26 / 57
第二章:出世
第26話:脅迫
しおりを挟む
1626年4月6日:江戸城下:柳生左門友矩13歳
拙者は父上が護衛につけてくれた門弟達に護られて敵を追った。
逃げている敵は黒幕のいる所まで逃げるのか?
それとも拠点となっている隠れ家まで逃げるのか?
先を行く裏柳生が跡をつけやすいようにしてくれている。
それは拙者達の事を考えての事ではない。
拙者が追討ちに加わったのは自分が一皮剥ける為で、事前の策ではない。
「左門も来たのか。
左門は自分の屋敷で敵を待ち受ける役目だったのではないのか?」
今回は逃げる敵を尾行して拠点を襲撃する役目を与えられた者達がいた。
兄上を始めとした元小姓の番頭達だ。
「今日の当番は三枝殿だったのですね」
「運が良いのか悪いのか、相手次第だが……」
三枝殿の申される通りだ。
相手が万石以下の旗本程度なら何の問題もない。
組下の番士の一部が敵に味方したとしても、簡単に潰せる。
問題は敵が万石以上、それも五万石以上の大名だった場合だ。
敵が大大名だった場合、書院番や小姓組の兵力では勝ち目がない。
番士の中に裏切る者や日和見する奴がいるから勝てないのだ。
幕府が一致して叩くのなら簡単に勝てる。
どう考えても大御所様や大御台所様が邪魔だ。
背後から支えるどころか足元をすくおうとするなど、それでも親か!
「今頃は全ての番方が動員されているだろう。
だが、全員が上様の指示に従うかどうか……」
三枝殿の申される通りだ。
大御所様が今回の件の黒幕だったら、この機会に上様を殺すかもしれない。
大御台所様や駿河大納言様が黒幕だったら、隠蔽しようとするだろう。
「三枝殿、拙者達は己のできる事をするしかありません。
例え小姓上がりの番頭以外が敵に回ったとしても、上様のために命を賭けて戦う気持ちに変わりはありません。
番士の中に従わない者がいたら、斬って捨てればいいのです。
幾らでもお手伝いさせていただきます」
「左門殿にそう言っていただけたら、百万の味方を得た気持ちになります」
「大げさな事を言われても困ります。
拙者ができる事など、武者を鎧ごと叩き斬るくらいの事です。
ただ、父上の門弟達もいてくれます。
上様の命に従わない番士の成敗はお任せください」
拙者がそう言うと、三枝殿配下の番士達が緊張したようだ。
鎧を装備し騎乗している番士達。
口取り中間に馬を引かせているが、少々頼りない。
父祖から武士の心得は叩き込まれているはずなのだが、殺気が感じられない。
これから敵の隠れ家を襲って皆殺しにすると言う気概が感じられない。
まるで女子供を連れて花見にでも行くような軽さだ。
「左門様、敵はこの屋敷に逃げ込みました」
わざと逃がした、敵の跡をつけていた裏柳生が報告してくれた。
他にも裏柳生が跡をつけている敵はいる。
そんな連中が逃げ込んだ屋敷には、父上や兄上達が向かっている。
「ここは誰の屋敷か知っている者はいますか?」
誰一人答えようとしない。
三枝殿配下の与頭はもちろん、番士達の誰も答えない。
雰囲気から知っていると伝わって来る者もいるのに答えない。
俺が脅すべきではないのだが、三枝殿が言わないとなると……
「今答えないで、後で交流があると分かれば、一味同心とみなされるぞ。
上様が寵愛する小姓の屋敷を二度も襲ったのだ。
一味同心と分かれば、親兄弟はもちろん一族全てが連座される。
大御所様や大御台所様に泣きつけば助かると思っているのか?
稲葉様を始めとした御年寄衆も、この件は許し難いと言われている。
かねてから上様を立ててくださっていた、酒井様もこの度の件は激怒されている。
大御所様や大御台所様が何と言おうと、上様の小姓を務めた事のある我らは、絶対に許さぬぞ!」
「拙者も上様の剣術指南役を務める柳生家の次男だ。
家の面目にかけて襲撃してきた者共は許さない。
上様からは、御城下で鉄砲を使う許可も頂いている。
敵だと分かった家には、容赦なく鉄砲を撃ちこみ焼き討ちをかける。
立花家や鍋島家、細川家などと言った大名門弟衆も助太刀してくれる。
上様に逆らう謀叛人は誰であろうと捻り潰してくれる!」
「丹後守様でございます!
出羽上山藩四万石、松平丹後守様の屋敷でございます!」
「そのほうだけは一味同心でないと証言してやる。
他の者は襲撃犯の一味同心だから隠そうとしたと証言する。
首を洗って待っていろ!」
拙者は父上が護衛につけてくれた門弟達に護られて敵を追った。
逃げている敵は黒幕のいる所まで逃げるのか?
それとも拠点となっている隠れ家まで逃げるのか?
先を行く裏柳生が跡をつけやすいようにしてくれている。
それは拙者達の事を考えての事ではない。
拙者が追討ちに加わったのは自分が一皮剥ける為で、事前の策ではない。
「左門も来たのか。
左門は自分の屋敷で敵を待ち受ける役目だったのではないのか?」
今回は逃げる敵を尾行して拠点を襲撃する役目を与えられた者達がいた。
兄上を始めとした元小姓の番頭達だ。
「今日の当番は三枝殿だったのですね」
「運が良いのか悪いのか、相手次第だが……」
三枝殿の申される通りだ。
相手が万石以下の旗本程度なら何の問題もない。
組下の番士の一部が敵に味方したとしても、簡単に潰せる。
問題は敵が万石以上、それも五万石以上の大名だった場合だ。
敵が大大名だった場合、書院番や小姓組の兵力では勝ち目がない。
番士の中に裏切る者や日和見する奴がいるから勝てないのだ。
幕府が一致して叩くのなら簡単に勝てる。
どう考えても大御所様や大御台所様が邪魔だ。
背後から支えるどころか足元をすくおうとするなど、それでも親か!
「今頃は全ての番方が動員されているだろう。
だが、全員が上様の指示に従うかどうか……」
三枝殿の申される通りだ。
大御所様が今回の件の黒幕だったら、この機会に上様を殺すかもしれない。
大御台所様や駿河大納言様が黒幕だったら、隠蔽しようとするだろう。
「三枝殿、拙者達は己のできる事をするしかありません。
例え小姓上がりの番頭以外が敵に回ったとしても、上様のために命を賭けて戦う気持ちに変わりはありません。
番士の中に従わない者がいたら、斬って捨てればいいのです。
幾らでもお手伝いさせていただきます」
「左門殿にそう言っていただけたら、百万の味方を得た気持ちになります」
「大げさな事を言われても困ります。
拙者ができる事など、武者を鎧ごと叩き斬るくらいの事です。
ただ、父上の門弟達もいてくれます。
上様の命に従わない番士の成敗はお任せください」
拙者がそう言うと、三枝殿配下の番士達が緊張したようだ。
鎧を装備し騎乗している番士達。
口取り中間に馬を引かせているが、少々頼りない。
父祖から武士の心得は叩き込まれているはずなのだが、殺気が感じられない。
これから敵の隠れ家を襲って皆殺しにすると言う気概が感じられない。
まるで女子供を連れて花見にでも行くような軽さだ。
「左門様、敵はこの屋敷に逃げ込みました」
わざと逃がした、敵の跡をつけていた裏柳生が報告してくれた。
他にも裏柳生が跡をつけている敵はいる。
そんな連中が逃げ込んだ屋敷には、父上や兄上達が向かっている。
「ここは誰の屋敷か知っている者はいますか?」
誰一人答えようとしない。
三枝殿配下の与頭はもちろん、番士達の誰も答えない。
雰囲気から知っていると伝わって来る者もいるのに答えない。
俺が脅すべきではないのだが、三枝殿が言わないとなると……
「今答えないで、後で交流があると分かれば、一味同心とみなされるぞ。
上様が寵愛する小姓の屋敷を二度も襲ったのだ。
一味同心と分かれば、親兄弟はもちろん一族全てが連座される。
大御所様や大御台所様に泣きつけば助かると思っているのか?
稲葉様を始めとした御年寄衆も、この件は許し難いと言われている。
かねてから上様を立ててくださっていた、酒井様もこの度の件は激怒されている。
大御所様や大御台所様が何と言おうと、上様の小姓を務めた事のある我らは、絶対に許さぬぞ!」
「拙者も上様の剣術指南役を務める柳生家の次男だ。
家の面目にかけて襲撃してきた者共は許さない。
上様からは、御城下で鉄砲を使う許可も頂いている。
敵だと分かった家には、容赦なく鉄砲を撃ちこみ焼き討ちをかける。
立花家や鍋島家、細川家などと言った大名門弟衆も助太刀してくれる。
上様に逆らう謀叛人は誰であろうと捻り潰してくれる!」
「丹後守様でございます!
出羽上山藩四万石、松平丹後守様の屋敷でございます!」
「そのほうだけは一味同心でないと証言してやる。
他の者は襲撃犯の一味同心だから隠そうとしたと証言する。
首を洗って待っていろ!」
0
あなたにおすすめの小説
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
龍の無垢、狼の執心~跡取り美少年は侠客の愛を知らない〜
中岡 始
BL
「辰巳会の次期跡取りは、俺の息子――辰巳悠真や」
大阪を拠点とする巨大極道組織・辰巳会。その跡取りとして名を告げられたのは、一見するとただの天然ボンボンにしか見えない、超絶美貌の若き御曹司だった。
しかも、現役大学生である。
「え、あの子で大丈夫なんか……?」
幹部たちの不安をよそに、悠真は「ふわふわ天然」な言動を繰り返しながらも、確実に辰巳会を掌握していく。
――誰もが気づかないうちに。
専属護衛として選ばれたのは、寡黙な武闘派No.1・久我陣。
「命に代えても、お守りします」
そう誓った陣だったが、悠真の"ただの跡取り"とは思えない鋭さに次第に気づき始める。
そして辰巳会の跡目争いが激化する中、敵対組織・六波羅会が悠真の命を狙い、抗争の火種が燻り始める――
「僕、舐められるの得意やねん」
敵の思惑をすべて見透かし、逆に追い詰める悠真の冷徹な手腕。
その圧倒的な"跡取り"としての覚醒を、誰よりも近くで見届けた陣は、次第に自分の心が揺れ動くのを感じていた。
それは忠誠か、それとも――
そして、悠真自身もまた「陣の存在が自分にとって何なのか」を考え始める。
「僕、陣さんおらんと困る。それって、好きってことちゃう?」
最強の天然跡取り × 一途な忠誠心を貫く武闘派護衛。
極道の世界で交差する、戦いと策謀、そして"特別"な感情。
これは、跡取りが"覚醒"し、そして"恋を知る"物語。
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
レンレンは可愛い(*´×`*)四十路のおじさん♡Ωに覚醒しました!〜とにかく元気なおバカちゃん♡たぁくん爆誕です〜
志村研
BL
あるところに、高生さんという駄目なおじさんがおりました♡
このおじさん、四方八方に怒られてます。
でもちっとも懲りません。
自分らしさ炸裂にしか生きられなくて、分かっちゃいるけどやめられないんです。
でも、そんな人生だってソコソコ満喫してました。
\\\\٩( 'ω' )و ////
…何だけど、やっぱりね。
色々もの足りなくて、淋しくて。
…愛されたくて、たまらなかったんです。
そんな時、Ωに覚醒♡
高生さんの国では正斎子といいます。
これに成っちゃうと不幸になりがちです。
そんな訳で。
ろくな事をしない割に憎めないおじさんは、心配されてます。
だけど本人は気づきもせずに、ボケっとしてました。
そんなんだから、やらかしました。
そんな時に限って、不運を重ねました。
そんなこんなで、囚われました。
人生、終わった!
もう、何もかもドン底だ!
。・゜・(ノД`)・゜・。
いや、ここからですよ♡
とにかく元気なおバカちゃん♡
中欧のΩおじさん、たぁくん♡爆誕です!
\\\٩(๑`^´๑)۶////
ひろいひろわれ こいこわれ【完結済み】
九條 連
BL
母を突然の事故で喪い、天涯孤独となった莉音は、ある夜、道端で暴漢に襲われかけたところをひとりの男に助けられる。
莉音を庇って頭を殴られ、救急搬送された男は青い瞳が印象的な外国人で、一時的な記憶喪失に陥っていた。
身元が判明するまでのあいだ、莉音がその身柄を引き受けることになったが、男の記憶はほどなく回復する。男は、不動産関連の事業を世界的に展開させる、やり手の実業家だった。
この出逢いをきっかけに、身のまわりで起こりはじめる不穏な出来事……。
道端で拾ったのは、超ハイスペックなイケメン社長でした――
※2024.10 投稿時の内容に加筆・修正を加えたものと差し替え済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる