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第一章

第4話:変貌

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 俺の姿は元の状態とは似ても似つかない変貌を遂げていた。
 一七〇センチだった身長が、なんと二〇〇センチになっている。
 フレディ好みだった波打つ金髪が、漆黒のストレートになっている。
 白磁のようだった肌が、桜の花びらのような色になっている。
 碧かった瞳が、鮮血のような赤に光り輝いている。
 フレディに報復するに相応しい姿、それが今の俺なのだろう。
 このまま王宮に取って帰して二人を引き裂いてやりたかった!

「このまま戻って二人を殺しても、根本は解決しない、それくらいは分かっている」
 
 思わす心に想った事を口にしてしまった。
 まず大前提として、カリフト皇国が女のマリアンを大使に選んだこと、これが全てで、カリフト皇国はアルフレオ王国を属国にする気か、もしくは滅ぼす気なのだ。
 フレディが女に狂った時点で、この国は男同士では子供が授からなくなる。
 それは今後アルフレオ王国人が生まれないという事だから、いずれ畑を耕す者も、道具を作る者も、国を護るために戦う者もいなくなる。

「だとすれば、元凶である皇国を滅ぼすか、方針を変えさせなければいけない」

 また独り言を口にしてしまった。
 フレディに裏切られた事で、独り言を口にするようになってしまったのか?
 だとすればなんと情けない事だろう。
 二〇〇センチの大男が、男に裏切られたショックで変な癖がついてしまう。
 断じてこの癖は解消しなければいけない。
 今も思わず口にしそうになったことを飲み込んで黙る。
 
 まずは今回の事件の黒幕が誰か調べ上げる事だ。
 カリフト皇国の皇帝の方針ならば、万難を排して皇帝を殺さなければいけない。
 皇帝が提案を受けて承認しただけなら、元凶である提案者を殺す。
 まだこちらの方が皇帝を殺すよりは簡単だろう。
 重臣であっても、ずっと皇宮や皇城内にいるわけではない、必ず自分の屋敷の戻る時があるから、そこを狙えばいい。

 問題はどうやってこの国を出てカリフト皇国に入り込むかだが、これだけ姿形が変わっていたら、聖賢者アンドレであったことはバレないだろう。
 問題は入った後で皇国の中枢部に近づく方法だが、下手な方法だと警戒されてしまうから、皇国民や周辺国平民が皇国で立身出世を目指す常套手段をとるしかない。
 そうなると、冒険者として名をあげるか、戦闘士として名をあげるかになるな。

 冒険者で名をあげるとなると、ダンジョンになってしまうから、最初に声をかけてくるのは、皇国中枢部というよりは地方領主になってしまう確率が高い。
 あの国は闘技場での見世物や博打が盛んだから、戦闘士として名をあげた方が、短時間に中枢に近づけるし、皇都内の情報、特に派閥抗争の情報が手に入り易いだろうから、選ぶべき道は決まったな。
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