと、私利私欲で集まっていた連中など脆いものだ。
あっという間に謀叛人一派は我先に逃げ出した。
だが、長谷川平蔵達が主君にアヘンを盛るような連中を見逃すわけがない。
「ぎゃあああああ」
背中を見せて逃げ出した憶病な謀叛人を、情け容赦なく斬り殺した。
何も聞かされていなかった若殿派の江戸家老達も、謀叛達に斬りかかる。
上屋敷内で藩士同士の血で血を洗う殺し合いが行われた。
そんな周りの修羅場に関係なく、勝三郎と倉橋源蔵は睨み合っていた。
ただ、勝三郎は間合いが長い分だけ余裕があった。
倉橋源蔵は、命懸けで槍の間合いに入り込まないと刀が届かない。
「死ね!」
謀叛人一派だった者の中から裏切り者が現れた。
江戸家老の様子を探るために若殿派の振りをしていた者が、倉橋源蔵の口を封じて謀叛人だった事を隠そうとした。
「裏切者が!」
後ろから斬りかかろうとした裏切者を倉橋源蔵が斬り捨てる。
「うっ!」
勝三郎は敵の隙を見逃すような軟弱者ではない。
凶盗と命懸けで戦う事を前提に、幼い頃から武芸百般を学んできた。
自分が凶盗を取り逃したら無辜の民が殺されると叩き込まれている。
倉橋源蔵が裏切者を斬るために振り返ったのを、絶好の機会と槍を突き出した。
背後から深々と心臓をひと突きにされた倉橋源蔵は何も言えなかった。
辞世の句どころか、恨み言の一つも言えずに絶命した。
「留守居役の木村玄馬は生け捕りにせよ」
表向き忠義者の振りをしていた謀叛人を見逃さないように、敵の主だった者は幾人か生け捕りにしなければいけない。
剣客並みの腕を持つ倉橋源蔵を生け捕りにするのは難しいが、口先だけの木村玄馬なら生け捕りにできる。
★★★★★★
「この度の助太刀、心からお礼を申す」
西尾山城守が佐久間勝三郎と長谷川平蔵に深々と頭を下げる。
「とんでもございません、武士として当然の事をしたまででございます」
旗本の長谷川平蔵が代表して返事をする。
まだ町奉行所与力の部屋住みでしかない佐久間勝三郎は黙って控えている。
「貴殿らに働きに対して余りにも些少だが、心ばかりの礼である、受け取ってくれ」
西尾山城守が言うと、袱紗に包んだ包金十個千両もの大金を江戸家老が差し出す。
横須賀藩西尾家の浮沈が千両、多いと思うか少ないと思うかは人それぞれだ。
ただ、藩士の半数以上を斬首放逐して接収した金銀と家財がかなりあった。
総額が千両よりも多かったので、横須賀藩の勝手向きが破綻する額ではない。
「御老中方にお渡しさせていただきます」
長谷川平蔵と佐久間勝三郎の二人が千両を山分けにするのではなかった。
千両は、西尾家が家臣に乗っ取られる事を防いでもらった御礼だった。
幕閣に御家騒動を無かった事にしてもらう為のお金だった。
「御老中の方々の屋敷に御挨拶に伺うべきなのは重々承知しているのだが、父上が阿芙蓉のせいで正気を失っているうえに、藩士の半数がいなくなっていてな……」
「御心配めさるな、御老中は懐の広いお方です。
山城守様が藩の立て直しで大変な事は重々承知しておられる。
それでも家中の事は御家老に任せて、早めに挨拶に行かれた方が良いでしょう。
御老中の方々は御忙しいので、日取りは我らが御知らせ致します」
「何分良しなに御願いする」
横須賀藩は幕閣への礼と事後工作、同時に藩士の穴埋めにも奔走した。
処分した家臣の穴埋めに幕臣の部屋住みや牢人を召し抱えようとした。
だが、幾ら横須賀が江戸よりも物価が安いと言っても、扶持が低すぎた。
上士の給人でも五十石や三十石がほとんどなのだ。
中士である扶持取に至っては、 御納戸役で四人扶持と金五両二分。
御近習番や奥付で四人扶持と金五両と薄給過ぎた。
幕臣の中間や小者ですら、陪臣に下ってまで横須賀藩に仕えようとしなかった。
よほど行き場のない幕臣の部屋住くらいしか仕官しようとしなかった。
江戸の牢人者でも、寺子屋の師匠とか自身番の書役のような、しっかりとした仕事を持っている者は召し抱えられなかった。
「山城守様、完全に召し抱えるのは無理なので、指南役として招かれませんか?」
町方に通じた佐久間勝三郎が、優秀な家臣を集められない山城守に言う。
「指南役だと?」
「はい、道場主を剣術指南役に迎えれば、形だけは上士を増やせます。
いざという時は、門弟を連れて駆けつけてくれます。
道場主も、横須賀藩の剣術指南役という大看板を手に入れられます」
「確かに互いに大きな利があるな、勝三郎殿に任せてもよいか?」
「御任せ下さい、名声を望まぬ方々なので世に名は知られていませんが、信頼できて腕の立つ道場主を紹介させていただきます。
剣術指南役は馬庭念流と直心影流と一刀流中西派の三人を紹介できます。
槍術指南役も宝蔵院流と福沢流と冨田流の三人を紹介できます。
小具足術の起倒流は一人紹介できます」
「そうか、それだけで給人格七人の穴を埋める事ができるのだな。
だが、冨田流は剣術の流派であろう?」
「富田流は古流ですので、剣術だけでなく薙刀術、槍術、棒術、大太刀の技も伝えられているのです。
某が紹介させていただくのは薙刀術、槍術、棒術の名手です」
「おお、そうか、勝三郎殿の槍術は凄まじかった。
勝三郎が紹介してくれる槍術指南役なら安心して藩士の稽古を任せられる。
それで、指南役の手当ては幾らほどにすれば好いのだ?」
「給人格の十人扶持で召し抱えられたら良いでしょう。
実際には江戸で暮らしやすいように、年十八両支給されればよいでしょう」
「そうか、それで良いのなら七人を指南役にしよう」
「それと、江戸で算術と天文の私塾を開いている者がおります。
勝手向きを任せるのに丁度良いと思われます」
「ほう、藩の勝手向きを良くしてくれそうなのか?」
「それはやらせて見なければ分かりません。
ですが、少なくとも公金を使いこむような者ではありません。
財務指南役に迎えて、藩政改革をやらせてみると面白いと思われます。
私塾の弟子で平民出の者なら、二人扶持と二両で召し抱えられるかもしれません。
勘定方や祐筆に取立てるのに丁度好いのではありませんか?」
「そうだな、斬首した者達の穴を早急に埋めねばならぬのは確かだ。
分かった、召し抱えるから連れて来てくれ」
僅かでも罪悪感を持っていた者達は素直に降伏しようとした。
国元での厳罰を知らないので、家を潰されるとは思わなかった。
「斬り抜けろ、生き残りたければ若殿を斬れ!」
だが、側用人の倉橋源蔵は自分の行った事を正確に理解していた。
絶対に許されない事を理解していたので、一派を鼓舞して斬りぬけようとした。
「おのれ倉橋、父上に阿芙蓉を盛った悪行許し難し、手討ちにしてくれる!」
「ふん、凡庸な若君に某が討ち取れますか?」
怒りのあまり周りが見えなくなっている若殿を倉橋源蔵が挑発する。
「山城守様はお前のような下郎の相手はせん、某が相手だ」
佐久間勝三郎がすっと前に出て若殿を庇う。
倉橋源蔵の足捌きと身の熟しで、殿様剣術では殺されるだけだと見抜いたからだ。
これまで余裕な態度でいた倉橋源蔵だったが、一瞬で本気となった。
「そのような大身槍を屋敷の中で使えるとでも思っているのか?」
