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第一章
第1話:婚約破棄
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「ミケーネ伯爵家令嬢シルヴィア、そなたと王太子ガリウスの婚約だが、そなたの父親、ミケーネ伯爵アルバート卿の願いを聞き届け、解消する事にする」
デイレン王国の国王パウロは、大恩人であるシルヴィアに情け容赦のない言葉を投げつけ、冷酷な眼で見下していた。
可哀想なシルヴィアは、無残にも使い捨てにされた。
悪業の呪いで老齢して死にかけていたパウロを助けるため、シルヴィアはその生命力を限界まで使い、百歳の老婆のような姿になっていた。
パウロ王の冷酷の宣告を聞く事もできない耳。
明暗だけしか分からず、像を映し出さなくなった眼。
何を食べても砂を噛むように味が感じられなくなった舌。
食べ物の香りも、花の香りも感じられなくなった鼻。
風が吹いただけで激痛が走るようになった身体の節々。
節くれだち、あちらこちらに曲がった指。
満足に歩く事もできなくなった足腰。
二つ折れになってしまった背中。
枯れ枝のように痩せ細った四肢。
全ての歯が抜け落ちた口。
その全てが、パウロ王にかかった呪いを解き、若さを取り戻させるための代償となったのに、全く報われなかった。
神に逆らう解呪を行うために、毎日三度の儀式のために、気を失うほどの激痛に耐え、十六歳の少女が、日々老化していく己の姿に耐え、王のため国のため、愛する王太子のために、耐えに耐えてきたというのに。
その報いが、心から愛する王太子との婚約解消だった。
本来ならば嘆き哀しむはずの所だが、老化で死にかけているシルヴィアには、怒る事も哀しむ事もできなかった。
それ以前に全身の痛みと耳鳴りに苦しめられ、周囲の事が分からなかった。
例え何か言いたくても、全ての歯を失い、舌の感覚もなくなってしまったシルヴィアは、満足に話す事もできなかった。
「もう返事もできないか、ミケーネ伯爵、さっさとこの汚物を屋敷に連れて帰れ。
もう王太子の婚約者でもないモノに、このまま王宮で死なれては迷惑だ」
パウロ王は、シルヴィアの父親、ミケーネ伯爵に冷たく言い捨てた。
シルヴィアの実母である先妻が死に、女遊びで莫大な借金を作り、そこ肩代わりにシルヴィアを平気でパウロ王に売り渡す冷酷非情なミケーネ伯爵は、もう死ぬと分かっていて利用価値のないモノを、屋敷に引き取る気はなかった。
「もうシルヴィアは死んだも同然、屋敷に引き取るよりも、このまま墓地に埋葬したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
本当に血のつながった父親とは思えない発言だった。
自分の借金を返済するために売った娘を、これほど無残な姿になった娘を、生きたまま墓地に埋めようというのだ。
悪逆非道とは正にこの事だった。
誰もこのような連中に正義の鉄槌を下さないのだろうか。
デイレン王国の国王パウロは、大恩人であるシルヴィアに情け容赦のない言葉を投げつけ、冷酷な眼で見下していた。
可哀想なシルヴィアは、無残にも使い捨てにされた。
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パウロ王の冷酷の宣告を聞く事もできない耳。
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満足に歩く事もできなくなった足腰。
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その全てが、パウロ王にかかった呪いを解き、若さを取り戻させるための代償となったのに、全く報われなかった。
神に逆らう解呪を行うために、毎日三度の儀式のために、気を失うほどの激痛に耐え、十六歳の少女が、日々老化していく己の姿に耐え、王のため国のため、愛する王太子のために、耐えに耐えてきたというのに。
その報いが、心から愛する王太子との婚約解消だった。
本来ならば嘆き哀しむはずの所だが、老化で死にかけているシルヴィアには、怒る事も哀しむ事もできなかった。
それ以前に全身の痛みと耳鳴りに苦しめられ、周囲の事が分からなかった。
例え何か言いたくても、全ての歯を失い、舌の感覚もなくなってしまったシルヴィアは、満足に話す事もできなかった。
「もう返事もできないか、ミケーネ伯爵、さっさとこの汚物を屋敷に連れて帰れ。
もう王太子の婚約者でもないモノに、このまま王宮で死なれては迷惑だ」
パウロ王は、シルヴィアの父親、ミケーネ伯爵に冷たく言い捨てた。
シルヴィアの実母である先妻が死に、女遊びで莫大な借金を作り、そこ肩代わりにシルヴィアを平気でパウロ王に売り渡す冷酷非情なミケーネ伯爵は、もう死ぬと分かっていて利用価値のないモノを、屋敷に引き取る気はなかった。
「もうシルヴィアは死んだも同然、屋敷に引き取るよりも、このまま墓地に埋葬したいと思いますが、よろしいでしょうか?」
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