42 / 78
第一章
第42話:フランク王国派兵計画
しおりを挟む
「エドアルド公子殿下、何事かございましたか」
俺の表情を読んで、公子侍従長のマッティーアが声をかけてきた。
相談して欲しいと言う事だろうが、特に相談すべき事ではない。
だが、それほど重大な秘密というわけでもない。
俺の留守の間は公王家を護る役目のあるマッティーアには、できるだけ多くの情報と指示を与えておかなければいけないので、手紙の内容を伝えておこう。
「フランク王国からマリアお嬢様を襲った件の賠償をすると言ってきた」
「エドアルド公子殿下が王国を統一された事で、全戦力を向けられる事を恐れたのでしょうか」
「そうだ、ネウストリア分王国のキルペリク一世とフレデグンドが、報復を恐れて夜も眠れない状態だそうだ」
「以前提案してきたとおり、割譲するのはブルターニュ地方なのでしょうか。
エドアルド公子殿下は、公国と地続きのプロヴァンス、アルプ、コート・ダジュールを要求なされたのですよね」
「ああ、かなり強く要求したのだが、プロヴァンス一帯はキルペリク一世と激しく対立している、アウストラシア分王国のキルデベルト二世が継ぐことになっている、ブルグント分王国の領地なのだ。
姉を殺されたアウストラシア分王国のブルンヒルド分王母が、断固として認めなかったようだ」
「それを口実にフランク王国に侵攻されるのですか」
「いや、それではキルペリク一世やフレデグンドの思う壺だ。
フランク王国を占領するのに、ブルグント分王国、アウストラシア分王国、ネウストリア分王国の全てを滅ぼし占領しなければならなくなる。
マリアお嬢様に許し難い無礼を働いたネウストリア分王国の敵を、我らが潰してやる必要など全くない。
それよりは、ブルターニュ地方に加えてネウストリア分王国のペイ・ド・ラ・ロワール地方を要求する。
キルペリク一世がそれを拒むようなら、キルデベルト二世とブルンヒルド分王母に領内を軍が通過する許可を要求する」
「軍の通過許可を認めるでしょうか」
「アウストラシア分王国とブルグント分王国の有力貴族令嬢と婚約している。
実家が説得してくれるだろう。
そのためにネウストリア分王国の貴族とは政略婚約をしていないのだ」
「余計な事を申しました」
「いや、どうせマッティーアには色々と説明して指示を出さなければいけなかったから、質問してくれてよかったよ」
「それで、わたくしは何をすればよろしいでしょうか」
「今回のフランク王国遠征に俺は同行しない。
マルコ伯爵を総指揮官に任命して、ソニア夫人を正式な軍師に任命する。
公国内の領地を召し上げて遠ざけたい貴族や騎士をフランク王国遠征軍に加える。
俺が公都に残っている間は、誰も反抗しないだろう。
だが、キルペリク一世とフレデグンドがローマ帝国やアヴァール可汗国と密約をしている場合、遠征軍がブルターニュ地方に到着したのを見計らって攻め込んで来る。
そして俺が迎撃に向かったら、公都に潜む連中が叛旗を翻すだろう。
その時の対応を任せたい」
「承りました」
俺の表情を読んで、公子侍従長のマッティーアが声をかけてきた。
相談して欲しいと言う事だろうが、特に相談すべき事ではない。
だが、それほど重大な秘密というわけでもない。
俺の留守の間は公王家を護る役目のあるマッティーアには、できるだけ多くの情報と指示を与えておかなければいけないので、手紙の内容を伝えておこう。
「フランク王国からマリアお嬢様を襲った件の賠償をすると言ってきた」
「エドアルド公子殿下が王国を統一された事で、全戦力を向けられる事を恐れたのでしょうか」
「そうだ、ネウストリア分王国のキルペリク一世とフレデグンドが、報復を恐れて夜も眠れない状態だそうだ」
「以前提案してきたとおり、割譲するのはブルターニュ地方なのでしょうか。
エドアルド公子殿下は、公国と地続きのプロヴァンス、アルプ、コート・ダジュールを要求なされたのですよね」
「ああ、かなり強く要求したのだが、プロヴァンス一帯はキルペリク一世と激しく対立している、アウストラシア分王国のキルデベルト二世が継ぐことになっている、ブルグント分王国の領地なのだ。
姉を殺されたアウストラシア分王国のブルンヒルド分王母が、断固として認めなかったようだ」
「それを口実にフランク王国に侵攻されるのですか」
「いや、それではキルペリク一世やフレデグンドの思う壺だ。
フランク王国を占領するのに、ブルグント分王国、アウストラシア分王国、ネウストリア分王国の全てを滅ぼし占領しなければならなくなる。
マリアお嬢様に許し難い無礼を働いたネウストリア分王国の敵を、我らが潰してやる必要など全くない。
それよりは、ブルターニュ地方に加えてネウストリア分王国のペイ・ド・ラ・ロワール地方を要求する。
キルペリク一世がそれを拒むようなら、キルデベルト二世とブルンヒルド分王母に領内を軍が通過する許可を要求する」
「軍の通過許可を認めるでしょうか」
「アウストラシア分王国とブルグント分王国の有力貴族令嬢と婚約している。
実家が説得してくれるだろう。
そのためにネウストリア分王国の貴族とは政略婚約をしていないのだ」
「余計な事を申しました」
「いや、どうせマッティーアには色々と説明して指示を出さなければいけなかったから、質問してくれてよかったよ」
「それで、わたくしは何をすればよろしいでしょうか」
「今回のフランク王国遠征に俺は同行しない。
マルコ伯爵を総指揮官に任命して、ソニア夫人を正式な軍師に任命する。
公国内の領地を召し上げて遠ざけたい貴族や騎士をフランク王国遠征軍に加える。
俺が公都に残っている間は、誰も反抗しないだろう。
だが、キルペリク一世とフレデグンドがローマ帝国やアヴァール可汗国と密約をしている場合、遠征軍がブルターニュ地方に到着したのを見計らって攻め込んで来る。
そして俺が迎撃に向かったら、公都に潜む連中が叛旗を翻すだろう。
その時の対応を任せたい」
「承りました」
0
あなたにおすすめの小説
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜
華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。
日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。
しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。
続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574
完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。
おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。
合わせてお楽しみいただければと思います。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる