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第2章

43話

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 数多くの譜代貴族討伐作戦で、暁の騎士団の武名は鰻登りだった。
 特に先駆けを務めた者の武名は、帝国軍を恐れおののかせる程だった。
 特に五人の騎士が武名をあげた。
 彼らは特徴的な武器と装備を整え、帝国軍を威圧するようにしていた。

「勇名を馳せた騎士」
フィン・ユング  :暁の徒士団団長 ・蒼備え・方天戟
アローン・ワイス :暁の徒士団副団長・緑備え・長槍
テオ・メラ―   :暁の徒士団先駆け・赤備え・長槍
ラウル・ペーター :暁の徒士団幹部 ・黄備え・青龍偃月刀
ベリル・グランド :暁の徒士団幹部 ・白備え・蛇矛

 それも単に五人が先駆けを務めるだけではなかった。
 彼らに扮した影武者が活躍するのだ。
 普通の騎士に扮した五人が要所を抑え、影武者が先駆けを務めるのだ。
 影武者とは言え、大魔境で身体強化した強者だ。
 帝国譜代貴族の将兵なと簡単に粉砕してくれる。

「レーナ姫はまるで戦の女神ですね」

「何を言っているのです。
 戦場で戯言など笑えませんよ」

「戯言ではありませんよ。
 本気の言葉です。
 レーナ姫が大公軍を率いて以来負け知らずではありませんか。
 レーナ姫こそ戦の女神ですよ。
 そのような方と婚約出来た私は果報者です」

「本当に笑えない冗談です。
 以前にも言いましたが、これは政略婚約です。
 帝国を斃せば解消できるのです。
 ロイ殿は妻を迎えて家を継げばいいのです」

「いえ。
 私はレーナ姫の婿になりたい。
 家は弟が継げばいい」

「若!
 なりませんぞ。
 絶対になりませんぞ!」

 ロイはレーナ姫に恋してしまっていた。
 レーナ姫の輝くような容姿は魅力的だったが、それ以上に心根が美しかった。
 共に命懸けの戦場に立てば、取り繕った表面など直ぐにはがれてしまう。
 戦場でこそ、人間の本性が剥き出しになる。
 その戦場で、レーナ姫は光り輝いていた。

 一旦戦うとなった敵へは、苛烈なまでに容赦のない殲滅戦を指揮する。
 戦場での領民への乱暴狼藉は、敵味方かかわりなく公正に厳罰に処した。
 情けない話だが、味方で領民を害するのは、アームストロング家等の、外様貴族士族の人間ばかりだった。
 一旦支配下に置いた領民には、レーナ姫は心憎いまでの気配りを見せる。
 全ては暁の騎士団が献策した事だが、それを採り入れる度量がある。
 
 いや、全ての献策を鵜呑みにしている訳ではないのだ。
 的確な質問をして献策の真意を確認し、疑問点を明らかにした上で採用している。
 暁の騎士団も常にレーナ姫を鍛えるように献策し、レーナ姫もそれに応えている。
 いつの間にか目が離せなくなっていた。
 本当に婿入りしたいと思うようになっていた。

 だがライバルがいたのだ。
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