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第三章「アイドルグループ アサガオ組ドッキリ企画 アイドルが下着泥棒に狙われたら?」
「アイドルグループ、名場面珍場面、◯秘ハプニング大賞」」
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ドッキリ企画のロケから、1ヶ月後。
アサガオ組の赤島ナギサと御上エリカは、真っ青な顔でスタジオ収録に臨んでいる。
あのあとも、休みなく仕事に奔走していた二人は原因不明の吐き気に襲われており、不調を自覚しているところである。
そして、生理が遅れていること。
このドッキリは、極悪企画で知られていること。
凄まじく悪い予感でいっぱいであった。
二人の番が来て、スタジオに入ると万雷の拍手に迎えられた。
いやらしそうに笑う司会者が言う。
「どうも、アサガオ組の赤島ナギサと御上エリカさんのお二人です」
二人は、言葉少なにお辞儀した。
真っ青な顔をしている。
「もうわかってると思いますが、妊娠検査薬を持ってお二人でトイレのほうでチェックしてください」
二人で、運ばれてきた洋式トイレにまたがり、ナギサはじょわわわっと、エリカはショワワワッと音を立ててことを終えた。
男性アナウンサーが、カメラを引き連れて二人のところまで行く。
「さて、結果はいかがでしょう。赤島ナギサさん、陽性! 御上エリカさん、陽性! 見事に妊娠しております!」
スタジオで大きな拍手があがった。
司会者は、近くのエリカにまず「今のお気持ちはいかがですか」とマイクを向ける。
すると、バターンとその場にエリカが倒れた。
「エリカ!」
ナギサが、慌てて抱き起こして気絶したエリカを助ける。
「おおっと、エリカさん。喜びのあまりでしょうか、感極まって気絶してしまいました」
この上、ナギサにも倒れられては企画が倒れると司会者は慌てて、客席の方に声をかける。
「お二人の父親は、そこの井上正一郎さんだそうです。井上さんは、たしかプッ、エロカッパと呼ばれていてアサガオ組の会員番号3番の大ファンだとか。今回の権利をCDを十万枚買って手に入れたそうです。皆さん拍手」
エロガッパというあだ名は、明らかに頭頂部が宣教師のザビエルのようにはげているからであろう。
こんなのが見目麗しいアイドルの父親かと、好奇の目にさらされながら、ふたたび二人に残酷な拍手の音が降り注いだ。
「さて、ナギサさん。お二人のお腹の中にいるお子さんは、これほどの大ファンの大事な大事な子供ということになりますが、今後はどのようにされるべきでしょうか。やはり、出産なされますか」
真っ青な顔をしたナギサは「エリカとゆっくり考えたいと思います」と、声を絞り出すのに精一杯だった。
「もし、出産されるなら事務所サイドは妊婦アイドルとしてライブも考えているそうですよ。アサガオ組のさらなる活躍を期待しております。もう一度大きな拍手をどうぞ」
司会者がそう言って、ナギサはようやくエリカを引きずってステージをあとにした。
この番組の他の新人女子アナや、アイドルたちもみんな、それなりにセクハラを受けているが、二人ほど酷い目にはあっていない。
エリカの炎上騒ぎもあったが、その前から人気が伸び悩んでいた。
露骨なエロ売りに走ったものの、それでもアイドルグループ「アサガオ組」はジリ貧状態にあった。
つまり、売り出しに困った事務所は、ナギサ達を見限ったのだ。
最後に、こうして大きなニュースで派手に売上を出そうという腹だろう。
そして契約上、ナギサたちに断る権利はない。
これが、昭和99年の世界の残酷さだ。
お互いに明日は我が身かもしれないと思いながら、テレビという薄氷を踏むがごとき際どい舞台で、アイドルたちはしのぎを削るのだった。
アサガオ組の赤島ナギサと御上エリカは、真っ青な顔でスタジオ収録に臨んでいる。
あのあとも、休みなく仕事に奔走していた二人は原因不明の吐き気に襲われており、不調を自覚しているところである。
そして、生理が遅れていること。
このドッキリは、極悪企画で知られていること。
凄まじく悪い予感でいっぱいであった。
二人の番が来て、スタジオに入ると万雷の拍手に迎えられた。
いやらしそうに笑う司会者が言う。
「どうも、アサガオ組の赤島ナギサと御上エリカさんのお二人です」
二人は、言葉少なにお辞儀した。
真っ青な顔をしている。
「もうわかってると思いますが、妊娠検査薬を持ってお二人でトイレのほうでチェックしてください」
二人で、運ばれてきた洋式トイレにまたがり、ナギサはじょわわわっと、エリカはショワワワッと音を立ててことを終えた。
男性アナウンサーが、カメラを引き連れて二人のところまで行く。
「さて、結果はいかがでしょう。赤島ナギサさん、陽性! 御上エリカさん、陽性! 見事に妊娠しております!」
スタジオで大きな拍手があがった。
司会者は、近くのエリカにまず「今のお気持ちはいかがですか」とマイクを向ける。
すると、バターンとその場にエリカが倒れた。
「エリカ!」
ナギサが、慌てて抱き起こして気絶したエリカを助ける。
「おおっと、エリカさん。喜びのあまりでしょうか、感極まって気絶してしまいました」
この上、ナギサにも倒れられては企画が倒れると司会者は慌てて、客席の方に声をかける。
「お二人の父親は、そこの井上正一郎さんだそうです。井上さんは、たしかプッ、エロカッパと呼ばれていてアサガオ組の会員番号3番の大ファンだとか。今回の権利をCDを十万枚買って手に入れたそうです。皆さん拍手」
エロガッパというあだ名は、明らかに頭頂部が宣教師のザビエルのようにはげているからであろう。
こんなのが見目麗しいアイドルの父親かと、好奇の目にさらされながら、ふたたび二人に残酷な拍手の音が降り注いだ。
「さて、ナギサさん。お二人のお腹の中にいるお子さんは、これほどの大ファンの大事な大事な子供ということになりますが、今後はどのようにされるべきでしょうか。やはり、出産なされますか」
真っ青な顔をしたナギサは「エリカとゆっくり考えたいと思います」と、声を絞り出すのに精一杯だった。
「もし、出産されるなら事務所サイドは妊婦アイドルとしてライブも考えているそうですよ。アサガオ組のさらなる活躍を期待しております。もう一度大きな拍手をどうぞ」
司会者がそう言って、ナギサはようやくエリカを引きずってステージをあとにした。
この番組の他の新人女子アナや、アイドルたちもみんな、それなりにセクハラを受けているが、二人ほど酷い目にはあっていない。
エリカの炎上騒ぎもあったが、その前から人気が伸び悩んでいた。
露骨なエロ売りに走ったものの、それでもアイドルグループ「アサガオ組」はジリ貧状態にあった。
つまり、売り出しに困った事務所は、ナギサ達を見限ったのだ。
最後に、こうして大きなニュースで派手に売上を出そうという腹だろう。
そして契約上、ナギサたちに断る権利はない。
これが、昭和99年の世界の残酷さだ。
お互いに明日は我が身かもしれないと思いながら、テレビという薄氷を踏むがごとき際どい舞台で、アイドルたちはしのぎを削るのだった。
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