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第1話追放初日

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「マクリン公爵家令嬢オリビア。
 この国を護るかけがえのない魔封の聖女への暴行は、これまでの証言で明らかだ。
 もはや言い逃れはできない。
 本来なら処刑にしても飽き足らない大悪人だが、国王陛下の温情と、マクリン公爵家の長年の忠勤に免じ、公爵家から席を抜き、私との婚約を破棄し、追放刑とする。
 ありがたく思え!」

 オリビアは悔しかった。
 明らかに偏向した裁判だった。
 父であるマクリン公爵家や重臣の方々、国王陛下は庇ってくれたが、学園の統治権を任された王太子ジョージは、いや、王太子ジョージに配された次世代を担う重臣の子供達全員が、偏った証拠だけを採用しオリビアを擁護する証拠証人を握り潰した。
 それに実の兄のノアまで加わっていた。

 本来なら王国の全権は国王にある。
 だがこの国は、幾度か愚王や佞臣奸臣による悪しき時代を経験していた。
 その愚を繰り返さないように、王侯貴族子弟の才能と性格を知るために、同時に統治経験を積ませるために、国立魔法学園の全権を王侯貴族子弟に任せていた。
 今回はこの制度が最悪の状況を生んでしまった。

 王太子一人、有力貴族子弟の一人だけが愚かな行動をしても、他の者達が止めると考えられていたし、覇王のような者が現れても王国が鎮圧できると考えられていた。
 ところが今回は、学園生徒会が一致団結してオリビアを殺そうとした。
 それを国王や重臣達が知ったのは、処刑の許可が提出されてからだった。
 その時から調べても、オリビアを擁護する証拠は消され、証人は脅迫されて口をつぐんでいた。

 だが処刑は明らかにやり過ぎだった。
 これまでの判例慣例と比べて厳し過ぎる処分だった。
 王太子を含めた若者達の態度が異常過ぎた。
 そこで国王と重臣達は再調査までの時間を稼ごうとした。
 これまでの判例慣例と比較して、あまりも異常な刑罰だと言って聞かせた。
 それでも王太子達は引かなかった。
 強硬にオリビアの処刑を言い立てた。

 しかもそれに太陽神殿までもが介入してきた。
 大神官のルーカスが、神殿の威光を使ってオリビアの処刑を要求してきた。
 定期的に魔が暴れまわるこの国では、魔封の聖女を聖別する神殿の力が強い。
 普通の事なら介入を許さないが、事が魔封の聖女への暴行では、完全に排斥することができなかった。

 オリビアの刑を領地での謹慎に止めようとしていた国王達と、処刑しようとする王太子達の間で、幾日も言い争いが繰り返された。
 国王達は、王太子達が異常であることに気がついていた。
 王太子達は、国王達が聖女を蔑ろにして国を滅ぼす奸物だと思った。
 言い争いの結果、オリビアの刑が確定した。

 王都から百キロ四方の追放刑となり、近衛騎士団が馬車に乗せて、強行軍で王都から追放した。
 街ごとに馬を変え、犯罪者の乗り心地など無視して、馬車の中で激しい揺れに跳ね飛ばされ、不眠不休で百キロの道を一日で走破することになった。
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