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第三章
お披露目
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夜会の翌日、城下町は平民達で溢れかえっていた。
夜会に参加できない民達は、昼に行われる王家の挨拶と、次期皇帝とその妃を一目見ようと、王城の周囲に集まっていたのだった。
それぞれの手には青い花が握られており、待ちに待った精霊の導きを喜んでいた。
いつも以上に人でごった返す街だったが、誰も怒鳴ったり喧嘩をする者はいなかった。それどころか、道を譲り合い、知らない者同士が握手を交わし、皆が笑顔だった。
わぁっ!
歓声が上がり、皇帝達が王城のバルコニーに出てきた。
マーガレットが手を振ったその時、優しい風が吹いた。決して強い風ではなかったのだが、民達の持つ青い花が空に舞ったのだ。
その不思議な光景を目の当たりにした民達は、感激していた。
(こんなに歓迎してくれるだなんて、みんな優しいのね)
民達が一斉に花を投げたのだと思ったマーガレットは、自分を受け入れてくれた事に感激していたのだった。
それからというもの、シルベスタ帝国では大きな変化があった。
ケナード領からの旅行者が劇的に増えたのだ。商人や学者、職人や農民まで、様々な知識と経験を持った者達が、マーガレットを訪れた。
マーガレットは領民達に再び会えた事が嬉しかった。色んな話をしたり、買い物をしたり、城内にある庭園の手入れも一緒に行った。
初めは戸惑っていた王城の者達だったが、次第に参加するようになっていた。彼らの知識は目を見張るものがあったのだ。
滞在中には自分達の仕事や本領を発揮する彼らのお陰で、シルベスタは豊かになっていった。
マーガレットは皆で何かをする事が楽しくて、シルベスタでもケナード領と同様に過ごしていた。だが、他の者達はマーガレットに関心していたのだった。
(精霊の導きというのは、帝国も導いてくれるのか!)
皇太子妃教育の合間に領民達と過ごすマーガレットを見たギルバートは、ケナード領での日々を思い出していた。
(マーガレット嬢は何処にいても変わらないな)
「あ、ギジル!」
農民の一人がギルバートに気が付いて手を振った。
「馬鹿!ギルバート皇太子殿下だろっ!」
「あ…そうだった…」
青くなった農民に、ギルバートは笑って答えた。
「構わないよ。私はあの時はギジルだったのだからね」
ギルバートはマーガレット達に加わり、あの頃のように皆で楽しく会話をするのだった。
その日の夜、マーガレットとギルバートは星を見ながら話をしていた。
「ギル、私は幸せ者ね。みんなが私を訪ねてくれるだなんて…それに、この国の人達もみんな良い方ばかりだわ」
「それはマーガレット嬢だから成し得た事だよ。私も、君だから好きになったんだ」
「私にも真実の愛を見つけることが出来て良かったわ」
「私に精霊の導きがあって良かったよ」
二人は手を取り合って星を眺めていたのだが、三匹の動物達が二人の間に割って入ってきた。
「まぁ、何処から入ってきたのかしら?」
パッと手を放し、動物達を撫でたマーガレットだったが、ギルバートはある人物を思い出していた。
(この邪魔をしてくる感じは、ビクトール殿を思い出すな…)
「ねぇ、ギル?」
スコッグを撫でながらマーガレットがギルバートを呼んだ。
「なんだい?」
「いつになったら私のことをメグと呼んでくれるのかしら…?私だけなんて、なんだか寂しいわ…」
マーガレットはメグと呼んでくれるビクトールもスザンヌも居なくて、寂しいと思っていたのだ。
「メ…メグ…」
ギルバートの足をガシガシとハーヴが囓っていたが、気付かずにマーガレットを見つめていた。
「お父様達以外に初めて呼ばれたわ。なんだか照れてしまうわね」
マーガレットは恥ずかしくなってスコッグに顔を埋めたのだが、スコッグは得意気な顔でギルバートを見た。
(何故かビクトール殿に見える…)
ハックションッ!
「メグが私の話でもしているのかな?」
大きなくしゃみをしたビクトールは、嬉しそうにクロードに話していたのだった。
夜会に参加できない民達は、昼に行われる王家の挨拶と、次期皇帝とその妃を一目見ようと、王城の周囲に集まっていたのだった。
それぞれの手には青い花が握られており、待ちに待った精霊の導きを喜んでいた。
いつも以上に人でごった返す街だったが、誰も怒鳴ったり喧嘩をする者はいなかった。それどころか、道を譲り合い、知らない者同士が握手を交わし、皆が笑顔だった。
わぁっ!
歓声が上がり、皇帝達が王城のバルコニーに出てきた。
マーガレットが手を振ったその時、優しい風が吹いた。決して強い風ではなかったのだが、民達の持つ青い花が空に舞ったのだ。
その不思議な光景を目の当たりにした民達は、感激していた。
(こんなに歓迎してくれるだなんて、みんな優しいのね)
民達が一斉に花を投げたのだと思ったマーガレットは、自分を受け入れてくれた事に感激していたのだった。
それからというもの、シルベスタ帝国では大きな変化があった。
ケナード領からの旅行者が劇的に増えたのだ。商人や学者、職人や農民まで、様々な知識と経験を持った者達が、マーガレットを訪れた。
マーガレットは領民達に再び会えた事が嬉しかった。色んな話をしたり、買い物をしたり、城内にある庭園の手入れも一緒に行った。
初めは戸惑っていた王城の者達だったが、次第に参加するようになっていた。彼らの知識は目を見張るものがあったのだ。
滞在中には自分達の仕事や本領を発揮する彼らのお陰で、シルベスタは豊かになっていった。
マーガレットは皆で何かをする事が楽しくて、シルベスタでもケナード領と同様に過ごしていた。だが、他の者達はマーガレットに関心していたのだった。
(精霊の導きというのは、帝国も導いてくれるのか!)
皇太子妃教育の合間に領民達と過ごすマーガレットを見たギルバートは、ケナード領での日々を思い出していた。
(マーガレット嬢は何処にいても変わらないな)
「あ、ギジル!」
農民の一人がギルバートに気が付いて手を振った。
「馬鹿!ギルバート皇太子殿下だろっ!」
「あ…そうだった…」
青くなった農民に、ギルバートは笑って答えた。
「構わないよ。私はあの時はギジルだったのだからね」
ギルバートはマーガレット達に加わり、あの頃のように皆で楽しく会話をするのだった。
その日の夜、マーガレットとギルバートは星を見ながら話をしていた。
「ギル、私は幸せ者ね。みんなが私を訪ねてくれるだなんて…それに、この国の人達もみんな良い方ばかりだわ」
「それはマーガレット嬢だから成し得た事だよ。私も、君だから好きになったんだ」
「私にも真実の愛を見つけることが出来て良かったわ」
「私に精霊の導きがあって良かったよ」
二人は手を取り合って星を眺めていたのだが、三匹の動物達が二人の間に割って入ってきた。
「まぁ、何処から入ってきたのかしら?」
パッと手を放し、動物達を撫でたマーガレットだったが、ギルバートはある人物を思い出していた。
(この邪魔をしてくる感じは、ビクトール殿を思い出すな…)
「ねぇ、ギル?」
スコッグを撫でながらマーガレットがギルバートを呼んだ。
「なんだい?」
「いつになったら私のことをメグと呼んでくれるのかしら…?私だけなんて、なんだか寂しいわ…」
マーガレットはメグと呼んでくれるビクトールもスザンヌも居なくて、寂しいと思っていたのだ。
「メ…メグ…」
ギルバートの足をガシガシとハーヴが囓っていたが、気付かずにマーガレットを見つめていた。
「お父様達以外に初めて呼ばれたわ。なんだか照れてしまうわね」
マーガレットは恥ずかしくなってスコッグに顔を埋めたのだが、スコッグは得意気な顔でギルバートを見た。
(何故かビクトール殿に見える…)
ハックションッ!
「メグが私の話でもしているのかな?」
大きなくしゃみをしたビクトールは、嬉しそうにクロードに話していたのだった。
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