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第2章

42話

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「帝国に勝ったら、婚約は破棄しましょう」

「なんですって!
 それではレーナ姫に傷がついてしまいます。
 それでいいのですか!」

「構いません。
 戦争に勝つための手段です。
 貴族士族ならば、それくらいのことは理解出来ます。
 そんな事も理解出来ない者の事など、気にしません。
 気にするような者を婿に迎える気もありません」

「よい御覚悟です」

 ロイはレーナ姫を見直した。
 帝国に二度も勝利しているから、並の姫ではないと思っていた。
 だがほとんどは家臣の力だと思っていた。
 しかしレーナ姫の決断を聞いて、レーナ姫が将の器だと見直して。
 人の上に立つ器量があると確信した。

 それはアームストロング家の重臣も同じだった。
 殺される可能性もある大公家の陣に、ロイと共に命懸けで乗り込む忠臣だ。
 武勇も知略も胆力も兼備している。
 もしくはどれかが突出した武人だ。
 レーナ姫の将器に気が付いた。

 後の話が早かった。
 アームストロング家の家臣が一致団結して戦った。
 大公家に同盟を願い出たのはアームストロング家の方だ。
 追い込まれて立場が弱いのはアームストロング家の方だ。
 だから危険な先鋒を務めることになる。

 だが大公軍も、先鋒が弱いのは困る。
 大公軍の戦法は、先駆けの武力で敵を粉砕し、損害出さずに勝つ事だ。
 だから暁の騎士団の先駆けが先頭に立った。
 彼らが切り開いた敵陣を、アームストロング軍が攻め込むのだ。
 それほど難しい事ではない。

 敵は弱腰の譜代貴族軍だ。
 ほとんどは城と領地を捨てて逃げてしまう。
 極僅かな貴族が城に籠って戦ったが、暁の騎士団の斥候が城内に入り込み、城門を開いて味方を引き入れた。
 彼らはこの日に備えて技を磨いてきたのだ。

 磨いた技に加えて、大魔境で魔獣を斃して得た身体能力がある。
 譜代貴族の家臣程度に対応出来るモノではない。
 そして一旦城門が開けば、アームストロング軍が殺到する。
 アームストロング軍の将兵は普通の人間だが、暁の騎士団の先駆けが先鋒務めれば何の心配もない。

 だが問題は占領した領地の支配だった。
 大公家の戦力を分散させるのは愚策だ。
 だからと言って、領民から搾取するかもしれない、信用の無い者に任せる訳にはいかない。
 そこで大公家が先に占領地に送った騎士見習いを頭にして、その下にアームストロング家の文官を置く形にした。

 その政策が思っていた以上に占領地領民に好評で、大公軍の侵攻に拍車をかけた。
 次々と占領地を広げる大公軍に、アームストロング家以外の外様貴族も覚悟を決めた。
 次々と大公家に公子を人質を送ってきた。
 そして連合して帝国と戦おうとした。
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