妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全

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7話

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「ありがとうございます。
 カチュア様が助けてくださらなかったら、私達は飢え死にしていました。
 本当にありがとうございます」

 祖母にも果汁を飲ませて助け、家族にも内臓に負担がかからない食事を与え、ようやく話が出来る状態になりました。
 ですがその前に、リリーの祖父ジョージが深々と頭をさげてくれます。
 家族揃って頭をさげてくれます。
 いつまで待っても頭をあげてくれません。
 流石に居心地が悪いです。

「いえ、気にしないでください。
 昔、魔族の方に救われて、養ってもらったことがあるんです。
 それに、私は人間が嫌いです。
 恨んでいると言っていいくらいです。
 それはそうと、どうか頭をあげてください。
 ちゃんと目を見て話がしたいのです。
 そうしなければ心は伝わりません。
 これも魔族の養い親に教えてもらった事です」

 ここまで言って、ようやくアスキス家の方々が頭をあげてくださいました。
 ですがとても驚いています。
 それも当然でしょう。
 私の顔には大きな傷があるのです。
 しばらく逡巡していましたが、意を決して質問してきました。

「失礼を承知で聞かせてもらいます。
 人間への恨みというのは、その顔の傷が関係しているのですか?」

「はい、この傷は人間に斬られたモノです。
 だから信じて欲しいのです。
 私は人間が大嫌いなのです。
 人間を皆殺しにしたいという想いがあります。
 ですがそう簡単に人間を殺す訳にはいきません。
 助けてくださった上に、養い子にしてくださった魔族ペンブルック家の教え、ヒューマンを殺すなという教えを、踏み躙る訳にはいかないからです。
 だからこの森で人間に会わないようにして暮らしているのです」

 嘘です。
 嘘を沢山ついています。
 助けて下さった魔族がペンブルック家なのは本当ですが、それは前世の記憶です。
 現世の私とは全く違います。
 ですがアスキス家の人達に信用してもらうためには、嘘も必要なのです。

「そうですか。
 分かりました。
 その話、信じさせて頂きます。
 そして命の恩を返させていただきます。
 どんな些細な事でもお手伝いできる事は全てお命じください」

「分かりました。
 遠慮せずに命じさせて頂きましょう。
 ひとつ実験がしたいのです。
 安全には出来る限る配慮する心算ではありますが、何事にも絶対という事はありません。
 それでも手伝ってくれますか?」

「なんなりと命じてください。
 魔力も魔術も失ったとはいえ、誇りまで失った訳ではありません。
 たとえ死ぬ事になろうとも、手伝わせていただきます」

 アスキス家の人達全員が、リリーも含めた全員が、深々と頭をさせてくれます。
 では、遠慮なく実験をさせて頂きましょう。
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