上 下
7 / 7
第一章

第7話:復讐2

しおりを挟む
 俺が皇国からアルフレオ王国に戻るのは簡単だった。
 皇国は皇帝と最高権力者が同時に死んだので、喪に服して闘技場が休みだ。
 剣闘士の俺が他に稼ぐ場所を求めて移動するのは当然の話だ。
 姿形がアルフレオ王国にいた頃と全く違っているので、お尋ね者にされていても、全く疑われる事はなかった。

「お初にお目にかかります、カリフト皇国闘技場で戦っていた、アレクサンドロスと申します、以後お見知りおき願います」

 王太子のフレディと、王太子妃となったマリアンに会うのは簡単だった。
 聖賢者だったころの俺を殺し損ねた二人は、屈強な護衛を必要としていた。
 カリフト皇国闘技場で無敗を誇った俺は、格好の候補者だったのだ。
 二人は聖賢者である俺の魔術を心底恐れていた。
 だからこそ俺との謁見場には、魔力無効の魔道具が、これでもかというほど設置されているのだ。

「おお、そなたが有名なアレクサンドロスか。
 そなたの無敵ぶりを噂に聞いて、ぜひ一度会いたいと思っていたのだ」

 愚かな奴だ、全く俺の事に気がついていない。

「本当ですわ、私も会いたいと思っていたのです」

 マリアンが醜い顔で笑顔を作ろうとしているが、女の顔はどんな表情をしても美しくなることはないので、無駄な努力だ。
 それに、淫売に褒められても気持ちが悪くなるだけだ。
 俺に背後から責められたシシン侯爵が全てを白状した。
 フレディを籠絡するために、皇都で有名だった売春婦を買い取り、形だけ養女にしてアルフレオ王国に送り込んだとな。

「どうであろう、アレクサンドロス、私の家臣になる気はないか?
 もしその気があるのなら、私専属の近衛騎士隊長にしてやろう」

 売春婦に籠絡されるほど愚かな奴だから、人間の心を地位や金で買えると思っているようだ、こんな男を一時とは言え恋人にしていた自分が恥ずかしい。

「殿下が手ずから剣を下賜してくださるのなら、考えなくもありません」

「おお、そうか、そうか、アレクサンドロスの武勇を考えれば、それくらいの事は当然の事だ。
 今身に帯びている王家の宝剣を下賜しようではないか、どうだ」

「本当に下賜していただけるのなら、終生、忠義を尽くさせていただきましょう」

 愚かなフレディは、俺の側近くまで玉座から降りてきて、剣を与えようとした。
 俺は最初顔を伏せていたが、剣を肩に押し当てられ、御礼を言上する時に上を向き、昔の声で囁いてやった。

「復讐に戻ってきましたよ、フレディ」

 驚愕の表情を浮かべるフレディを、奪った宝剣で頭から尻にかけて真っ二つにしてやって、返す刀を平にしてマリアンの顔を叩き、粉砕されたスイカのようにしてやったが、後は王宮の大掃除だ!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

こんなとこじゃイヤ!

ura
恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:242

BL・スピンオフ(いちゃらぶ④)

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:4

仲間に裏切られた勇者は魔王と一緒に復讐します

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:275

吹くからに秋の草木のしをるれば

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:51

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,750

スパダリヤンデレ?男と俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:262

超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

ホラー / 連載中 24h.ポイント:10,168pt お気に入り:67

二度目の人生ゆったりと⁇

BL / 連載中 24h.ポイント:347pt お気に入り:3,619

隣国王子に快楽堕ちさせれた悪役令息はこの俺です

BL / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:670

処理中です...