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03 第六王子エルヴィン
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ぼくがマシーナ魔術学院に入学してから約半年が経過して、王都では朝夕に寒さを感じる季節になってきた。
寮の自分の部屋で目をさまし、肌寒さにげんなりしながらも着替を終えたぼくは、寮の食堂に移動する。
今日から三日間は国の休日で、学院も休み。
三日間の短い休みでぼくが故郷に帰ることはないけれど、王都に家がある子たちは実家に帰る人もいるみたいで、今朝は食堂に来ている寮生は少なかった。
朝食をとって、自分の部屋に戻って勉強をする。
アリエル、なにしてるんだろうな……。
アリエルも用事があって、今日から三日間は実家に帰っているらしい。
昨日の放課後。ふたりで寮へと移動しているとき、
「リップは明日、どうするの? 街に出かける予定はないよな」
アリエルが聞いてきた。
なんでそんなこと気にするんだろう。
「うーん……ないと思うよ? なんで?」
「いや、ないならいいんだ」
とはいったんだけど、ぼくがアリエルのことを考えて少しだけぽーっとしている時間を楽しんでいると、
「リップ・ヘルトくん、いる?」
寮で働いているおばさんの一人が、
「街の配達屋に領主さまからぼく宛の荷物が届いているから、はやめに取りに行くように」
と教えてくれた。
領主さまからの荷物。なんだろう?
領主さまはときどき、食べ物やお金を送ってくれることがある。ぼくのことを気にかけてくれているんだと思うと嬉かったけど、学院に通わせてもらっているだけで十分良くしてもらっているから、申し訳なくもあった。
おばさん、はやめに取りにいくようにっていってたよな。
だったら今から取りに行こう。
ぼくは領主さまからの荷物を、街の配達屋まで取りに出ることにした。
学院の寮から配達屋のある街の中心までは歩いて30分ほどで、手間というほど手間じゃない。
ぼくはカバンとサイフを持って街へと出る。
今日は冷えるな。もう日が真上に昇っている時間なのに、肌寒いままだ。息が白くなるほどじゃないけど、この感じだとあと数日もしたら白い息の季節になっちゃうのかもしれない。
ぼくの故郷があるチルラ領は比較的暖かな土地で、この時期に肌寒くなるほど冷えることはないから、ぼくはまだ暖かな服の準備をしていなかった。
というかぼくは、服を買えるほど裕福じゃない。
寒い。
震えながら配達屋に行くと、領主さまが何着かの冬服を送ってくれていた。
同封されていた手紙には、領主さまも王都で暮らしていたことがあって、冬は寒さに苦労したと書いてあった。
なので風邪を引くと勉学に支障が出て困るので、服を送ると。領主さまは、本当にお優しいかただ。
早速送ってもらった一着の上着を着てみたけど、少し大きいかな?
それにこの服、女性物っぽく思えるんだけど。もしかしたら、領主さまのお古なのかも。
でもあったかい。ありがとうございます、領主さま。寮に帰ったらお礼の手紙書かないと。
服を着て温まり気持ちに余裕ができたぼくは、「寒いしはやく帰ろう」から「せっかく街まできたんだから少し買い物をしてから帰ろう」に気持ちが変化していた。
とりあえず商店街に向かって足を進めていると、そこかしこからどんどん人が集まってくる。
なにかあるのかな?
街の声に耳をすませてみると、どうやら今日は「第六王子のエルヴィンさま」という人の誕生日で、もうすぐ王子さまが街に姿を表すらしい。
そしてお菓子が振るまわれるとかで、子どもたちがはしゃいでいる。
王子さまね。
王都に住んでいるわけでもない庶民が王族を目にするなんて、一生で一度あるかないかだ。
せっかくだから、その第六王子を見ておこう。記念になるし、あとでアリエルに自慢してやろう。
そんな軽い気持ちだった。
だから騎士に守られながら馬に乗って現れた王子に、ぼくは驚愕した。
その第六王子のエルヴィンさまは、どこをどう見てもアリエルだったから。
「アリ……エル?」
馬上の王子も、ぼくを見て目を見開いた。
完全に、ぼくに気がついている。
でも彼はすぐにぼくから視線をそらし、周りの人たちに手を振りながら、馬に乗って進んでいった。
二日後の夕方。
学院に戻ってきたアリエルは、会うなりぼくを自分の寮室へとさそった。
外は寒かったのに、アリエルの部屋は暖かい。たぶん、温度系の魔術が施されているんだな。さすがは最上級の寮室だ。
リビングに通されたぼくは、領主さまからもらった冬物上着をハンガーにかけて吊るし、最近ではぼくの指定席となっているソファーに座った。
アリエルは、いつもはテーブルを挟んでぼくとは対面のソファーに座るんだけど、なぜか今日はぼくの左隣に座ってきた。
隣り合うぼくたち、お互いの体温を感じられるほどの近くで。
「知られたくなかったんだ」
アリエルはそういった。
「アリエルは、本当に王子さまだったんだね」
「本当に?」
「初めて見たとき、王子さまみたいな人だなって思ったから」
なんだろう。急にアリエルが遠い場所の人のように思えた。
当たり前か、王子さまなんだから。
だけど第六王子とはいえ、平民のぼくが自国の王子の顔を知らないのは、そこまで変なことじゃない。平民にとって王族の姿は、姿絵などを見てやっとわかるものだから。
「おれはきみを初めて見たとき、女の子だと思ったよ。男子の制服を着てたのに」
ぼく、女の子に間違われるんだよな。確かに童顔だけど、自分ではそこまで女の子顔してないと思うんだけど。
「しょうがないよ。昔からぼく、女の子にまちがわれるんだ」
なんの話だ?
ぼくが女の子みたいに見えるなんて、そんなの関係ないだろ。
今の話題は、アリエルが王子さまだったってことでしょ?
「アリエルは王子さまだってこと、学院では隠してるんだよね」
そのくらいは、ぼくにもわかる。
「そうだ。知っている者もいるが、黙っていてもらっている」
ふーん。
「なんで?」
想像はつくけど。同級生に王子さまがいると、学院生活に不自由が出てくる生徒もいるだろうから気を使ったとか、そんな理由でしょ?
「学院内でおれがこの国の王子だと知られるほうが、いろいろと不便がおおいからだ。気軽に話しかけてくれる人が少なくなるだろうし、そもそもおれが王子だと知っていたら、リップは友達になってくれたか?」
そう……だね。
「……王子さまだと知ってたら、どうだったんだろうね?」
確かに王子さまともなると、平民のぼくは気軽に話せないよ。
「ほら、やはり隠しておいて正解だった」
アリエルが王子さまだった。
それにはビックリだけど、でもぼくは「第六王子のエルヴィンさま」のことは知らないけど、「友達のアリエル」のことは知っている。
それに王子とかそういうのじゃなくて、アリエル……ぼくは「きみ」に「恋」をしているんだ。
どうせ叶わない恋なんだから、その相手の正体が王子さまだったからといってあまりかわらない。だからきみが王子だろうとなんだろうとかまわいよ。
叶わない恋に、なんのかわりもない。
ぼくは一つ深呼吸をして、
「ぼくはこのまま、アリエルの友達でいいんだよね?」
まっすぐに彼を見ていった。
「あ、あぁ、もちろんだ。当たり前だろ、リップ」
嬉しそうな顔だね。ぼくも嬉しいよ。
お互いに笑顔で、それぞれの顔を見る。
だけどアリエルは急に真面目な顔して、
「リップは……可愛いな」
ぼくの手を握った。
温かく、大きな手だ。ぼくと比べたらだけど。
ギュと、握られる手。
無言で、でもぼくを見つめるアリエル。ぼくの目はその視線から、逃げることができない。
ドキドキするから、やめてもらえないかな。
本音ではやめてほしくないけど、友達……なんでしょ?
友達は、手をつないで見つめあったりしないと思う。
急にどうしたの、アリエル。
なんでそんなに、ぼくを見つめてくるの……?
恥ずかしいん……だけど。
そんな「女の子を見るような目」で、ぼくを見ないでよ。
胸の苦しみと、なぜだろう? 悪いことをしているという気持ちに、ぼくはアリエルの視線から自分の視線を、必死の思いで逃した。
「……ぼ、ぼく。男の子だよ?」
「知ってる」
知ってるんなら、やめてよ。
「嫌かい?」
静かに響くアリエルの声。
いやじゃない。
「いやじゃないから、困ってるんだけど……」
はっきり伝えたほうがいいのかな?
ぼくはアリエルの視線に、自分の視線を戻す。
彼はさっきと変わらないまま、ぼくを見つめていた。
「そんなに見つめないでよ。可愛いなんて、いわないで……」
うそだ。
見つめられてドキドキする。
可愛いっていってもらえて、本当は嬉しい。
「そんなこというと、ぼく……本気になっちゃうよ?」
ぼくの、アリエルへの気持ち。
アリエルは王子さまだから、平民のぼくは彼に釣り合わない。
こうして一緒にいられるだけで、満足するべきなんだ。
そんなのわかってるけど、でも、ココロが納得してくれない。
この夢がもっと長く。本当はずっと続きますようにって、そう……願ってしまう。
どうしたの? アリエル。
なんでそんなに、真面目な顔でぼくを見つめるの?
期待していいの?
ぼく、本当に……。
きみのことが好きなんだよ?
「おれは、本気になって欲しいんだけどな」
アリエルの顔が近づいてくる。
なんなの? いい匂いがする。
これ、アリエルの匂い?
わからない、どうしたらいいの!?
心臓がドキドキで壊れそう。
胸がキューッとなって、苦しいよ……。
「リップ」
目の前のアリエルが、ぼくの名をささやく。
これ、もしかして、キスしようとしてるの!?
ぼくはやっと気がついた。
え? おそいくらい?
ど、どうしよう!?
ホントにわからないんだ。
でも、すごく嬉しい。
キス……してほしい。
自然とぼくは、まぶたを閉じていた。
これ、夢なのかな?
夢……なんだよね?
だったら、いいよね……。
唇に、やわらかなものがくっついてくる。
そっと薄眼を開けると、思った通りのことになっていた。
アリエルの顔が、ぼくにくっついている。
幸せだな。
そう、思った。
ぼくは目を閉じなおし、アリエルの身体そっと腕をまわして、ふわふわした光に包まれるような感覚の中で、彼のキスだけにココロを集中させた。
寮の自分の部屋で目をさまし、肌寒さにげんなりしながらも着替を終えたぼくは、寮の食堂に移動する。
今日から三日間は国の休日で、学院も休み。
三日間の短い休みでぼくが故郷に帰ることはないけれど、王都に家がある子たちは実家に帰る人もいるみたいで、今朝は食堂に来ている寮生は少なかった。
朝食をとって、自分の部屋に戻って勉強をする。
アリエル、なにしてるんだろうな……。
アリエルも用事があって、今日から三日間は実家に帰っているらしい。
昨日の放課後。ふたりで寮へと移動しているとき、
「リップは明日、どうするの? 街に出かける予定はないよな」
アリエルが聞いてきた。
なんでそんなこと気にするんだろう。
「うーん……ないと思うよ? なんで?」
「いや、ないならいいんだ」
とはいったんだけど、ぼくがアリエルのことを考えて少しだけぽーっとしている時間を楽しんでいると、
「リップ・ヘルトくん、いる?」
寮で働いているおばさんの一人が、
「街の配達屋に領主さまからぼく宛の荷物が届いているから、はやめに取りに行くように」
と教えてくれた。
領主さまからの荷物。なんだろう?
領主さまはときどき、食べ物やお金を送ってくれることがある。ぼくのことを気にかけてくれているんだと思うと嬉かったけど、学院に通わせてもらっているだけで十分良くしてもらっているから、申し訳なくもあった。
おばさん、はやめに取りにいくようにっていってたよな。
だったら今から取りに行こう。
ぼくは領主さまからの荷物を、街の配達屋まで取りに出ることにした。
学院の寮から配達屋のある街の中心までは歩いて30分ほどで、手間というほど手間じゃない。
ぼくはカバンとサイフを持って街へと出る。
今日は冷えるな。もう日が真上に昇っている時間なのに、肌寒いままだ。息が白くなるほどじゃないけど、この感じだとあと数日もしたら白い息の季節になっちゃうのかもしれない。
ぼくの故郷があるチルラ領は比較的暖かな土地で、この時期に肌寒くなるほど冷えることはないから、ぼくはまだ暖かな服の準備をしていなかった。
というかぼくは、服を買えるほど裕福じゃない。
寒い。
震えながら配達屋に行くと、領主さまが何着かの冬服を送ってくれていた。
同封されていた手紙には、領主さまも王都で暮らしていたことがあって、冬は寒さに苦労したと書いてあった。
なので風邪を引くと勉学に支障が出て困るので、服を送ると。領主さまは、本当にお優しいかただ。
早速送ってもらった一着の上着を着てみたけど、少し大きいかな?
それにこの服、女性物っぽく思えるんだけど。もしかしたら、領主さまのお古なのかも。
でもあったかい。ありがとうございます、領主さま。寮に帰ったらお礼の手紙書かないと。
服を着て温まり気持ちに余裕ができたぼくは、「寒いしはやく帰ろう」から「せっかく街まできたんだから少し買い物をしてから帰ろう」に気持ちが変化していた。
とりあえず商店街に向かって足を進めていると、そこかしこからどんどん人が集まってくる。
なにかあるのかな?
街の声に耳をすませてみると、どうやら今日は「第六王子のエルヴィンさま」という人の誕生日で、もうすぐ王子さまが街に姿を表すらしい。
そしてお菓子が振るまわれるとかで、子どもたちがはしゃいでいる。
王子さまね。
王都に住んでいるわけでもない庶民が王族を目にするなんて、一生で一度あるかないかだ。
せっかくだから、その第六王子を見ておこう。記念になるし、あとでアリエルに自慢してやろう。
そんな軽い気持ちだった。
だから騎士に守られながら馬に乗って現れた王子に、ぼくは驚愕した。
その第六王子のエルヴィンさまは、どこをどう見てもアリエルだったから。
「アリ……エル?」
馬上の王子も、ぼくを見て目を見開いた。
完全に、ぼくに気がついている。
でも彼はすぐにぼくから視線をそらし、周りの人たちに手を振りながら、馬に乗って進んでいった。
二日後の夕方。
学院に戻ってきたアリエルは、会うなりぼくを自分の寮室へとさそった。
外は寒かったのに、アリエルの部屋は暖かい。たぶん、温度系の魔術が施されているんだな。さすがは最上級の寮室だ。
リビングに通されたぼくは、領主さまからもらった冬物上着をハンガーにかけて吊るし、最近ではぼくの指定席となっているソファーに座った。
アリエルは、いつもはテーブルを挟んでぼくとは対面のソファーに座るんだけど、なぜか今日はぼくの左隣に座ってきた。
隣り合うぼくたち、お互いの体温を感じられるほどの近くで。
「知られたくなかったんだ」
アリエルはそういった。
「アリエルは、本当に王子さまだったんだね」
「本当に?」
「初めて見たとき、王子さまみたいな人だなって思ったから」
なんだろう。急にアリエルが遠い場所の人のように思えた。
当たり前か、王子さまなんだから。
だけど第六王子とはいえ、平民のぼくが自国の王子の顔を知らないのは、そこまで変なことじゃない。平民にとって王族の姿は、姿絵などを見てやっとわかるものだから。
「おれはきみを初めて見たとき、女の子だと思ったよ。男子の制服を着てたのに」
ぼく、女の子に間違われるんだよな。確かに童顔だけど、自分ではそこまで女の子顔してないと思うんだけど。
「しょうがないよ。昔からぼく、女の子にまちがわれるんだ」
なんの話だ?
ぼくが女の子みたいに見えるなんて、そんなの関係ないだろ。
今の話題は、アリエルが王子さまだったってことでしょ?
「アリエルは王子さまだってこと、学院では隠してるんだよね」
そのくらいは、ぼくにもわかる。
「そうだ。知っている者もいるが、黙っていてもらっている」
ふーん。
「なんで?」
想像はつくけど。同級生に王子さまがいると、学院生活に不自由が出てくる生徒もいるだろうから気を使ったとか、そんな理由でしょ?
「学院内でおれがこの国の王子だと知られるほうが、いろいろと不便がおおいからだ。気軽に話しかけてくれる人が少なくなるだろうし、そもそもおれが王子だと知っていたら、リップは友達になってくれたか?」
そう……だね。
「……王子さまだと知ってたら、どうだったんだろうね?」
確かに王子さまともなると、平民のぼくは気軽に話せないよ。
「ほら、やはり隠しておいて正解だった」
アリエルが王子さまだった。
それにはビックリだけど、でもぼくは「第六王子のエルヴィンさま」のことは知らないけど、「友達のアリエル」のことは知っている。
それに王子とかそういうのじゃなくて、アリエル……ぼくは「きみ」に「恋」をしているんだ。
どうせ叶わない恋なんだから、その相手の正体が王子さまだったからといってあまりかわらない。だからきみが王子だろうとなんだろうとかまわいよ。
叶わない恋に、なんのかわりもない。
ぼくは一つ深呼吸をして、
「ぼくはこのまま、アリエルの友達でいいんだよね?」
まっすぐに彼を見ていった。
「あ、あぁ、もちろんだ。当たり前だろ、リップ」
嬉しそうな顔だね。ぼくも嬉しいよ。
お互いに笑顔で、それぞれの顔を見る。
だけどアリエルは急に真面目な顔して、
「リップは……可愛いな」
ぼくの手を握った。
温かく、大きな手だ。ぼくと比べたらだけど。
ギュと、握られる手。
無言で、でもぼくを見つめるアリエル。ぼくの目はその視線から、逃げることができない。
ドキドキするから、やめてもらえないかな。
本音ではやめてほしくないけど、友達……なんでしょ?
友達は、手をつないで見つめあったりしないと思う。
急にどうしたの、アリエル。
なんでそんなに、ぼくを見つめてくるの……?
恥ずかしいん……だけど。
そんな「女の子を見るような目」で、ぼくを見ないでよ。
胸の苦しみと、なぜだろう? 悪いことをしているという気持ちに、ぼくはアリエルの視線から自分の視線を、必死の思いで逃した。
「……ぼ、ぼく。男の子だよ?」
「知ってる」
知ってるんなら、やめてよ。
「嫌かい?」
静かに響くアリエルの声。
いやじゃない。
「いやじゃないから、困ってるんだけど……」
はっきり伝えたほうがいいのかな?
ぼくはアリエルの視線に、自分の視線を戻す。
彼はさっきと変わらないまま、ぼくを見つめていた。
「そんなに見つめないでよ。可愛いなんて、いわないで……」
うそだ。
見つめられてドキドキする。
可愛いっていってもらえて、本当は嬉しい。
「そんなこというと、ぼく……本気になっちゃうよ?」
ぼくの、アリエルへの気持ち。
アリエルは王子さまだから、平民のぼくは彼に釣り合わない。
こうして一緒にいられるだけで、満足するべきなんだ。
そんなのわかってるけど、でも、ココロが納得してくれない。
この夢がもっと長く。本当はずっと続きますようにって、そう……願ってしまう。
どうしたの? アリエル。
なんでそんなに、真面目な顔でぼくを見つめるの?
期待していいの?
ぼく、本当に……。
きみのことが好きなんだよ?
「おれは、本気になって欲しいんだけどな」
アリエルの顔が近づいてくる。
なんなの? いい匂いがする。
これ、アリエルの匂い?
わからない、どうしたらいいの!?
心臓がドキドキで壊れそう。
胸がキューッとなって、苦しいよ……。
「リップ」
目の前のアリエルが、ぼくの名をささやく。
これ、もしかして、キスしようとしてるの!?
ぼくはやっと気がついた。
え? おそいくらい?
ど、どうしよう!?
ホントにわからないんだ。
でも、すごく嬉しい。
キス……してほしい。
自然とぼくは、まぶたを閉じていた。
これ、夢なのかな?
夢……なんだよね?
だったら、いいよね……。
唇に、やわらかなものがくっついてくる。
そっと薄眼を開けると、思った通りのことになっていた。
アリエルの顔が、ぼくにくっついている。
幸せだな。
そう、思った。
ぼくは目を閉じなおし、アリエルの身体そっと腕をまわして、ふわふわした光に包まれるような感覚の中で、彼のキスだけにココロを集中させた。
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