養父母に家族共々謀殺されましたが、死に戻れたので復讐します。

克全

文字の大きさ
3 / 52
第1章

2話

しおりを挟む
「御父様。
 御母様。
 レーナとハーン夫妻の様子がおかしいとは思われませんか」

「ユリアもそう思うか」
「はい」
「私もそう思っていました」

 大公クルトと大公女ユリアの会話に、大公妃サラーが加わった。
 どうしても黙ってはおられなかったようだ。

「ユリアが病弱ではないのに、レーナが病弱だというのはおかしいと思います」
「そうだな。
 ハーン夫婦の言う事には、前々からおかしい事が多いと思っていた。
 婚約者のノアも同じことを言うから、信じていたのだが、グルかもしれぬ」

「そうですわ、御父様。
 ハーン夫婦とノアには邪悪な気を感じます」
「ユリアが言うのなら間違いあるまい。
 今迄は帝国や有力貴族の手前、レーナを取り戻すのを我慢していたが、ユリアが聖女の認定を受けたからは、断行しても大丈夫であろう」

「はい。
 私は、レーナを取り戻すために、今日まで修行してきました」
「ええ、ええ。
 貴方の努力は、母である私が誰よりも知っていますよ」

「うむ。
 ユリアの努力は、余も十分理解しておる。
 その努力を無駄にしないように、軍を動員して貴族家を討伐してでも、レーナを取り戻してみせる」

「貴男。
 ようやく、レーナをこの胸に抱けるのですね。
 双子を忌み嫌う帝室に遠慮し、帝室に媚びへつらう有力貴族の圧力に屈し、愛しい我が子を手放すしかありませんでした。
 いえ、私の事など、どうでもいいのです。
 レーナがどれほど辛い思いをしているかと思うと、この胸が張り裂けそうです」

「今まで待たせてすまなかった。
 ようやく心許せる家臣も育ち、帝国に対抗する力を蓄えることが出来た。
 今こそ帝国に対等にモノ申し、レーナを我が家に取りかえす」
「はい」

 父上様と母上様は、私を愛して下さっていた。
 姉上様は、私を家に取り戻すために、聖女になる修行をして下さっていたのだ。
 私は愛されていたのだ。
 忌み嫌われて家を出されたわけではなかったのだ。
 
 なのに!
 私は全てを見た。
 姉上様の婚約者であった、帝国の王子が送ってきたプレゼントに、呪いがかけられていたのを。
 私を呼び戻そうとした日に、呪いが発動して、父上様、母上様、姉上様を呪い殺した事を。

 大公家を護る数々の聖なる護符を、養父母とシューベルト侯爵家が共謀して、無力化した事を。
 その養父母を帝国が謀殺するのを。
 私の婚約者だった、シューベルト侯爵家の次男ノアが、帝国の手先となって国を売る事を。
 そして全ての罪を私に擦り付けたことを。

 怒りに打ち震えた。
 報復出来るモノなら、何を失ってもよかった。
 養父母も許せないが、養父母を唆して、実の両親と姉を殺させた帝国が、どうしても許せなかった。
 その為なら、どんなことでもすると、心の中で叫んだ。

 今の私には、指一本動かす事も出来ない。
 見る事と聞くことは出来るが、声を出す事も出来ない。
 歯噛みしたくても、歯を噛みしめる感覚もない。
 全く無力な存在なのだ。

(報復したいか)

(え?
 なに?
 なんなの?
 だれなの?)

(報復したいかと聞いている)

(誰?
 誰が話しかけているの?)

(そんな事を気にするようなら、この話はなしだ)

(いいえ、待って!
 誰でもいい。
 どんな代償を払ってもいい。
 私と私の家族を殺した者達に、報復させて)

(分かった。
 報復させてやろう。
 だが、その代わり、そなたの全てをもらい受ける。
 それでいいのだな)

(構わないわ。
 命であろうと、名誉であろうと、全て渡すわ。
 どうせやってもいない罪をかぶせられ、後世に悪名を残しているのだから)

(では、選んでもらおう。
 余に報復を任せるか。
 それもと、自分の手で報復するか)

(なに?
 自分で恨みを晴らすことが出来るの!
 だったら御願い。
 この手で恨みを晴らさせて!)

(分かった。
 だが自分で恨みを晴らすとなると、努力してもらうことになる。
 それで構わないか)

(望むところよ。
 この手で報復出来るのなら、何だってするわ。
 どんな苦行も乗り越えて見せるわ)

(人の心を踏み躙り、悪辣非道な行いをすることになる。
 民を虐げ、怨嗟の声を聴くことになる。
 その覚悟はあるのか)

(悪人や帝国民だけではないの。
 大公国の民も虐げないといけないの?)

(先ほど貴様は、悪魔に魂を売り渡すと言ったではないか。
 いや、魂だけではなく、全てを売り渡すと言ったではないか。
 その中には、大公国民はもちろん、そなたの良心も含まれているのだ)

 どうすればいいの?
 復讐は果たしたい。
 でもその為に、両親や姉上が愛し護ろうとした、大公国の民まで虐げてもいいの。

 思い悩むレーナの眼に、大公夫婦と姉ユリアの墓を祭る民の姿が映った。
 だが同時に、レーナの墓を破壊する民の姿も眼に映った。
 レーナは決意した。
 そしてそれを悪魔に伝えた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...