聖女は不幸な幼女を保護しましたが、酷薄な王太子に反対されたので、激怒して婚約を解消しました。

克全

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7話

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「申し訳ありません、父上。
 王太子を叩きのめしてしまいました」

「しかたあるまい。
 直ぐに国を出る支度をする。
 エベレットには私から事情を伝えておく。
 エリアナは時間稼ぎをしてくれ。
 できれば三日、短くても丸一日は必要だ」

「分かりました。
 責任をもって三日は時間稼ぎさせていただきます。
 本当に申し訳ありませんでした、父上」

 私は王太子を一撃で気絶させました。
 王太子の警護に当たっていた近衛騎士は、全員叩きのめしました。
 四肢すべての骨を叩き折り、身動きできない状態にして、借家に寝かしています。
 もちろん縄で厳重に拘束しています。
 父上直伝の縛り方ですから、魔獣でも解くことができない縛り方です。

 そうしておいて、詳しい事情を父上に報告しました。
 気絶させた王太子は馬に乗せて運んできました。
 王太子と近衛騎士が乗ってきた軍馬が沢山いますから、馬に不自由はしません。
 王太子の顔など知らない父上ですが、身なりで事情を察せられたのでしょう。
 直ぐに話を聞いてくださいました。

 父上と兄上には本当に申し訳ないことですが、私にも譲れないものがあります。
 家族に甘え迷惑をかけてでも、譲れないものがあるのです。
 事情を聞いてくださった父上は、この王太子相手では仕方がないと言ってくださいました。

 自分が振られたくらいで、家族にまで罰を与えようとする王太子。
 そんな人間に仕え忠誠を尽くすのは、武人の恥だとまで言ってくださいました。
 うれしい気持ちと申し訳ない身持ちで一杯になりました。
 特に兄上には申し訳ない事をしてしまいました。

 父上に騎士家当主の座を譲られ、もうすぐ決婚を控えておられたのです。
 それが全て無に帰すのです。
 騎士の地位を捨てて他国に逃げるのです。
 この王太子を殺しても開放しても、国に残っていれば、兄上は厳罰に処せられてしまいます。

 母上は家の荷物整理を始められました。
 逃亡の旅になりますから、家財道具を運ぶ事はできません。
 少なくとも馬に乗せて運べるものしか持っていけません。
 現金と宝石、先祖代々の武具刀剣に家宝くらいです。
 家屋敷と家財道具は残していくことになります。

 父上は師範代と高弟を急ぎ呼び集められ、次期道場主を指名され、家屋敷と家財道具を譲ると言われました。
 ですが全員が拒否したのです。
 全員父上について国を捨てると言ってくれたのです。
 私は涙が出るくらいうれしくなりました。
 父と弟子たちの絆が羨ましくもありました。
 そんな弟子たちに、父上はある指示を出されたのです。
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