勝三郎が振るう槍は大身槍と呼ばれる、素槍の四倍は重い剛槍だった。
穂先が三尺と長く、穂先を支える一間柄の部分が重く頑丈な赤樫で作られているうえに、茎が石突のまで達して一体化している。
そんな剛槍を軽々と扱うだけで凄腕の槍使いだと分かる。
実際勝三郎は神業のような槍捌きで鯉を殺さずに捕らえられる。
それが分かるくらいの剣客である倉橋源蔵は、一気に大汗をかきだした。
勝三郎と倉橋源蔵が互いの隙を伺って睨み合っている間に、長谷川平蔵や幕府の密偵が、次々と謀叛人一派を斬り捨てていく。
若殿の近習番五人も必死で謀叛人一派を斬ろうとするが、突出した剣客ではない普通の若侍なので、互いに手傷を負って一進一退だった。
「うわぁあああああ」
命惜しさに一人が逃げ出すと、私利私欲で集まっていた連中など脆いものだ。
あっという間に謀叛人一派は我先に逃げ出した。
だが、長谷川平蔵達が主君にアヘンを盛るような連中を見逃すわけがない。
「ぎゃあああああ」
背中を見せて逃げ出した憶病な謀叛人を、情け容赦なく斬り殺した。
何も聞かされていなかった若殿派の江戸家老達も、謀叛達に斬りかかる。
上屋敷内で藩士同士の血で血を洗う殺し合いが行われた。
そんな周りの修羅場に関係なく、勝三郎と倉橋源蔵は睨み合っていた。
ただ、勝三郎は間合いが長い分だけ余裕があった。
倉橋源蔵は、命懸けで槍の間合いに入り込まないと刀が届かない。
「死ね!」
謀叛人一派だった者の中から裏切り者が現れた。
江戸家老の様子を探るために若殿派の振りをしていた者が、倉橋源蔵の口を封じて謀叛人だった事を隠そうとした。
「裏切者が!」
後ろから斬りかかろうとした裏切者を倉橋源蔵が斬り捨てる。
「うっ!」
勝三郎は敵の隙を見逃すような軟弱者ではない。
凶盗と命懸けで戦う事を前提に、幼い頃から武芸百般を学んできた。
自分が凶盗を取り逃したら無辜の民が殺されると叩き込まれている。
倉橋源蔵が裏切者を斬るために振り返ったのを、絶好の機会と槍を突き出した。
背後から深々と心臓をひと突きにされた倉橋源蔵は何も言えなかった。
辞世の句どころか、恨み言の一つも言えずに絶命した。
「留守居役の木村玄馬は生け捕りにせよ」
表向き忠義者の振りをしていた謀叛人を見逃さないように、敵の主だった者は幾人か生け捕りにしなければいけない。
剣客並みの腕を持つ倉橋源蔵を生け捕りにするのは難しいが、口先だけの木村玄馬なら生け捕りにできる。
★★★★★★
「この度の助太刀、心からお礼を申す」
西尾山城守が佐久間勝三郎と長谷川平蔵に深々と頭を下げる。
「とんでもございません、武士として当然の事をしたまででございます」
旗本の長谷川平蔵が代表して返事をする。
まだ町奉行所与力の部屋住みでしかない佐久間勝三郎は黙って控えている。
「貴殿らに働きに対して余りにも些少だが、心ばかりの礼である、受け取ってくれ」
西尾山城守が言うと、袱紗に包んだ包金十個千両もの大金を江戸家老が差し出す。
横須賀藩西尾家の浮沈が千両、多いと思うか少ないと思うかは人それぞれだ。
ただ、藩士の半数以上を斬首放逐して接収した金銀と家財がかなりあった。
総額が千両よりも多かったので、横須賀藩の勝手向きが破綻する額ではない。
「御老中方にお渡しさせていただきます」
長谷川平蔵と佐久間勝三郎の二人が千両を山分けにするのではなかった。
千両は、西尾家が家臣に乗っ取られる事を防いでもらった御礼だった。
幕閣に御家騒動を無かった事にしてもらう為のお金だった。
