奴隷魔法使い

克全

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多摩編

蛇竜

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『多摩奴隷千人砦・個室』

「タケル、今日の雨は結構激しいね」

「そうだね。湿地帯ならこれくらいでも安全に狩れたけど・・・・」

「魔境は大丈夫な?」

「きりと殿に確認したうえで、狩りに行くか休みにするか決めよう」

「うん、それがいいね」

『多摩冒険者組合』

「おはようございます、きりと殿。きりと殿、この雨は狩りに影響ありますか?」

「はい、影響が出ます。これくらい雨が降ると行軍に時間がかかり、ヒル等の被害も出ますし、風邪などの病気になる確率も増えます。ただ良い面もあります。雨の時にしか出ない魔獣が出てきます。特に竜は、大雨で天に登るとさえ噂されています。ですから竜を狩る覚悟が御有りなら、今日はチャンスです」

「分かりました。志願者の中から、この雨でも行軍できる人を選抜してください。受付殿、撒餌代の2000銅貨です」

「タケル殿、四十三名が行軍可能です」

「では出発します」

『魔境と奥山の境界線』

 なんだ?

 でけ~蛇か?!

「タケル殿! 凄いのがいます!」

「ほう、そんなにすごいのですか?」

「いや、私も実物は初めて見ますが、あの鱗は一度だけ貴族出身の冒険者が持っているのを見せてもらいました。あの鱗は蛇竜の鱗です。この国では百年前に狩られたきりで、今は金持ちが外国から輸入しているものだけです。あの鱗を鎧や盾に使えば、達人が鋼剣や日本刀を使って攻撃しても、鎧や盾に傷一つ付けることも出来ません。魔法耐性も強く、中級上の魔力では傷つけられません!」

「では、買取値は魔竜級ですか?」

「それは・・・競売なら純血種竜並みですが・・・・王国奴隷のタケル殿だと、規定値は亜種竜価格が制限値です。いや、そもそも魔法が効きません! ましてここにいる戦士の剣と腕では、傷すらつけられません。無駄骨でしたがこういうことも有ります」

「試してみます。狩れたら平民になるまで魔法袋に保管しておきます。アヤ、蛇のように死んでも暴れるかもしれない。合図したら重力魔法で浮かせてくれ」

「了解、任せて」

 さて、どうする?

 シュミレーションしていたように狩るか?

 圧縮風魔法や火魔法を、鼻や口から体内に入れて爆発させれば・・・・・

 しかし、技を冒険者に見られると真似されるか?

 そうだ、霧を発生させよう!

 冒険者達には目隠しして倒そう。

「タケル殿、霧です」

 「僕が出しました。蛇竜に対する目晦ましです」

 何時もの十倍の魔力を込めて、圧縮強化風魔法弾を作ろう。

 数は一つ!

 口から入れると、脳に届く前に舌に当たって破裂すると不味い。

 鼻から脳を狙おう。

 よし、上手くいった!

 脳髄を破壊できた!

「アヤ、殺った。浮かせてくれ」

「了解。結構重いね。四トンくらいあるかも」

『きりと視点』

 おいおいおいおい、此奴は化物か?

 いや、上級魔術師とは凄いんだ!

 そうだな。

 大陸からは蛇竜の鱗は輸入できているんだ。

 決して誰にも狩れないわけじゃない。

 今まで王国に上級魔術師がいなかったから狩れなかっただけだ。

 これからは自国で蛇竜鱗が手に入るようになるんだ!

「きりと殿。蛇竜が動かなくなったら、魔法袋に入れます。魔力が余っているので、しばらく待ち伏せしてみますから、雨避けのテントを張って食事してください」

「了解しました。野郎ども、テント張って飯だ。周囲の警戒は忘れるな!」

「「「「「うわ~」」」」」

「「「「「凄げ~」」」」」

「「「「「本物の竜だよ」」」」」

「「「「「蛇竜なんで初めて見たよ」」」」」

「てめ~ら、餓鬼みたいに騒ぐんじゃね~。蛇竜のことは秘密だ! タケル殿の不利になるようなことは一切喋るな!!

「「「「「分かりました、きりと殿」」」」」

「アヤ、気配は分かるかい?」

「うん、昨日の魔猿かな?」

「正解だ。アヤ、魔力半分で四十五頭倒せる?」

「大丈夫。倒せるけど、四十五頭が目標?」

「そうだよ。俺は八十五頭を目標にする! よし、最大射程から順次狩る!」

『奴隷冒険者砦』

「小人目付殿、買取お願いします」

「よし出せ」

「魔猿百三十頭です、魔晶石はこちらで使いまます」

「よし、魔猿百三十頭、十万三千二百九キログラムで百三十二万九百銅貨だ」

「はい、ありがとうございます」

「皆、組合で給与支払います。明日は魔具の研究でお休みにします」





「アヤ、疲れてるだろうけど、今から魔道具を作るよ」

「うん、少し疲れちゃった。でも大丈夫、まだ頑張れる」

「魔法カギは厳重にかけておこう。汎用魔法袋を作るけど、作ったことある?」

「ないよ。魔術師専用個人魔法袋は作ったこと有るけど。どこが違うの?」

「そうだね、まず専用品は、魔獣か魔竜の革に魔法陣を書く。次に自分の血を魔法陣に注いで、袋と繋がりを作るだろ?」

「うん、それは知ってる。だから成長とともに収納量も増えるんだよね?」

「そうだよ。だから魔術師が死んだら、魔力の供給が絶たれて中身が飛び出してしまう」

「うん、それも知ってる」

「汎用品に書き込む魔法陣は、図柄も呪文も違うんだ。それに魔力のない人でも使えるように、魔晶石を埋め込み配置している、だから魔晶石が供給する魔力が切れたら、中身が飛び出す」

「あ~! それで王都にも冒険者村にも、充魔力屋があるのか!」

「そう、魔術が発動できないような微量な魔力でも、有れば仕事には困らない。それでね、汎用魔法袋は描かれた魔術図と呪文で袋の容量が決まるし、更に魔晶石の質と大きさで使用時間も決まる。でも俺達なら、常に魔力を供給出来るだろ!」

「そっか、じゃ専用魔法袋の容量に縛られないのか!」

「ただね、それは俺たちくらい魔力が有るからだよ。更に言えば、俺が考えた魔力回復術が有るからだね。普通は袋に魔力を使い過ぎたら、大切な狩りが出来ない」

「そうなんだね」

「魔獣の革はここに買ってある。魔晶石は魔猿の物が大量にある。今日残ってる魔力の7割で俺が500五千キログラム級。アヤが二千キログラム級を作る」

「うん分かった。作り方を教えて」

「よく見て真似してくれよ」




「アヤ、おはよう」

「おはよう、タケル。」

「アヤ、魔境まで二人で撒餌をしにいこう」

「うん。でも2人で大丈夫?」

「先の襲撃から尾行もなくなったし、慎重に探査魔法使えば大丈夫さ」

「うん、そうだね」

『昨日行った狩場』

 うわ~、結構魔獣がいるじゃん。

 狩らないともったいないかな?

「アヤ分かる?」

「うん、結構いるね、狩る?」

「そうだね。これから沢山魔法具作っていきたいし、狩ろう!」

「タケル、あれ地竜かな?」

「恐らく亜種竜だね。三千キログラム前後有るね」

「八頭いるのかな? あと小さいのが沢山遠巻きにしてるね」

「ああ、先ずは三千キログラム級八頭と五百キログラム級六頭を狩る! 最初は何時もの圧縮風魔法で喉を掻き切る方法を試す。それが効果なければ、昨日遣って見せたように、鼻か耳から入れて脳を潰してくれ」

 俺とアヤは、圧縮風魔法を亜種竜の喉に叩き付けた。

 危惧したような事もなく、易々と竜の喉を掻き切る事が出来た。

「タケル、いつも通りの圧縮風魔法で大丈夫だね」

「アヤ、小物だけど飛行魔獣と飛行魔竜を狩ろう」

「どうして?」

「自前の魔法飛行船を作りたい」

「あ、それいい、乗りたい!」

「一キログラムから百来キログラム位の小物翼竜しかいないけど、出来るだけ大きい奴狩ろう」

「どれくらい狩るの?」

「後百キログラム三十頭が魔法袋の限界だと思う。狩り終わったら速攻帰るよ」

「は~い」

『奴隷冒険者買取所』

「小人目付殿、買取お願いいたします」

「タケルか、どうした? 今日は撒餌だけだろ?」

「はい、その心算だったのですが、あまりに美味しそうな獲物だったので、つい狩っちゃいました」

「そうか、出せ」

「地竜、三千キログラム級八頭、五百キログラム級八頭、翼竜百キログラム級三十頭です。魔晶石は全部除外です。翼竜の革を鞣して飛行船を自作したいんですが?」

「あ~! また面倒なことを!」

「買取長、どうかな? 組合長に相談するか?」

「地竜の肉、皮、骨、血は売ってもらえるんでしょ? 革の鞣しも組合経由で契約してもらえるんでしょ? じゃ大丈夫です。タケル殿とアヤ殿には出来るだけ便宜計らうように、組合長から言われています。平民に成ってからも、ここで働いてもらいたいのが組合の総意ですから!」

「だとよ! 感謝しろよタケル」

「ありがとうございます」

「しかし、地竜が十四頭かよ! それに長年ここで受付しているが、三千キログラム級なんて初めて見るぞ! を、それと飛行船を自作するって? 魔道具組合で長年研究してても出来ないんだぞ! お前本当に造れるのかよ?」

「試作してみないと確約できませんが、頭の中では実現可能です」

「ほんと、お前は規格外だよ!」

「小人目付様、計算できました」

「お、いくらだ」

「亜種竜買取価格になります、全部で四十四頭二千八百五十万銅貨です」

「おいおいおい! お前らいい加減平民に成れよ! こっちが対応しにくいよ! どうせ、将来は士族や貴族になるんだろうが! 後々のこと考えたら、言葉遣いが面倒なんだよ」

「すみません、頃合いを見て申請しま。」

「早く頼むぞ! 俺達奴隷上がりの卒族事務方は、立場が面倒なんだよ。支払いは金貨と銀貨でいいか?」

 そうだった、朝野小人目付様は長年奴隷を務めて卒族になられたんだよな。

「はい、お願いします」

「大金貨二枚、小金貨八枚、大銀貨四枚、小銀貨十枚でいいか? 確かめたら捺印しろ」

「ありがとうございます」
「ありがとうございました」

「アヤ、魔法袋を創るよ。」

「はい! 大きさはどうするの?」

「今日は魔力余裕が有るね?」

「うん、大丈夫、余裕あるよ」

「じゃ、おれは八千キログラム、アヤは三千五百キログラム」

「今日は昨日より綺麗に創りたいな」

「そうだね、僕もそうするよ」
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