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第三章:謀略
第35話:年寄衆
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1627年1月5日:江戸城中奥:柳生左門友矩14歳
昼の上様はとても優秀で、夜の上様様を基準に考えると足元をすくわれる。
今回はこれほど早く動かれるとは思っていなかった。
よほど寝所で俺に政を任せたかったのだろう。
大御所様が将軍をされていた時代に選ばれた年寄衆は五人おられる。
上様が将軍に成られてから大御所様に選ばれた年寄衆が三人おられるが、所詮大御所様に選ばれた年寄衆でしかなく、必ず上様の味方をしてくれるとは言い難い。
本丸付きと西之丸付きに分かれているが、ある意味全員が大御所様が派遣した上様の監視役とも言えるのだ。
大御所様が親心で上様が失敗しないように付けた補佐役ではあるが、母親から疎まれ、常に廃嫡の危機にあった上様の素直に受け取れない気持ちもわかる。
失礼ではあるが、そのような年寄衆を分かりやすいように姓名で言わせていただくと、酒井忠利様、酒井忠世様、土井利勝様、井上正就様、永井尚政様、稲葉正勝様、内藤忠重様、酒井忠勝様の八人だ。
阿部正次様も年寄衆だったが、大阪城代として西国を監視されている。
実質的には年寄衆に匹敵する実力者と言えるだろう。
酒井三氏は安城譜代
井上、永井、内藤、阿部の四氏は岡崎譜代。
土井氏は元々岡崎譜代の水野氏だが、東照神君の御落胤だから別格だ。
父上と同じ駿河譜代は春日局殿の実子、稲葉氏しかいない。
他にも徳川御三家の力は侮りがたい。
戦国乱世を生き延びた大大名達も年を取ったとはいえ油断ならない。
そんな者達を相手に年寄衆として働かねばならない父上に同情する。
まあ、父上は大御所様の剣術指南役だった事もある。
剣と同じように、上様と大御所様の間で生死の見切りをすればいい。
上様付きというよりは、本丸付き年寄衆はと言える者は酒井忠世様、土井利勝様、酒井忠勝様の三人だろう。
西之丸付きというよりは、大御所様付き年寄衆と言った方が良い者は、酒井忠利様、井上正就様、永井尚政様の三人だ。
上様付きと言い切れるような年寄衆は、春日局殿の実子である稲葉正勝殿だけと言える危険な状況だ。
上様の教育係に選ばれた内藤忠重様は上様個人の年寄衆と言えなくもないが、上様からの信頼はそれほどでもない。
常に上様を立ててくださり、切腹覚悟で駿河大納言様の苦言を呈してくださった酒井忠勝様は上様の信頼が厚いが、初陣を大御所様の下で行っている。
上様の度し難い性癖を知ってまで立ててくださるかどうかは微妙だ。
それは新たに年寄衆に選ばれた父上も同じだ。
大御所様の剣術指南役だったし、将軍が小姓にけつを差し出して言いなりになるような状況は許さないだろう。
「ああ、ああ、ああ、もっと、もっと強く愛して。
もっと激しく痛くしてくれないと嫌よ!」
何度聞いても情けなくて涙が流れそうになる。
けつを差し出さなくなってきたのは良い傾向だが、言葉づかいが悪くなった。
まるで女のような口調、絶対に年寄衆に聞かせられない。
拙者か兄上が駿河大納言様付き小姓となっていて、今と同じくらい信頼を得ていたら、父上は上様を切り捨てて駿河大納言様についていただろう。
大御所様の剣術指南役だったことを利用して、上様を排除して駿河大納言様を将軍に据えようとしていただろう。
激しい痛みを求めて忍び居茶臼で抱き着いてくる上様の姿は、心からそう思ってしまうくらい見苦しい。
「上様、もうこれ以上は危険でございます。
それでなくても肛門が裂けて血が流れる事が増えているのです。
このままでは腸が裂けて死んでしまうかもしれません」
「うっ、うっ、うっ、うっ、かまわない、腸が裂けてもかまわない!」
「上様がかまわなくても拙者がかまうのです!