「御老中の方々の屋敷に御挨拶に伺うべきなのは重々承知しているのだが、父上が阿芙蓉のせいで正気を失っているうえに、藩士の半数がいなくなっていてな……」
「御心配めさるな、御老中は懐の広いお方です。
山城守様が藩の立て直しで大変な事は重々承知しておられる。
それでも家中の事は御家老に任せて、早めに挨拶に行かれた方が良いでしょう。
御老中の方々は御忙しいので、日取りは我らが御知らせ致します」
「何分良しなに御願いする」
横須賀藩は幕閣への礼と事後工作、同時に藩士の穴埋めにも奔走した。
処分した家臣の穴埋めに幕臣の部屋住みや牢人を召し抱えようとした。
だが、幾ら横須賀が江戸よりも物価が安いと言っても、扶持が低すぎた。
上士の給人でも五十石や三十石がほとんどなのだ。
中士である扶持取に至っては、 御納戸役で四人扶持と金五両二分。
御近習番や奥付で四人扶持と金五両と薄給過ぎた。
幕臣の中間や小者ですら、陪臣に下ってまで横須賀藩に仕えようとしなかった。
よほど行き場のない幕臣の部屋住くらいしか仕官しようとしなかった。
江戸の牢人者でも、寺子屋の師匠とか自身番の書役のような、しっかりとした仕事を持っている者は召し抱えられなかった。
「山城守様、完全に召し抱えるのは無理なので、指南役として招かれませんか?」
町方に通じた佐久間勝三郎が、優秀な家臣を集められない山城守に言う。
「指南役だと?」
「はい、道場主を剣術指南役に迎えれば、形だけは上士を増やせます。
いざという時は、門弟を連れて駆けつけてくれます。
道場主も、横須賀藩の剣術指南役という大看板を手に入れられます」
「確かに互いに大きな利があるな、勝三郎殿に任せてもよいか?」
「御任せ下さい、名声を望まぬ方々なので世に名は知られていませんが、信頼できて腕の立つ道場主を紹介させていただきます。
剣術指南役は馬庭念流と直心影流と一刀流中西派の三人を紹介できます。
槍術指南役も宝蔵院流と福沢流と冨田流の三人を紹介できます。
小具足術の起倒流は一人紹介できます」
「そうか、それだけで給人格七人の穴を埋める事ができるのだな。
だが、冨田流は剣術の流派であろう?」
「富田流は古流ですので、剣術だけでなく薙刀術、槍術、棒術、大太刀の技も伝えられているのです。
某が紹介させていただくのは薙刀術、槍術、棒術の名手です」
「おお、そうか、勝三郎殿の槍術は凄まじかった。
勝三郎が紹介してくれる槍術指南役なら安心して藩士の稽古を任せられる。
それで、指南役の手当ては幾らほどにすれば好いのだ?」
「給人格の十人扶持で召し抱えられたら良いでしょう。
実際には江戸で暮らしやすいように、年十八両支給されればよいでしょう」
「そうか、それで良いのなら七人を指南役にしよう」
「それと、江戸で算術と天文の私塾を開いている者がおります。
勝手向きを任せるのに丁度良いと思われます」
「ほう、藩の勝手向きを良くしてくれそうなのか?」
「それはやらせて見なければ分かりません。
ですが、少なくとも公金を使いこむような者ではありません。
財務指南役に迎えて、藩政改革をやらせてみると面白いと思われます。
私塾の弟子で平民出の者なら、二人扶持と二両で召し抱えられるかもしれません。
勘定方や祐筆に取立てるのに丁度好いのではありませんか?」
「そうだな、斬首した者達の穴を早急に埋めねばならぬのは確かだ。
分かった、召し抱えるから連れて来てくれ」
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