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第1章
第21話:徳川家基の感状と時服
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「侍従殿、ちょっと宜しいかな?」
鶴亀姉妹が見事仇討本懐をとげ、老中田沼意次と若年寄水野出羽守が姉妹と助太刀達に感状を書き渡している所に、西之丸老中の阿部豊後守が慌ててやって来た。
「何事ですか豊後守殿?」
「大納言様が勝三郎と仇討姉妹に会いたいと申しておられる」
「それは……正式な謁見としてですか?」
「不本意ながらその通りだ、正式な謁見としてだ。
仇討と助太刀が見事であったから、褒美と感状を渡したいと申されておられる」
「それはまことに栄誉な事ですが、西之丸として宜しいのですか?
勝三郎は御目見え以下の部屋住み、姉妹は陪臣の娘でございますぞ」
「世の手本となる事ではあるし、強く望まれておられるから、致し方あるまい。
全員と申されたら命を賭してでも御止めするが、三人なら宜しかろう」
「承りました、ですが、三人とも返り血を浴びた姿ですぞ。
着替えさせてからの方が良いのではありませんか?」
「いや、大納言様もいずれは武家の棟梁になられるお方じゃ。
返り血の一つ二つ、目に入れて頂いた方が良いのではないか?」
「分かりました、そこまで申されるのなら今直ぐ行かせましょう。
勝三郎、鶴、亀、大納言様が仇討をご覧になられ、いたく感動されたそうじゃ。
褒美を下賜してくださるそうだから、こちらの阿部豊後守殿について行け」
田沼意次が断ってくれたら良いと思っていた勝三郎は、うんざりした。
内心では後々の厄介を思い行きたくなかったが、表情には出せない。
神妙な表情を作って黙って聞いていた。
生れて初めて人を殺して気が動転している姉妹は、何が起こったのか全く分からず、阿部豊後守の言われるままついて行くだけだった。
徳川家基がお忍びで来ていた、濠を隔てた御用屋敷だったらまだましだったのだが、正式に感状と時服を下賜するために、西之丸まで行くことになってしまった。
「この度の仇討、誠に見事であった、褒めてつかわす。
鶴と亀は、姉妹だけで仇を探して六年も旅したと聞いた。
女人の身で艱難辛苦を乗り越えて仇討ち本懐を遂げた事、天晴れである」
「「有難き幸せでございます」」
数え年で十三歳でしかない徳川家基だが、次期将軍として大納言の地位にある。
次期将軍として西之丸を与えられ、一人とは言え老中が付き従っている。
十六歳と十三歳の姉妹では、緊張して型通りのお礼を言うだけで精一杯だった。
「柘植勝三郎は姉妹を助けて仇討の指揮を執ったと聞いた。
槍術も見事であったが、何より助太刀の指揮が際立って見事だった。
まことに天晴れである、姉妹共々感状と時服を下賜する」
「分不相応な褒美を賜り、感謝の言葉もございません。
この御恩は身命を賭して返させていただきます」
舞い上がって何も言えなくなっている姉妹を庇って勝三郎が礼を言う。
御目見え以下の部屋住みが、身に余る光栄に感激しているように演じる。
勝三郎と鶴亀姉妹が賜った時服とは、将軍家と大名らが贈答し合う季節の衣服だ。
大名らは端午に帷子を、重陽と歳暮に綿入を献上する。
上着と下着の表裏は仮縫い程度でとどめ、寸法は大きめに作り、葵の紋付のものを用意し、五百目を綿を別袋入れて献上し、調整は呉服師後藤縫殿允家に依頼する。
一方将軍は、献上された時服を年始の元旦や正月二日などに大名らへ下賜する。
他には永年役目を果たした大名や旗本らに、褒賞品として下賜する。
残ったものは後藤家に払い下げられ、大名が再利用したとかしなかったとか……
ただ、少なくとも大名家の家臣、それも女子供が貰えるようなものではない。
幕臣であろうと、永年奉公をした諸太夫役以上が賜る物だ。
御目見え以下の部屋住みが下賜されるような容易い物ではない。
葵の紋が入った時服を下賜されたら、家宝として代々子孫に伝える。
祝い事の度に飾って自慢するほど価値のある物だ。
「余としては勝三郎を小姓に取立てたいのだが、残念な事に幕府の定めで御家人の部屋住みを小姓にする事ができぬ」
「畏れ多い事でございます。
そのような栄誉は、某ごときには身に余ります。
もう二度と御目見えは叶わないと思いますが、御役をいただけた時には、大納言様の為に身命を賭して奉公させていただきます」
西之丸老中の差配で、中奥小姓から感状と目録を下賜された勝三郎と鶴亀姉妹は、もっと話したそうな徳川家基と殺意の籠った視線を送る小姓達の前から辞した。
「はぁあああああ、生きた心地がしませんでした」
徳川家基の前から辞して、誰もいない所にまで行った鶴が言う。
その言葉を聞いた途端、亀が腰を抜かしてその場にへたり込む。
「よく頑張った、もう終わったから大丈夫だ」
勝三郎はそう言うと、亀を御姫様抱っこして西之丸から辞した。
坂下御門から和田倉門に向かい、田沼家の上屋敷に入った。
鶴亀姉妹は仇討ち本懐を遂げ、藩内の不穏分子を全滅させたはずだが、勝三郎はとても慎重だった。
調べ損ねた不穏分子が残っている事を考えて、鶴亀姉妹を田沼家で暮らさせた。
田沼金弥が側近を連れて婿入りする時に、一緒に藩邸に向かわせる予定だった。
その日の夜、田沼家が仇討ち本懐の酒宴を開いてくれた。
「鶴と亀の仇討はまことに見事であった、これで胸を張って帰参できるな」
「ありがとうございます、全て御老中のお陰でございます」
「いや、いや、余はほんの少し口を利いただけだ。
全ては勝三郎が絵図を描いてやった事よ、礼なら勝三郎に申せ」
「はい、勝三郎様には返せないほどの御恩を受けました。
ですが御老中にもお返しできないほどの御恩を賜っております」
「そうか、そうか、そう言ってもらって悪い気はせんよ。
亀にはまだ早いが、鶴はもう良いだろう、一献飲め」
「有難く頂戴したします」
田沼意次は鶴が注いでくれた剣菱が入った酒器ではなく、自分の手元に置いていた酒器から鶴が持つ酒杯に酒を注ぐ。
鶴は覚悟を決めて注いでもらった酒を口にしたが……
「御老中……これは……」
「はっはっはっはっ、鶴を酒に酔わしてどうこうする気はない、安心しろ」
老中田沼意次が人の好さそうな笑顔で言う。
老中が持った酒器には、女子供が飲むための味醂が入っていたのだ。
この時代の味醂は、現代で言う栄養飲料のように飲まれていた。
「鶴は、帰参したら婿を取らなければならないな」
「……はい……」
鶴が一気に哀しそうな表情になった。
田沼意次にはその気持ちが痛いほどわかった。
地獄のような状態にいた年頃の娘が、勝三郎のような頼り甲斐のある剣客に助けられ、仇討ち本懐を遂げたのだ、惚れない方がおかしい。
「出羽守殿も残念だと申しておられた」
「え、御殿様が残念とは?」
「出羽守殿は勝三郎を鶴の婿に迎えたいと思っていたようなのだが、大納言様から時服を賜り忠義を誓ったので、陪臣に迎える事はできぬと残念がっておられた」
「あっ」
思わず声を上げた鶴は一瞬真っ赤になり、次にまた哀しそうな表情になった。
「其方達も勝三郎と同じように、大納言様から感状と時服を賜った。
出羽守殿も其方達を疎かには扱えない。
其方達が大納言様に会っている間に、これからの事を話し合った」
「はい」
「鶴と亀にはそれぞれ三百石の知行を与え、永代家老家とするそうだ」
「え、三百石、それも私と亀の二人ともにですか?」
一万三千石の大名家では、三百石も知行を与えらえる家老はあまりいない。
しかも父の跡を継ぐだけでなく、新たに家を興すなど普通は考えられない。
「大納言様の感状と時服はそれだけの価値があると言う事だ」
「はい」
「だからこそ、鶴と亀の婿は厳選しなければならない」
「……はい……」
「父親の闇討ちに加担したかもしれない、水野藩士から婿は迎えられない。
仇討の助太刀をしてくれた者か、我が家の藩士から選ぶしかない」
「御老中の御家中からですか?」
「そうだ、金弥に付き従う者は多くしたいが、限度がある。
他に二人送り込めるなら助かるのだ。
藩士は無理でも、勝三郎と懇意の者を送り込めれば助かる」
「はい、御老中が婿を選んでくだされば、それに勝る喜びはありません」
「うむ、勝三郎にも聞いて、鶴と亀が幸せになれる相手を選ぶ。
余や勝三郎の目が曇っていて、何か不都合があれば、いつで相談に来ればいい」
「とんでもございません、そんな事はあり得ません。
ですが、そこまで心を砕いていただけるのは、有難き幸せでございます」
鶴亀姉妹が見事仇討本懐をとげ、老中田沼意次と若年寄水野出羽守が姉妹と助太刀達に感状を書き渡している所に、西之丸老中の阿部豊後守が慌ててやって来た。
「何事ですか豊後守殿?」
「大納言様が勝三郎と仇討姉妹に会いたいと申しておられる」
「それは……正式な謁見としてですか?」
「不本意ながらその通りだ、正式な謁見としてだ。
仇討と助太刀が見事であったから、褒美と感状を渡したいと申されておられる」
「それはまことに栄誉な事ですが、西之丸として宜しいのですか?
勝三郎は御目見え以下の部屋住み、姉妹は陪臣の娘でございますぞ」
「世の手本となる事ではあるし、強く望まれておられるから、致し方あるまい。
全員と申されたら命を賭してでも御止めするが、三人なら宜しかろう」
「承りました、ですが、三人とも返り血を浴びた姿ですぞ。
着替えさせてからの方が良いのではありませんか?」
「いや、大納言様もいずれは武家の棟梁になられるお方じゃ。
返り血の一つ二つ、目に入れて頂いた方が良いのではないか?」
「分かりました、そこまで申されるのなら今直ぐ行かせましょう。
勝三郎、鶴、亀、大納言様が仇討をご覧になられ、いたく感動されたそうじゃ。
褒美を下賜してくださるそうだから、こちらの阿部豊後守殿について行け」
田沼意次が断ってくれたら良いと思っていた勝三郎は、うんざりした。
内心では後々の厄介を思い行きたくなかったが、表情には出せない。
神妙な表情を作って黙って聞いていた。
生れて初めて人を殺して気が動転している姉妹は、何が起こったのか全く分からず、阿部豊後守の言われるままついて行くだけだった。
徳川家基がお忍びで来ていた、濠を隔てた御用屋敷だったらまだましだったのだが、正式に感状と時服を下賜するために、西之丸まで行くことになってしまった。
「この度の仇討、誠に見事であった、褒めてつかわす。
鶴と亀は、姉妹だけで仇を探して六年も旅したと聞いた。
女人の身で艱難辛苦を乗り越えて仇討ち本懐を遂げた事、天晴れである」
「「有難き幸せでございます」」
数え年で十三歳でしかない徳川家基だが、次期将軍として大納言の地位にある。
次期将軍として西之丸を与えられ、一人とは言え老中が付き従っている。
十六歳と十三歳の姉妹では、緊張して型通りのお礼を言うだけで精一杯だった。
「柘植勝三郎は姉妹を助けて仇討の指揮を執ったと聞いた。
槍術も見事であったが、何より助太刀の指揮が際立って見事だった。
まことに天晴れである、姉妹共々感状と時服を下賜する」
「分不相応な褒美を賜り、感謝の言葉もございません。
この御恩は身命を賭して返させていただきます」
舞い上がって何も言えなくなっている姉妹を庇って勝三郎が礼を言う。
御目見え以下の部屋住みが、身に余る光栄に感激しているように演じる。
勝三郎と鶴亀姉妹が賜った時服とは、将軍家と大名らが贈答し合う季節の衣服だ。
大名らは端午に帷子を、重陽と歳暮に綿入を献上する。
上着と下着の表裏は仮縫い程度でとどめ、寸法は大きめに作り、葵の紋付のものを用意し、五百目を綿を別袋入れて献上し、調整は呉服師後藤縫殿允家に依頼する。
一方将軍は、献上された時服を年始の元旦や正月二日などに大名らへ下賜する。
他には永年役目を果たした大名や旗本らに、褒賞品として下賜する。
残ったものは後藤家に払い下げられ、大名が再利用したとかしなかったとか……
ただ、少なくとも大名家の家臣、それも女子供が貰えるようなものではない。
幕臣であろうと、永年奉公をした諸太夫役以上が賜る物だ。
御目見え以下の部屋住みが下賜されるような容易い物ではない。
葵の紋が入った時服を下賜されたら、家宝として代々子孫に伝える。
祝い事の度に飾って自慢するほど価値のある物だ。
「余としては勝三郎を小姓に取立てたいのだが、残念な事に幕府の定めで御家人の部屋住みを小姓にする事ができぬ」
「畏れ多い事でございます。
そのような栄誉は、某ごときには身に余ります。
もう二度と御目見えは叶わないと思いますが、御役をいただけた時には、大納言様の為に身命を賭して奉公させていただきます」
西之丸老中の差配で、中奥小姓から感状と目録を下賜された勝三郎と鶴亀姉妹は、もっと話したそうな徳川家基と殺意の籠った視線を送る小姓達の前から辞した。
「はぁあああああ、生きた心地がしませんでした」
徳川家基の前から辞して、誰もいない所にまで行った鶴が言う。
その言葉を聞いた途端、亀が腰を抜かしてその場にへたり込む。
「よく頑張った、もう終わったから大丈夫だ」
勝三郎はそう言うと、亀を御姫様抱っこして西之丸から辞した。
坂下御門から和田倉門に向かい、田沼家の上屋敷に入った。
鶴亀姉妹は仇討ち本懐を遂げ、藩内の不穏分子を全滅させたはずだが、勝三郎はとても慎重だった。
調べ損ねた不穏分子が残っている事を考えて、鶴亀姉妹を田沼家で暮らさせた。
田沼金弥が側近を連れて婿入りする時に、一緒に藩邸に向かわせる予定だった。
その日の夜、田沼家が仇討ち本懐の酒宴を開いてくれた。
「鶴と亀の仇討はまことに見事であった、これで胸を張って帰参できるな」
「ありがとうございます、全て御老中のお陰でございます」
「いや、いや、余はほんの少し口を利いただけだ。
全ては勝三郎が絵図を描いてやった事よ、礼なら勝三郎に申せ」
「はい、勝三郎様には返せないほどの御恩を受けました。
ですが御老中にもお返しできないほどの御恩を賜っております」
「そうか、そうか、そう言ってもらって悪い気はせんよ。
亀にはまだ早いが、鶴はもう良いだろう、一献飲め」
「有難く頂戴したします」
田沼意次は鶴が注いでくれた剣菱が入った酒器ではなく、自分の手元に置いていた酒器から鶴が持つ酒杯に酒を注ぐ。
鶴は覚悟を決めて注いでもらった酒を口にしたが……
「御老中……これは……」
「はっはっはっはっ、鶴を酒に酔わしてどうこうする気はない、安心しろ」
老中田沼意次が人の好さそうな笑顔で言う。
老中が持った酒器には、女子供が飲むための味醂が入っていたのだ。
この時代の味醂は、現代で言う栄養飲料のように飲まれていた。
「鶴は、帰参したら婿を取らなければならないな」
「……はい……」
鶴が一気に哀しそうな表情になった。
田沼意次にはその気持ちが痛いほどわかった。
地獄のような状態にいた年頃の娘が、勝三郎のような頼り甲斐のある剣客に助けられ、仇討ち本懐を遂げたのだ、惚れない方がおかしい。
「出羽守殿も残念だと申しておられた」
「え、御殿様が残念とは?」
「出羽守殿は勝三郎を鶴の婿に迎えたいと思っていたようなのだが、大納言様から時服を賜り忠義を誓ったので、陪臣に迎える事はできぬと残念がっておられた」
「あっ」
思わず声を上げた鶴は一瞬真っ赤になり、次にまた哀しそうな表情になった。
「其方達も勝三郎と同じように、大納言様から感状と時服を賜った。
出羽守殿も其方達を疎かには扱えない。
其方達が大納言様に会っている間に、これからの事を話し合った」
「はい」
「鶴と亀にはそれぞれ三百石の知行を与え、永代家老家とするそうだ」
「え、三百石、それも私と亀の二人ともにですか?」
一万三千石の大名家では、三百石も知行を与えらえる家老はあまりいない。
しかも父の跡を継ぐだけでなく、新たに家を興すなど普通は考えられない。
「大納言様の感状と時服はそれだけの価値があると言う事だ」
「はい」
「だからこそ、鶴と亀の婿は厳選しなければならない」
「……はい……」
「父親の闇討ちに加担したかもしれない、水野藩士から婿は迎えられない。
仇討の助太刀をしてくれた者か、我が家の藩士から選ぶしかない」
「御老中の御家中からですか?」
「そうだ、金弥に付き従う者は多くしたいが、限度がある。
他に二人送り込めるなら助かるのだ。
藩士は無理でも、勝三郎と懇意の者を送り込めれば助かる」
「はい、御老中が婿を選んでくだされば、それに勝る喜びはありません」
「うむ、勝三郎にも聞いて、鶴と亀が幸せになれる相手を選ぶ。
余や勝三郎の目が曇っていて、何か不都合があれば、いつで相談に来ればいい」
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