73 / 127
第二章
第73話:悪戦苦闘
しおりを挟む
リカルド王太子の進軍は当初順調だった。
進軍速度こそ補給部隊を先頭にした事で遅かったが、その分食糧不足に陥る危険がなく、侵攻先で民が飢える事もなかった。
リカルド王太子の軍が駐屯する地域では誰も飢える事はない、そういう評判が大陸中に広まった。
とても順調に見えたリカルド王太子の進軍だったが、魔王軍が開けた穴への道半ばという場所で、フィフス王国領に魔王軍が現れたという報告が入った。
リカルド王太子は煩悶したが逡巡はしなかった。
一瞬で判断したかのように他人には見えたかもしれないが、その短い時間の間に心臓が破裂したかと思うほどの痛みを感じ、悩み苦しんで決断したのだ。
「本国の事は守備隊を信じて任せる。
お前達も戦友を信じて後ろを気にせず前を見て戦うのだ。
もし危険な状況に陥ったら、お前達を信じて俺が本国に帰る」
リカルド王太子の言葉を聞いた古くからの側近達は、リカルド王太子の心中を察して心の中で涙を流していた。
表向きの理想の姿しか知らない最近仕えはじめた家臣は、リカルド王太子の内心の悩みや苦しみなど理解できなかった。
リカルド王太子の幼く弱い頃の姿、幼い頃から努力し続けている姿など、古くからの側近しか知らない。
まあ、リカルド王太子が婚約者と親友に裏切られた姿を見ている者は、ある程度は妻子の大切さを察しているが、悪夢にうなされる姿は古参側近しか知らないのだ。
ただリカルド王太子が侵攻軍に残る決断ができのは、ライラとローザが逃げ時は心ていると言い切った事が大きかった。
もしその言葉がなかったら、もっと悩み苦しんでいただろう。
それと、今回本国に侵攻してきたのは、北の魔境からだけだった。
西の魔境からは魔王軍が侵攻していなかったのだ。
リカルド王太子の予測では、北魔境につながっている魔族の国と西魔境につながっている魔族の国は別の国だった。
今回大山脈に穴を開けたのは北魔境につながっている魔族の国だ。
西魔境につながっている魔族の国は、今回の魔王軍侵攻とは同調していない。
その予測ができていたからこそ、少しは安心できたのだ。
「殿下、今はまだ何の心配もいらないわ。
確かに魔王軍はこの城にまで攻め込んできたけど、アクス城とアイル城を無視することができずに、相当数が包囲のために残っている。
王国第二騎士団が領都の城壁をガッチリ守っているから、全く心配ないよ」
ダドリー城にいるローザからリカルド王太子に堂々とした連絡が入る。
リカルド王太子が思い悩まないように、無骨なローザなりの思いやりだった。
それがあったからこそ、リカルド王太子も眠ることができた。
戦場でちゃんと眠れることはとても大切だった。
例え悪夢を見ることになっていたとしてもだ。
進軍速度こそ補給部隊を先頭にした事で遅かったが、その分食糧不足に陥る危険がなく、侵攻先で民が飢える事もなかった。
リカルド王太子の軍が駐屯する地域では誰も飢える事はない、そういう評判が大陸中に広まった。
とても順調に見えたリカルド王太子の進軍だったが、魔王軍が開けた穴への道半ばという場所で、フィフス王国領に魔王軍が現れたという報告が入った。
リカルド王太子は煩悶したが逡巡はしなかった。
一瞬で判断したかのように他人には見えたかもしれないが、その短い時間の間に心臓が破裂したかと思うほどの痛みを感じ、悩み苦しんで決断したのだ。
「本国の事は守備隊を信じて任せる。
お前達も戦友を信じて後ろを気にせず前を見て戦うのだ。
もし危険な状況に陥ったら、お前達を信じて俺が本国に帰る」
リカルド王太子の言葉を聞いた古くからの側近達は、リカルド王太子の心中を察して心の中で涙を流していた。
表向きの理想の姿しか知らない最近仕えはじめた家臣は、リカルド王太子の内心の悩みや苦しみなど理解できなかった。
リカルド王太子の幼く弱い頃の姿、幼い頃から努力し続けている姿など、古くからの側近しか知らない。
まあ、リカルド王太子が婚約者と親友に裏切られた姿を見ている者は、ある程度は妻子の大切さを察しているが、悪夢にうなされる姿は古参側近しか知らないのだ。
ただリカルド王太子が侵攻軍に残る決断ができのは、ライラとローザが逃げ時は心ていると言い切った事が大きかった。
もしその言葉がなかったら、もっと悩み苦しんでいただろう。
それと、今回本国に侵攻してきたのは、北の魔境からだけだった。
西の魔境からは魔王軍が侵攻していなかったのだ。
リカルド王太子の予測では、北魔境につながっている魔族の国と西魔境につながっている魔族の国は別の国だった。
今回大山脈に穴を開けたのは北魔境につながっている魔族の国だ。
西魔境につながっている魔族の国は、今回の魔王軍侵攻とは同調していない。
その予測ができていたからこそ、少しは安心できたのだ。
「殿下、今はまだ何の心配もいらないわ。
確かに魔王軍はこの城にまで攻め込んできたけど、アクス城とアイル城を無視することができずに、相当数が包囲のために残っている。
王国第二騎士団が領都の城壁をガッチリ守っているから、全く心配ないよ」
ダドリー城にいるローザからリカルド王太子に堂々とした連絡が入る。
リカルド王太子が思い悩まないように、無骨なローザなりの思いやりだった。
それがあったからこそ、リカルド王太子も眠ることができた。
戦場でちゃんと眠れることはとても大切だった。
例え悪夢を見ることになっていたとしてもだ。
1
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる