【BL】ココロロ・リップ 〜ぼく、本気になっちゃうよ?~【R18】

人面石発見器

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02 アリエル・ソライシュード

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 アリエルと友達になって、ぼくは彼とたくさんの時間を共有するようになった。
 彼は王子さまのような見た目に似合った、裕福な家の人だった。
 魔術学院の生徒が暮らす寮にはランクがあって、ぼくが暮らしているのは最下級……といってもほとんどの生徒がそうなんだけど、ごく普通の個人部屋だ。
 広くはないけど、寝て勉強するには困らない。そんな感じの部屋。
 でもアリエルが暮らしているのは最上級の寮室で、リビングや広い寝室、それに召使が控える部屋まである。彼に召使まではいないから、その部屋は物置になっているけど。
 休日の午後。
 ぼくはアリエルの部屋のリビングで、彼が所有する図鑑を見せてもらいながら、彼の説明を聞いていた。
 図鑑はとても高価な本で、ぼくも目にしたのは数えるほどしかない。

「すごいね。アリエルはなんでも知ってるんだね」

 彼の話は魔術だけなく、政治や経済や生物といった、ぼくの知らない分野のものがたくさんあった。

「そんなことないよ。ただおれの家には、本がたくさんあったからね」

 本か……高いんだよな。今見ている図鑑なんか、ぼくが一生かかっても手に入らないほど高価だ。
 学院には本がたくさんあるけど、ぼくが学びたい治癒魔術の本は全部読んでしまった。
 それに正直いうと、治癒魔術にかんしてぼくはすでに学院卒業レベルに達していて、あまり参考になる書物はない。
 もっと高度なことを学びたいけど、それにはすごくお金がかかる。それに今のぼくに必要なのは、知識よりも実戦だ。
 といっても、それは治癒魔術に限ってのことで、ぼくが学ぶべきことはまだまだたくさんあるんだけど。

「ぼく治癒魔術専門っていうか、それに特化してるから、治癒魔術以外はあまり興味がないんだよね」

 ぼくの言葉にアリエルは、

「興味がないこともちゃんと勉強しないと、卒業できないよ?」

 当たり前のことを笑いながらいう。

「わかってるよ。だからこうして、アリエルに教えてもらってるんでしょ」

 ぼくも彼に笑顔を返した。
 友達とふたりだけの、穏やかな時間。
 ぼくは故郷で同年代の子はいなかったから、友達といえる友達はアリエルが初めてだ。
 友達との時間って、こんなに楽しいものだったんだな。
 村の子どもたちの面倒を見るのも楽しいといえば楽しかったけど、そういう楽しさとはまったく違う。
 なんというか、幸せな感じの楽しさだ。

「だったら、治癒魔術はリップが教えてくれるんだろ? リップが使える最上級の治癒魔術、見せてくれないか」

「いいよ」

 ぼくは推薦試験のときに披露したのと同じ、ロストルリターンの構成を編んで見せる。

「これは第五上位術のロストルリターンだよ。今のぼくが使える、最上級の治癒魔術」

 アリエル、驚いた顔してる。なんだか、嬉しくて恥ずかしい気分だ。

「第五上位術って、先生レベルじゃないか。すごいなリップ」

 ぼくは術を発動させることなく、構成を消去する。

「でも攻撃魔術はぜんぜんだけどね、まだ第一中位術も全部使えないよ」

 第一中位術は初歩の初歩だから、苦手な系統といっても使えないのはヤバい。

「それはさすがに、ヤバいんじゃないか?」

 本当に、そうなんだ。

「ヤバいよ。このままだと居残りだ」

「でも特化型の人は、それだけしかできないというしな」

 この後ぼくはアリエルに攻撃魔術のレクチャーをしてもらって、一番簡単な雷系攻撃魔術の感覚をなんとかつかむことができた。

 アリエルと時間を共有していくうちに、ぼくはあることに気がついた。
 アリエルは、ぼく以外の友達を作ろうとしない。彼は誰に対しても人当たりがいいし親切な人なんだけど、ただ……なんというか他人と深くつき合わないみたいなところがあって、友達といえる友達はぼくだけのように思えた。
 それにアリエルは、あまり成績にこだわっていない。平均点が取れればそれでいいみたいな感じだ。むしろぼくのほうが必死になって勉強しているし、修行しているし、成績も彼より上なんだ。
 友人関係のことはアリエルのプライベートな部分だから踏みこみにくいけど、成績のことは聞くことができた。
 すると、

「おれは、魔術師になるわけじゃないからね」

 との返答。

「そうなの?」

「おれの家がある程度裕福なのも、位が高そうなのもわかる?」

「わかるよ。寮の部屋もすごいし、本がたくさんある家なんて、お金持ちの貴族さまくらいだ」

 アリエルは見た目から、高貴なおぼっちゃまって感じだしね。

「うん、そうなんだ。だから魔術を学んでいるのは、その……貴族のたしなみ? みたいなもので、おれは多分、将来的には領地の運営とかそういう仕事につくと思うんだ」

「それって、領主さまになるってこと!?」

 領主さまか、それはすごいな。

「たぶんね。じゃないのなら、軍に所属することになるかな? 予定ではここを卒業したら、軍の士官学校に行くことなってるから」

 将来は領主さまか軍の士官? それはまた……ぼくとはずいぶん違う。
 貴族も大変なんだな。

「リップは、卒業したらどうするの」

 卒業って、まだまだ先の話だけど。

「地元に帰って治癒魔術師をするよ。ぼくがここに通うお金を出してくれてる領主さまが、それを望んでるから」

「そうか、腕のいい治癒魔術師は貴重だからな」

 アリエルは納得したように頷いて、

「そういえばリップは、どこの出身?」

「南の端っこ、チルラ領だよ。そこにある小さな村の生まれ」

 ぼくの説明に、なんだか考えるような顔をするアリエル。

「チルラ領……確か、フォリシャ伯爵の領地だよね」

「うん、そうだよ。ぼくがここに通えるのも、伯爵さまの……領主さまのおかげなんだ」

 なんだろう? アリエルは真面目な顔をして考えこむ。
 ぼくは……、

(かっこいいな、アリエル)

 アリエルの顔に見惚れてしまった。
 ぼくにじっと見られてか、

「どうかした?」

 彼は視線が気になったようだ。

「ううん……なでもない」

 最近、ぼくは変だ。
 アリエルの近くにいたり、アリエルのことを考えたりすると、心臓が苦しくなる。
 だけど考えるのをやめられないし、距離をとるなんてもっとムリ。
 この感情はたぶん、「恋」っていうんだろう。
 最初は男の子どうしだから違うと思ってたけど、違わないんだ。
 ぼくはアリエルに恋をしている。
 認めたくないけど、認めるしかないところにまで来ちゃってる。
 朝も、昼も、夜も。
 気がついたらぼくは、アリエルのことを考えている。彼の笑顔を思い出している。
 だから認めたんだ。
 ぼくはアリエルに「恋」をしているって。
 困らせたくないから、彼にはなにもいわないけど。
 でもココロの中でだけ、想いを寄せるくらいは許してほしい。
 アリエル。きみを想って苦しくなる心臓の痛みに浸るくらいは、許してほしいんだ。

「なに笑ってるの? リップ。おれ、顔になにかついてる?」

 ぼく、笑ってた……?

「アリエル、きみはかっこいいね。うやらましいよ」

「そうか? 二番目の兄上はもっとすごいぞ。気持ち悪いくらいの美男子だ」

「そうなの? でもぼくは気持ち悪いくらいの美男子より、普通にかっこいいアリエルのほうが好きだよ」

 自然と、「好き」といっちゃってた。
 気がついて、恥ずかしさで顔が熱くなっていく。

「ご、ごめん好きなんて……気持ち悪いのはぼくのほうだね」

 慌てて訂正したけど、アリエルどうして? どうしてきみまで、恥ずかしそうな顔しているの……?
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