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第1章
第17話:尾行と手土産
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「重吉さん、磯部の野郎が中屋敷に姿を現しました」
鶴亀姉妹が勝三郎の手料理を堪能した翌日、三河大浜藩の中屋敷を見張っていた密偵の一人が鯛徳に駆けこんで来た。
「直ぐに若旦那に知らせる、お前は腹ごしらえをして休んでな」
猿のような身のこなしで江戸の町を荒らしていた元盗賊、今は鯛徳の番頭を任されるようになった猿の重吉が答える。
「へい」
言われた密偵は裏長屋に設けられた飯部屋に行く。
飯部屋には鯛徳の調理場で作られた握り飯と料理が置かれている。
密偵達がいつ戻っても腹一杯食べられるように、山のように並べられている。
握り飯も塩握り一種ではなく、胡麻握り、海苔握り、梅握りなどがある。
もちろん糠漬けなどの漬物も置かれているし、季節野菜の煮しめも置かれている。
それどころか、江戸っ子好みに醤油辛く煮られた魚の佃煮まで置かれている。
腹一杯食べた密偵は、部屋の一角に置かれている弁当を風呂敷に包んで飛び出す。
持ち場を離れられない密偵の為に、竹皮に包んだ弁当が幾つも置いてあるのだ。
休めと言われても、今も見張っている仲間に弁当を届けたい思いが強かった。
「若旦那、 磯部が中屋敷に現れたそうですが、どうしますか?」
若い密偵が飯を食べてる時、川際で魚を獲る勝三郎に重吉が報告する。
「磯部に手を貸している藩士を見つけてくれ。
大浜藩の膿を全部絞り出して、金弥様が安心して婿入りできるようにする」
「分かりやした、手の空いている連中を全員大浜藩の屋敷に向かわせます。
本気でやるなら、屋敷の中に入る事になりますが、宜しいのですか?」
「構わない、あらゆる手段を使って、金弥様の為にならない藩士を炙りだせ」
「亥之助を使う事になりますが、宜しいですか?」
「構わない、だが亥之助には俺から言う」
「はい、お願いいたします」
勝三郎は、鶴亀姉妹の影供をするように命じた亥之助が戻るのを待った。
鶴亀姉妹の護衛に付けたのは、お園だけではなかった。
姉妹に分からないように、腕の良い影供を複数つけていたのだ。
亥之助に慕われている勝三郎だが、同じ様に勝三郎を慕う密偵との兼ね合いもあり、亥之助だけに供をさせる訳にはいかず、鶴亀姉妹の影供を命じたのだ。
「亥之助、姉妹達の仇が中屋敷に現れた。
御老中の御子息が安心して婿入りできるように、姉妹が安心して藩に戻れるように、悪意のある藩士をすべて取り除きたい。
警戒厳重な上屋敷は亥之助に探ってもらいたい、頼めるか?」
鶴亀姉妹の影供を終えて戻って来た亥之助に言う。
「任せてください、鶴様と亀様が安心して戻れるように、少しでも悪意のある奴は全員見つけ出して御覧に入れます」
「亥之助なら間違いはないと思うが、無理はするな、自分も大切にするのだぞ」
「はい、ありがとうございます」
その日から佐久間家の密偵達は、これまで以上に厳重な探索を行った。
母屋である表御殿の屋根裏や床下だけでなく、武家長屋や中間長屋の屋根裏や床下にも入り込み、一人の悪人も見逃さないようにした。
「若旦那、大方の悪臣は分かったと思われます」
屋敷を見張りだした十日後、鯛仙から鯛徳に戻った勝三郎に重吉が報告する。
「まだ十日ほどなのに、ほぼ分かったと言い切れるのか?」
「はい、一番の大物が分かりましたので、後の有象無象はどうにでもなります」
「大物か、誰が裏で糸を引いていたのだ?」
「江戸家老でございます」
「権力争いがあったのか?」
「六年前の事ですので、確かな事は申し上げられませんが、出羽守様が勝手掛若年寄になられたのを機に、江戸家老には多くの賂が届けられたようでございます」
「中根十次郎殿がそれを咎めたのか?」
「江戸家老が話していた事なので、確かな事ではないのですが、賂を貰うのは良いが、全部藩に納めろと中根殿が申されたそうでございます」
「中根殿の気持ちも分からないではないが、勝手掛若年寄の江戸家老を十分に果たそうと思えば、費えも多く必要だからな、多少は手元に残したいであろう。
それで、今は賂をどうしているのだ?」
「全て受け取っていて、藩には全く納めていないようです」
「それは欲が深すぎるな、だが、江戸家老としての働きはどうなのだ?
どれほど賂を私していても、それ以上の働きをしていれば問題はない」
「無能です、無能な上に、忠義の心がないとしか思えません。
水野家の為ではなく、賄賂を多く取るためだけに働いております。
それもあって、町方での出羽守様の評判はすこぶる悪いです」
「出羽守様の悪評は俺も耳にしている。
このままでは田沼様の評判も悪くなってしまう。
江戸家老は早急に取り除くしかないな」
「はい、身分を弁えない分不相応な事を申し上げますが、私達から見ても取り除くべきだと思います」
「念の為に聞くが、出羽守様の信頼は厚いのだな?」
「はい、上手く立ち回っております」
「出羽守様には佞臣を見抜く御力がないのか、困ったものだ」
「はい」
「田沼様の屋敷に、今夜お会いしたいと、使者を出してくれ」
勝三郎は老中田沼意次から何時でも会いに来て好いと言われているが、行き成り訪ねるような不躾な事はできないので、常に使者を送ってから会いに行っていた。
老中田沼意次は月番に関係なく毎日登城しているので、日中は上屋敷におらず、留守を守る家臣に言付を頼み返事を待つのだ。
「承りました」
「今日の手土産を用意したいのだが、今から菓子を用意できるか?
流石に御老中を相手に鯉や鰡を手土産にはできないからな」
「御老中の手土産にできるような上菓子を、今から用意するのは難しいです。
奥の方々に御渡しする程度の菓子なら、塩瀬の饅頭と金龍山の米饅頭を御用意できますが、それよりも九年古酒を御持ちになられたらどうですか?」
「九年古酒か、俺が酒を好まないから思い浮かばなかったが、その方が良いな」
「はい、九年古酒だけでなく、下り酒を幾つか見繕わしていただきます。
酒ならば売り物が幾らでもございますので、直ぐに御用意できます」
「ならば下り酒と菓子を用意してくれ。
表だけでなく奥の評判も良くなければ、御老中も自由に動けないようだ。
奥の端女達に渡してくださいと、団子を多く持って行くのも良いな」
「景勝団子と大和団子でしたら、水茶屋で商う分が多めにございます」
「団子ばかりでは喜ばれないだろう。
水茶屋に置いてある助惣焼と粟餅も幾つか包んでくれ」
「今日の供揃えは公式に準ずる四人にして、手土産を持たせましょう」
「任せたぞ」
私的な外出時に連れ歩くのは小者一人にしている勝三郎だが、今日は大浜藩の家臣を半分以上殺す献策をするので、正式な供回りで田沼家の上屋敷に行った。
馬上で行く勝三郎の供は予定していたよりも増えて、供侍が二人、槍持ちと轡取が一人ずつ、草履取と提灯持ちも一人ずつ、更に手土産を持つ小者が二人付き従った。
「つまらないものですが、家中の方々でお食べください」
「お気を使っていただき、ありがとうございます」
それなりの量の手土産を持って来た勝三郎だが、家臣達が当たり前のように受け取るのは、手土産どころか賄賂をたくさん受け取る田沼家らしい態度だった。
「御案内させていただきます、どうぞこちらへ」
田沼家の家臣が足洗桶を出し手拭いを渡してくれる。
さして汚れてはいないのだが、他家の屋敷に上がるのに足を洗うのは常識なので、毎回奇麗にしてから屋敷に上がっている。
「こちらでしばしお待ちいただきます」
「ありがとうございます」
「待たせたな、水野家の件で大変な事が分かったと言う事だが、何があったのだ?」
ほとんど待つ事も無く老中の田沼意次がやって来た。
これから勝三郎は老中を相手に厳しい話をしなければならない。
仇討の件を知ってから色々調べた勝三郎は、田沼意次と水野出羽守が親しい友人で、だからこそ四男を養子に出す事にしたのを知った。
親しい友人が無能である事を話したら、下手な相手だと機嫌を悪くして逆恨みするかもしれないので、勝三郎と言えども多少は覚悟が必要だった。
鶴亀姉妹が勝三郎の手料理を堪能した翌日、三河大浜藩の中屋敷を見張っていた密偵の一人が鯛徳に駆けこんで来た。
「直ぐに若旦那に知らせる、お前は腹ごしらえをして休んでな」
猿のような身のこなしで江戸の町を荒らしていた元盗賊、今は鯛徳の番頭を任されるようになった猿の重吉が答える。
「へい」
言われた密偵は裏長屋に設けられた飯部屋に行く。
飯部屋には鯛徳の調理場で作られた握り飯と料理が置かれている。
密偵達がいつ戻っても腹一杯食べられるように、山のように並べられている。
握り飯も塩握り一種ではなく、胡麻握り、海苔握り、梅握りなどがある。
もちろん糠漬けなどの漬物も置かれているし、季節野菜の煮しめも置かれている。
それどころか、江戸っ子好みに醤油辛く煮られた魚の佃煮まで置かれている。
腹一杯食べた密偵は、部屋の一角に置かれている弁当を風呂敷に包んで飛び出す。
持ち場を離れられない密偵の為に、竹皮に包んだ弁当が幾つも置いてあるのだ。
休めと言われても、今も見張っている仲間に弁当を届けたい思いが強かった。
「若旦那、 磯部が中屋敷に現れたそうですが、どうしますか?」
若い密偵が飯を食べてる時、川際で魚を獲る勝三郎に重吉が報告する。
「磯部に手を貸している藩士を見つけてくれ。
大浜藩の膿を全部絞り出して、金弥様が安心して婿入りできるようにする」
「分かりやした、手の空いている連中を全員大浜藩の屋敷に向かわせます。
本気でやるなら、屋敷の中に入る事になりますが、宜しいのですか?」
「構わない、あらゆる手段を使って、金弥様の為にならない藩士を炙りだせ」
「亥之助を使う事になりますが、宜しいですか?」
「構わない、だが亥之助には俺から言う」
「はい、お願いいたします」
勝三郎は、鶴亀姉妹の影供をするように命じた亥之助が戻るのを待った。
鶴亀姉妹の護衛に付けたのは、お園だけではなかった。
姉妹に分からないように、腕の良い影供を複数つけていたのだ。
亥之助に慕われている勝三郎だが、同じ様に勝三郎を慕う密偵との兼ね合いもあり、亥之助だけに供をさせる訳にはいかず、鶴亀姉妹の影供を命じたのだ。
「亥之助、姉妹達の仇が中屋敷に現れた。
御老中の御子息が安心して婿入りできるように、姉妹が安心して藩に戻れるように、悪意のある藩士をすべて取り除きたい。
警戒厳重な上屋敷は亥之助に探ってもらいたい、頼めるか?」
鶴亀姉妹の影供を終えて戻って来た亥之助に言う。
「任せてください、鶴様と亀様が安心して戻れるように、少しでも悪意のある奴は全員見つけ出して御覧に入れます」
「亥之助なら間違いはないと思うが、無理はするな、自分も大切にするのだぞ」
「はい、ありがとうございます」
その日から佐久間家の密偵達は、これまで以上に厳重な探索を行った。
母屋である表御殿の屋根裏や床下だけでなく、武家長屋や中間長屋の屋根裏や床下にも入り込み、一人の悪人も見逃さないようにした。
「若旦那、大方の悪臣は分かったと思われます」
屋敷を見張りだした十日後、鯛仙から鯛徳に戻った勝三郎に重吉が報告する。
「まだ十日ほどなのに、ほぼ分かったと言い切れるのか?」
「はい、一番の大物が分かりましたので、後の有象無象はどうにでもなります」
「大物か、誰が裏で糸を引いていたのだ?」
「江戸家老でございます」
「権力争いがあったのか?」
「六年前の事ですので、確かな事は申し上げられませんが、出羽守様が勝手掛若年寄になられたのを機に、江戸家老には多くの賂が届けられたようでございます」
「中根十次郎殿がそれを咎めたのか?」
「江戸家老が話していた事なので、確かな事ではないのですが、賂を貰うのは良いが、全部藩に納めろと中根殿が申されたそうでございます」
「中根殿の気持ちも分からないではないが、勝手掛若年寄の江戸家老を十分に果たそうと思えば、費えも多く必要だからな、多少は手元に残したいであろう。
それで、今は賂をどうしているのだ?」
「全て受け取っていて、藩には全く納めていないようです」
「それは欲が深すぎるな、だが、江戸家老としての働きはどうなのだ?
どれほど賂を私していても、それ以上の働きをしていれば問題はない」
「無能です、無能な上に、忠義の心がないとしか思えません。
水野家の為ではなく、賄賂を多く取るためだけに働いております。
それもあって、町方での出羽守様の評判はすこぶる悪いです」
「出羽守様の悪評は俺も耳にしている。
このままでは田沼様の評判も悪くなってしまう。
江戸家老は早急に取り除くしかないな」
「はい、身分を弁えない分不相応な事を申し上げますが、私達から見ても取り除くべきだと思います」
「念の為に聞くが、出羽守様の信頼は厚いのだな?」
「はい、上手く立ち回っております」
「出羽守様には佞臣を見抜く御力がないのか、困ったものだ」
「はい」
「田沼様の屋敷に、今夜お会いしたいと、使者を出してくれ」
勝三郎は老中田沼意次から何時でも会いに来て好いと言われているが、行き成り訪ねるような不躾な事はできないので、常に使者を送ってから会いに行っていた。
老中田沼意次は月番に関係なく毎日登城しているので、日中は上屋敷におらず、留守を守る家臣に言付を頼み返事を待つのだ。
「承りました」
「今日の手土産を用意したいのだが、今から菓子を用意できるか?
流石に御老中を相手に鯉や鰡を手土産にはできないからな」
「御老中の手土産にできるような上菓子を、今から用意するのは難しいです。
奥の方々に御渡しする程度の菓子なら、塩瀬の饅頭と金龍山の米饅頭を御用意できますが、それよりも九年古酒を御持ちになられたらどうですか?」
「九年古酒か、俺が酒を好まないから思い浮かばなかったが、その方が良いな」
「はい、九年古酒だけでなく、下り酒を幾つか見繕わしていただきます。
酒ならば売り物が幾らでもございますので、直ぐに御用意できます」
「ならば下り酒と菓子を用意してくれ。
表だけでなく奥の評判も良くなければ、御老中も自由に動けないようだ。
奥の端女達に渡してくださいと、団子を多く持って行くのも良いな」
「景勝団子と大和団子でしたら、水茶屋で商う分が多めにございます」
「団子ばかりでは喜ばれないだろう。
水茶屋に置いてある助惣焼と粟餅も幾つか包んでくれ」
「今日の供揃えは公式に準ずる四人にして、手土産を持たせましょう」
「任せたぞ」
私的な外出時に連れ歩くのは小者一人にしている勝三郎だが、今日は大浜藩の家臣を半分以上殺す献策をするので、正式な供回りで田沼家の上屋敷に行った。
馬上で行く勝三郎の供は予定していたよりも増えて、供侍が二人、槍持ちと轡取が一人ずつ、草履取と提灯持ちも一人ずつ、更に手土産を持つ小者が二人付き従った。
「つまらないものですが、家中の方々でお食べください」
「お気を使っていただき、ありがとうございます」
それなりの量の手土産を持って来た勝三郎だが、家臣達が当たり前のように受け取るのは、手土産どころか賄賂をたくさん受け取る田沼家らしい態度だった。
「御案内させていただきます、どうぞこちらへ」
田沼家の家臣が足洗桶を出し手拭いを渡してくれる。
さして汚れてはいないのだが、他家の屋敷に上がるのに足を洗うのは常識なので、毎回奇麗にしてから屋敷に上がっている。
「こちらでしばしお待ちいただきます」
「ありがとうございます」
「待たせたな、水野家の件で大変な事が分かったと言う事だが、何があったのだ?」
ほとんど待つ事も無く老中の田沼意次がやって来た。
これから勝三郎は老中を相手に厳しい話をしなければならない。
仇討の件を知ってから色々調べた勝三郎は、田沼意次と水野出羽守が親しい友人で、だからこそ四男を養子に出す事にしたのを知った。
親しい友人が無能である事を話したら、下手な相手だと機嫌を悪くして逆恨みするかもしれないので、勝三郎と言えども多少は覚悟が必要だった。
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