冤罪で父母を殺され婚約破棄された水龍の巫女は、国を滅ぼす覚悟をした。

克全

文字の大きさ
8 / 11

7話

しおりを挟む
 わたし、クリスティアンはカーライル家の近衛騎士だ。
 もうカーライル伯爵家などという屈辱的な爵位など名乗らない!
 カーライル家は辺境に独立独歩する誇り高き家なのだ。
 他者の風下の立つような家では断じてない!
 水龍を崇め、水龍の巫女様に統治される、貴き家なのだ!

 御当主様と奥方様を騙し討ちしたアレッサンドロは許さない!
 絶対にこの手で首を取る!
 アレッサンドロの手先となっている、ハミルトン王国軍も領主軍も許さない!
 皆殺しにしてやりたいが、巫女様が領民に慈悲の心を示された以上、臣下たる者勝手気儘は絶対に許されない。
 巫女様の一族を御守する近衛騎士として、巫女様の御心に沿う行動をとるとともに、一般の騎士達が巫女様の御心を傷つけないように指導しなければならない!

「よいか!
 絶対に領民に手出しするな!
 水龍様は全てをお見通しだ!
 今回のハミルトン王国の暴挙に、人間に対する嫌悪感が大きくっている。
 巫女様でさえ宥めるのに大変な思いをなされおられる。
 ここで我ら巫女様の臣下までが非道な行いをすれば、水龍様は人間を皆殺しにされるだろう。
 巫女様と巫女様の家族を残して、人族を根絶やしにされるだろう。
 だから我らは、絶対に巫女様の命に背いてはならぬのだ。
 分かったか!」

「「「「「おう!」」」」」

 わたしは指揮下の騎士を諭し脅した。
 彼らもカーライル家の騎士だ。
 生まれた時から水龍様の伝説は叩き込まれている。
 訓練中の従士時代はもちろん、騎士に叙勲されてからも繰り返し水龍様の伝説を叩きこまれ、水龍様を恐れ敬う心を叩きこまれている。
 だから水龍様の怒りに触れないようにと言えば、その命令に逆らう事はない。

 敵軍に見つからないように密かにカーライル城を出陣し、大きく迂回して敵軍の退路を断つべく、敵軍が自国に敗走した時に待ち伏せできる場所に隠れ潜んだ。 
 敵軍の警戒網ギリギリの場所で、水龍様がお出ましになるのを待ち受けたのだ。

 我々が潜んでいる場所からでも、水龍様の御姿が大きく見えた。
 水龍様の怒りが頂点に達せられた咆哮は、事前に知り覚悟していた我々でさえ金縛りになるほどだった。
 何も知らない敵軍が耐えられる威圧ではない。
 鍛錬に鍛錬を重ねたカーライル家の騎士でさえ、耐えるのに体力と精神力を削り取られるのだ。
 惰弱な敵国の貴族はもちろん、騎士でも耐えられないだろう。
 ましてむりやり徴兵された領民兵が耐えられるものではない。

 水龍様の咆哮から立ち直った我らは、ただ一直線に敵軍の本陣に向かった。
 アレッサンドロの首を取る!
 アレッサンドロに首を亡き御当主様と奥方様の墓前に供える!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の妹は復讐を誓う

影茸
恋愛
王子との婚約を冤罪によって破棄され、何もかも失った少女メイア・ストラード。 そしてその妹、アリアは絶望に嘆き悲しむ姉の姿を見て婚約を破棄した王子に復讐を誓う。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!

藤野ひま
ファンタジー
 わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。  初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!  夫や、かの女性は王城でお元気かしら?   わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!  〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...