上様を衆道で突き殺したとなったら、拙者は磔獄門です。
いえ、車裂きの刑や鋸引きの刑に処されるかもしれません!」
「あっ、うっ、あっ、うっ、いっしょ、一緒!
行くときも死ぬときも左門と一緒よ!」
いやだ、上様の衆道に付き合って死ぬのは絶対に嫌だ!
そう大声で叫んで寝所から出て行きたいのだが、忠誠心が許さない。
恨みますぞ、父上、兄上!
「上様、死ななくてすむようにしてください!
拙者は剣の道で死ぬと決めているのです。
上様が少しでも拙者の事を考えていてくださるのなら、少しくらい拙者の望みを叶えてくださってもいいでしょう!」
「だめよ、絶対に駄目!
左門は幾つになっても小姓として仕えるの!
私の側から絶対に放さない!
剣の道に行くなんて絶対に許さない。
うっ、あっ、うっ、あっ、ああああああ!」
上様が忍び居茶臼から激しくけつを振って絶頂された。
これまでのように、尻を差し出して責められるのではなく、自分から攻めるようになられたのを喜ぶべきなのか?
そんな情けない事で喜ぶべきか迷うのがとても悲しい。
上様のもっと将軍らしい言動で喜びたかった。
上様付きの小姓に選ばれた時の喜びは何だったのだ。
そうだ、嫁をもらうか?
拙者も出羽上山藩四万石の藩主なのだ。
後継者がなければ藩が取り潰しになり家臣領民が困る事になる。
問題は、衆道で得た領地は一代限りという考えがある事だ。
四万石は拙者が死ねば幕府に返上すべきものだという考えだ。
なにより上様が拙者の結婚を許してくれるかどうかだ。
小姓の身分にかかわらず、衆道で四万石もの領地を得た拙者は、奥の女衆と同じだという考えもある。
領地や扶持は、実子ではなく養子に継がせろという考えだ。
念のために上様に確認しておいた方が良い。
そうでないと、とても命懸けの奉公などできない。
昼の上様はとても優秀で、夜の上様様を基準に考えると足元をすくわれる。
今回はこれほど早く動かれるとは思っていなかった。
よほど寝所で俺に政を任せたかったのだろう。
大御所様が将軍をされていた時代に選ばれた年寄衆は五人おられる。
上様が将軍に成られてから大御所様に選ばれた年寄衆が三人おられるが、所詮大御所様に選ばれた年寄衆でしかなく、必ず上様の味方をしてくれるとは言い難い。
本丸付きと西之丸付きに分かれているが、ある意味全員が大御所様が派遣した上様の監視役とも言えるのだ。
大御所様が親心で上様が失敗しないように付けた補佐役ではあるが、母親から疎まれ、常に廃嫡の危機にあった上様の素直に受け取れない気持ちもわかる。
失礼ではあるが、そのような年寄衆を分かりやすいように姓名で言わせていただくと、酒井忠利様、酒井忠世様、土井利勝様、井上正就様、永井尚政様、稲葉正勝様、内藤忠重様、酒井忠勝様の八人だ。
阿部正次様も年寄衆だったが、大阪城代として西国を監視されている。
実質的には年寄衆に匹敵する実力者と言えるだろう。
酒井三氏は安城譜代
井上、永井、内藤、阿部の四氏は岡崎譜代。
土井氏は元々岡崎譜代の水野氏だが、東照神君の御落胤だから別格だ。
父上と同じ駿河譜代は春日局殿の実子、稲葉氏しかいない。
他にも徳川御三家の力は侮りがたい。
戦国乱世を生き延びた大大名達も年を取ったとはいえ油断ならない。
そんな者達を相手に年寄衆として働かねばならない父上に同情する。
まあ、父上は大御所様の剣術指南役だった事もある。
剣と同じように、上様と大御所様の間で生死の見切りをすればいい。
上様付きというよりは、本丸付き年寄衆はと言える者は酒井忠世様、土井利勝様、酒井忠勝様の三人だろう。
西之丸付きというよりは、大御所様付き年寄衆と言った方が良い者は、酒井忠利様、井上正就様、永井尚政様の三人だ。
上様付きと言い切れるような年寄衆は、春日局殿の実子である稲葉正勝殿だけと言える危険な状況だ。
上様の教育係に選ばれた内藤忠重様は上様個人の年寄衆と言えなくもないが、上様からの信頼はそれほどでもない。
常に上様を立ててくださり、切腹覚悟で駿河大納言様の苦言を呈してくださった酒井忠勝様は上様の信頼が厚いが、初陣を大御所様の下で行っている。
上様の度し難い性癖を知ってまで立ててくださるかどうかは微妙だ。
それは新たに年寄衆に選ばれた父上も同じだ。
大御所様の剣術指南役だったし、将軍が小姓にけつを差し出して言いなりになるような状況は許さないだろう。
「ああ、ああ、ああ、もっと、もっと強く愛して。
もっと激しく痛くしてくれないと嫌よ!」
何度聞いても情けなくて涙が流れそうになる。
けつを差し出さなくなってきたのは良い傾向だが、言葉づかいが悪くなった。
まるで女のような口調、絶対に年寄衆に聞かせられない。
拙者か兄上が駿河大納言様付き小姓となっていて、今と同じくらい信頼を得ていたら、父上は上様を切り捨てて駿河大納言様についていただろう。
大御所様の剣術指南役だったことを利用して、上様を排除して駿河大納言様を将軍に据えようとしていただろう。
激しい痛みを求めて忍び居茶臼で抱き着いてくる上様の姿は、心からそう思ってしまうくらい見苦しい。
「上様、もうこれ以上は危険でございます。
それでなくても肛門が裂けて血が流れる事が増えているのです。
このままでは腸が裂けて死んでしまうかもしれません」
「うっ、うっ、うっ、うっ、かまわない、腸が裂けてもかまわない!」
「上様がかまわなくても拙者がかまうのです!
上様を衆道で突き殺したとなったら、拙者は磔獄門です。
いえ、車裂きの刑や鋸引きの刑に処されるかもしれません!」
「あっ、うっ、あっ、うっ、いっしょ、一緒!
行くときも死ぬときも左門と一緒よ!」
いやだ、上様の衆道に付き合って死ぬのは絶対に嫌だ!
そう大声で叫んで寝所から出て行きたいのだが、忠誠心が許さない。
恨みますぞ、父上、兄上!
「上様、死ななくてすむようにしてください!
拙者は剣の道で死ぬと決めているのです。
上様が少しでも拙者の事を考えていてくださるのなら、少しくらい拙者の望みを叶えてくださってもいいでしょう!」
「だめよ、絶対に駄目!
左門は幾つになっても小姓として仕えるの!
私の側から絶対に放さない!
剣の道に行くなんて絶対に許さない。
うっ、あっ、うっ、あっ、ああああああ!」
上様が忍び居茶臼から激しくけつを振って絶頂された。
これまでのように、尻を差し出して責められるのではなく、自分から攻めるようになられたのを喜ぶべきなのか?
そんな情けない事で喜ぶべきか迷うのがとても悲しい。
上様のもっと将軍らしい言動で喜びたかった。
上様付きの小姓に選ばれた時の喜びは何だったのだ。
そうだ、嫁をもらうか?
拙者も出羽上山藩四万石の藩主なのだ。
後継者がなければ藩が取り潰しになり家臣領民が困る事になる。
問題は、衆道で得た領地は一代限りという考えがある事だ。
四万石は拙者が死ねば幕府に返上すべきものだという考えだ。
なにより上様が拙者の結婚を許してくれるかどうかだ。
小姓の身分にかかわらず、衆道で四万石もの領地を得た拙者は、奥の女衆と同じだという考えもある。
領地や扶持は、実子ではなく養子に継がせろという考えだ。
念のために上様に確認しておいた方が良い。
そうでないと、とても命懸けの奉公などできない。
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