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第一章

第63話:忠臣コーム

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「国王陛下、各地の備蓄食糧の在庫量でございます」

 学生達を指導した後、休息がてら大臣達と政務をしていたら、各地の視察に行っていたコームが報告にやって来た。
 身長一八〇センチの筋肉質の身体を自然体にしている。
 最近は俺に怯える家臣が増えたので、このような態度で接してくれると嬉しい。
 譜代の家臣でも心にやましい所のある者は、どうしても俺の前にでると怯えた態度になるからな。

「うむ、コームが直接見て回ったのか」

「はい、配下の者や現地の者を疑っているわけではありませんが、人間の心はとても弱いモノだと国王陛下からお聞きしております。
 巡検する者が手を抜いて楽をするようになると、普通なら不正をしない者に悪心を生んでしまうから、上に立つ者こそ自分を律して手を抜くなと、国王陛下から教えていただいております」

 コームが百点満点の返事をしてくれた。
 この噂が国内に流れたら、同じように自分を律する家臣が増えるだろう。
 今大臣として働いている者達も再び心を引き締めるだろう。
 ここは心から称賛しておくべきだな。
 それにしても、俺は何を見ていたのだろう、こんな直ぐ側に漢がいたじゃないか。
 リアナ女王の王配にするのに問題があるとしたら、コームには既に婚約者がいるという事だな。

「うむ、よくやってくれた、そしてよくぞ言ってくれた。
 余の言葉をそこまで大切にして守ってくれている事、とてもうれしく思うぞ。
 これからも皆の手本になるように働いてくれ」

「は、有り難きお言葉をいただき、恐悦至極でございます」

「それでコーム、確か婚約していたと思ったが、結婚の日取りは決まったのか」

「私的な事を御心配していただき、まことに恐れ入ります。
 まだ正式な日取りは決まっておりませんが、早ければ年内に、遅くても来年には式を挙げたいと思っております」

「そうか、そうか、それは目出度い事だな。
 正式な日取りが決まった教えてくれ。
 コームも大切な家臣だが、父親のブノワには私の大臣を、祖父のクレマンにはリアナ女王の筆頭大臣を務めてもらっている。
 よほどのことがない限り、余もリアナ女王も結婚式には出席させてもらう心算だ。
 なあ、リアナ女王」

「はい、その通りですわ、兄上様。
 よほどの行事がない限り、参加させてもらいたいと思っているわ、コーム」

「両陛下にそのように言った頂けるとは、私もコリンヌも果報者でございます。
 祖父と父、コリンヌと義父となるタイラー殿と相談の上、早急に日時を決めさせていただき、ご報告させていただきます」

 そうだった、コームの婚約者はタイラーの娘コリンヌだったな。
 タイラーも長年ラゼル公爵家に仕えてくれている家老格だった。
 陪臣の重臣同士の家で政略結婚だから、家格に応じた良縁だ。
 無理矢理引き裂くわけにはいかないし、リアナ女王が好きになるかもわからない。
 さて、どうしたものだろうか。
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