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二十、もう戻れない
どこで、何を、間違ったのだろう。
彩恵の傘に入らなかったら、参考書を取りに帰らなかったら。転んだあの日、彼女の手を取らなかったら。
体が裏返るのかというぐらい吐いた。胃の中が空っぽになっても嘔気くだけになっても、吐き気が収まらない。
それでも、もう、戻れない。
してしまったことは消えない。
全てを話したら、あの人は翔を許してくれるだろうか。
けれど、この事実は彩恵を深く傷つけるだろう。だって、この絵を全部描いたのは、ほかの誰でもでもない尊なのだ。
そんなことを考えながら襖を開けたら、怯えたような目が向けられた。
尊の為に選ばれたワンピース。逃げる様に浮いた腰。
その姿を見た時、必死で自分を繋ぎ止めていた何かが弾け飛んだ気がした。
ああ、やっぱり僕じゃだめなんだ。
ほんの僅かな期待。ここまできてもまだ、彩恵が自分を受け入れてくれるという、甘ったれた夢を見ていたのだ。
「そんなに僕のことが、いやですか」
力の限りに引き寄せたら、湯上りの肌から花のような香りが立ち上る。あのハンカチとは比べ物にならない、甘やかな彩恵の香り。大きく息を吸ったらもう、頭の中が沸騰しそうだった。たまらず、その首筋に口づける。
ふと、こんなことを考えた。
好きでもない男に抱かれるのと、愛した男に裏切られるのと、一体どちらが辛いだろう、と。
何も知らない方が、きっといい。どうせ僕は選ばれなかった側だ。
「あなたは今日、僕に抱かれるんですよ」
もう、自分の止め方が分からなかった。着物と違って、ワンピースは簡単に脱がせることができる。何も覆うものが無くなった女の肢体が、ぼんやりと白く浮かび上がる。
しまっておいた分だけ大きくなった思いが、罪悪感が、その全てがぐちゃぐちゃに混ざり合って、ただ彩恵の元に収束する。
はじめて、女の秘所を見た。
味わう感覚に体が夢中になる。翔の指で、舌で、彩恵の体は淫らに跳ねる。たとえ相手が翔であっても、彩恵はこうして感じてくれる。
「ずっと、こうしたかったんです」
想像の中の彼女とは全く違う。その熱さが、蕩けるような柔らかさが、翔を捕らえて離さない。引き攣るほどに己が高まっていく。
「彩恵」
そう名を呼んだ声が、びっくりするほど兄に似ていてたまらなく嫌になった。どんなに疎んじても、この身には同じ血が流れている。
貫いてしまった彼女の泥濘に溺れていく。笑ってしまうぐらい、兄の言った通りだった。彩恵は乱暴に突き上げるほどに、いい声で鳴く。
「みっともないな」
誰より、何より、自分自身が。
粘膜を擦り上げる度に、翔のどこかが昏く死んでいく。それでも腰を止めることができない。吸い寄せられるように何度も、打ち付けてしまう。
彩恵の傘に入らなかったら、参考書を取りに帰らなかったら。転んだあの日、彼女の手を取らなかったら。
体が裏返るのかというぐらい吐いた。胃の中が空っぽになっても嘔気くだけになっても、吐き気が収まらない。
それでも、もう、戻れない。
してしまったことは消えない。
全てを話したら、あの人は翔を許してくれるだろうか。
けれど、この事実は彩恵を深く傷つけるだろう。だって、この絵を全部描いたのは、ほかの誰でもでもない尊なのだ。
そんなことを考えながら襖を開けたら、怯えたような目が向けられた。
尊の為に選ばれたワンピース。逃げる様に浮いた腰。
その姿を見た時、必死で自分を繋ぎ止めていた何かが弾け飛んだ気がした。
ああ、やっぱり僕じゃだめなんだ。
ほんの僅かな期待。ここまできてもまだ、彩恵が自分を受け入れてくれるという、甘ったれた夢を見ていたのだ。
「そんなに僕のことが、いやですか」
力の限りに引き寄せたら、湯上りの肌から花のような香りが立ち上る。あのハンカチとは比べ物にならない、甘やかな彩恵の香り。大きく息を吸ったらもう、頭の中が沸騰しそうだった。たまらず、その首筋に口づける。
ふと、こんなことを考えた。
好きでもない男に抱かれるのと、愛した男に裏切られるのと、一体どちらが辛いだろう、と。
何も知らない方が、きっといい。どうせ僕は選ばれなかった側だ。
「あなたは今日、僕に抱かれるんですよ」
もう、自分の止め方が分からなかった。着物と違って、ワンピースは簡単に脱がせることができる。何も覆うものが無くなった女の肢体が、ぼんやりと白く浮かび上がる。
しまっておいた分だけ大きくなった思いが、罪悪感が、その全てがぐちゃぐちゃに混ざり合って、ただ彩恵の元に収束する。
はじめて、女の秘所を見た。
味わう感覚に体が夢中になる。翔の指で、舌で、彩恵の体は淫らに跳ねる。たとえ相手が翔であっても、彩恵はこうして感じてくれる。
「ずっと、こうしたかったんです」
想像の中の彼女とは全く違う。その熱さが、蕩けるような柔らかさが、翔を捕らえて離さない。引き攣るほどに己が高まっていく。
「彩恵」
そう名を呼んだ声が、びっくりするほど兄に似ていてたまらなく嫌になった。どんなに疎んじても、この身には同じ血が流れている。
貫いてしまった彼女の泥濘に溺れていく。笑ってしまうぐらい、兄の言った通りだった。彩恵は乱暴に突き上げるほどに、いい声で鳴く。
「みっともないな」
誰より、何より、自分自身が。
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