3 / 8
第一章
第3話:愛人探し
しおりを挟む
私は本気で愛人を探そうと知恵を絞って考えました。
自分が惨めにならない相手、恥をかかない相手、そう考えると愛人を探すのも一苦労ですが、意趣返しのためですから止める事などできません。
寝食を忘れて探したとまでは言いませんが、あれほど持て余していた時間、退屈な時間が無くなるくらいには真剣に考えました。
「私ももう十八歳です、そろそろ社交デビューしていいのではありませんか?
ヘレス侯爵家の正室として、ピエールの役に立つように社交しなければいけないのではありませんか?」
私はご機嫌伺いに来たピエールの家臣、後宮総取締のライラに話してみました。
後宮、これもおかしな話です。
確かに貴族が多くの側室を持つのは普通の事ですが、普通王家から正妻をもらったら、側室を持つのは遠慮するモノです。
ピエールも最初は王家に遠慮して後宮を設けようとはしませんでした。
まあ、外に側室を置いていますから、形だけの遠慮です。
それを、両親と国王と王妃がピエールに配慮して、私の住処として後宮を整えて欲しいと命じたのですから、笑ってしまいます。
自分の娘を嫁がせておいて、側室を置けという事で、君臣の間が上手く行っているように周辺諸国に見せかけようとしたのです。
私の寝室には一度も訪れず、外の妾宅で寝泊まりしているのは公然の事です。
周辺諸国はビスコー王家を嘲笑っていたことでしょう。
ただ、今では、同情しているかもしれませんね。
「それは大変結構な事でございます。
侯爵閣下が奥方様の心身を御心配され、再三再四好きになさるように申し出ておられるにもかかわらず、ことごとく邪魔する者がございますからね。
承りました、このライラが御約束いたしましょう。
では早速王都に向かう準備をさせていただきます」
私が言い出した事ではありますが、ここまで露骨に領地から追い出しにかかられては、少々腹が立ってしまいます。
確かに私は、王家がピエールに押し付けた厄介者です。
忠烈無比のピエールの家臣から見れば、主君が愛する人を正室にできないようにした、極悪人にしか見えないでしょう。
ですが、私だって好きでここに来たわけではないのです。
こんなに惨めな思いなど、私だってしたくはないのです。
「いえ、王都ではなくこの城で社交がやりたいわ。
私が王侯貴族と会えたのは、この城での婚約披露宴と結婚披露宴だけだわ。
それに、私は八歳で王都を離れたから、王都に行っても知り合いがいないの。
それでは寂し過ぎるから、この城で社交をやりたいわ」
つい、意地悪な事を言ってしまいました。
王都で社交をしようとしても、ピエールは来てくれないでしょう。
愛人を探すのならその方が好都合でしょうが、それでは私が惨め過ぎます。
せめて社交デビューだけは、ピエールに横にいてもらわないと。
自分が惨めにならない相手、恥をかかない相手、そう考えると愛人を探すのも一苦労ですが、意趣返しのためですから止める事などできません。
寝食を忘れて探したとまでは言いませんが、あれほど持て余していた時間、退屈な時間が無くなるくらいには真剣に考えました。
「私ももう十八歳です、そろそろ社交デビューしていいのではありませんか?
ヘレス侯爵家の正室として、ピエールの役に立つように社交しなければいけないのではありませんか?」
私はご機嫌伺いに来たピエールの家臣、後宮総取締のライラに話してみました。
後宮、これもおかしな話です。
確かに貴族が多くの側室を持つのは普通の事ですが、普通王家から正妻をもらったら、側室を持つのは遠慮するモノです。
ピエールも最初は王家に遠慮して後宮を設けようとはしませんでした。
まあ、外に側室を置いていますから、形だけの遠慮です。
それを、両親と国王と王妃がピエールに配慮して、私の住処として後宮を整えて欲しいと命じたのですから、笑ってしまいます。
自分の娘を嫁がせておいて、側室を置けという事で、君臣の間が上手く行っているように周辺諸国に見せかけようとしたのです。
私の寝室には一度も訪れず、外の妾宅で寝泊まりしているのは公然の事です。
周辺諸国はビスコー王家を嘲笑っていたことでしょう。
ただ、今では、同情しているかもしれませんね。
「それは大変結構な事でございます。
侯爵閣下が奥方様の心身を御心配され、再三再四好きになさるように申し出ておられるにもかかわらず、ことごとく邪魔する者がございますからね。
承りました、このライラが御約束いたしましょう。
では早速王都に向かう準備をさせていただきます」
私が言い出した事ではありますが、ここまで露骨に領地から追い出しにかかられては、少々腹が立ってしまいます。
確かに私は、王家がピエールに押し付けた厄介者です。
忠烈無比のピエールの家臣から見れば、主君が愛する人を正室にできないようにした、極悪人にしか見えないでしょう。
ですが、私だって好きでここに来たわけではないのです。
こんなに惨めな思いなど、私だってしたくはないのです。
「いえ、王都ではなくこの城で社交がやりたいわ。
私が王侯貴族と会えたのは、この城での婚約披露宴と結婚披露宴だけだわ。
それに、私は八歳で王都を離れたから、王都に行っても知り合いがいないの。
それでは寂し過ぎるから、この城で社交をやりたいわ」
つい、意地悪な事を言ってしまいました。
王都で社交をしようとしても、ピエールは来てくれないでしょう。
愛人を探すのならその方が好都合でしょうが、それでは私が惨め過ぎます。
せめて社交デビューだけは、ピエールに横にいてもらわないと。
6
あなたにおすすめの小説
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。
和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」
同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。
幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。
外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。
しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。
人間、似た物同士が夫婦になるという。
その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。
ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。
そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。
一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。
他の投稿サイトにも掲載しています。
私から全てを奪おうとした妹が私の婚約者に惚れ込み、色仕掛けをしたが、事情を知った私の婚約者が、私以上に憤慨し、私のかわりに復讐する話
序盤の村の村人
恋愛
「ちょっと、この部屋は日当たりが悪すぎるわ、そうね、ここの部屋いいじゃない!お姉様の部屋を私が貰うわ。ありがとうお姉様」 私は何も言っていません。しかし、アーデルの声を聞いたメイドは私の部屋の荷物を屋根裏部屋へと運び始めました。「ちょっとアーデル。私は部屋を譲るなんて一言も言ってないです」
「お姉様、それは我が儘すぎるわ。お姉様だけこんな部屋ずるいじゃない」「マリーベル。我が儘は辞めてちょうだい。また部屋を移動させるなんてメイド達が可哀想でしょ」私たちの話を聞いていた義理母のマリアは、そう言うと、メイド達に早くするのよと急かすように言葉をかけました。父の再婚とともに、義理の妹に私の物を奪われる毎日。ついに、アーデルは、マリーベルの婚約者ユーレイルの容姿に惚れ込み、マリーベルから奪おうとするが……。
旧タイトル:妹は、私から全てを奪おうとしたが、私の婚約者には色仕掛けが通用しなかった件について
·すみません、少しエピローグのお話を足しました。楽しんでいただけると嬉しいです。
裏切者には神罰を
夜桜
恋愛
幸せな生活は途端に終わりを告げた。
辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。
けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。
あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。
母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。
ぱんだ
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。
そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。
バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。
逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。
今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。
reva
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。
特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。
けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。
彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下!
「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。
私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。
愛人がいる夫との政略結婚の行く末は?
しゃーりん
恋愛
子爵令嬢セピアは侯爵令息リースハルトと政略結婚した。
財政難に陥った侯爵家が資産家の子爵家を頼ったことによるもの。
初夜が終わった直後、『愛する人がいる』と告げたリースハルト。
まごうことなき政略結婚。教会で愛を誓ったけれども、もう無効なのね。
好きにしたらいいけど、愛人を囲うお金はあなたの交際費からだからね?
実家の爵位が下でも援助しているのはこちらだからお金を厳しく管理します。
侯爵家がどうなろうと構わないと思っていたけれど、将来の子供のために頑張るセピアのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる