上 下
16 / 29

第16話 バーベキューと勇者求

しおりを挟む
ミリーという少女は意識が戻ったようだ
「・・・。どうしてミリーのこと助けてくれるの? それより小瓶を・・・」
「小瓶?胸に下げているこれの事か?」

小瓶を手に持たせてやるとミリーは小瓶のフタを開けて匂いを嗅ぎ
小瓶の液体をひとなめした。
すると 俊敏な動きで飛び起きてウソのように復活した。

「復活!ミリーは ミリー・メソスティグマ!ショウスケ!一度は助けてもらったけど、でも あなたの命を頂くわ」と言って 
側にあった3m以上あるキノコに 蹴りを入れると一撃でキノコが折れて倒れた。

ドドドド! ドッスン!

風圧と共に押し寄せる巨大キノコにショウスケは危なく 下敷きになりそうになるが
キノコの傘の部分がうまい具合に隙間を作って助かった。

しかし その巨大なキノコがめきめきと音を立てて持ち上がる。
「なんて怪力なんだ」

傘が取れて棒状になったキノコの柱を持ち上げたミリーは 一気にそれを振り下ろしたが・・

ボキ!

キノコの真ん中あたりの部分がボッキリ折れた。

ドッスン!

ミリーは キノコの下敷きになってしまった。
「キュー キュー・・。」

ショウスケは キノコのところへ恐る恐る近寄ってみたがキノコの下敷きになってしまったのかミリーの姿は消えていた。
・・・・
ライラさんがキノコの森の中から帰ってきた。
さっそく ミリーという女の子の事を聞いてみるとライラさんは 考えるポーズを取ると語り始める
「メソスティグマとは 今は滅びた旧王族の名前です。 そしてミリーこそ王家の末娘の名前なのです。ですがエルフの寿命は長いとはいえ、生きていられる年齢ではありませんよ。ショウスケさんはその手のご冗談がお好きなんですね」

お酒サウナの酔がまだ残っていたのか?
その後も説明したけどライラさんは信じてくれなかった。
もしかしたら 通りすがりのエルフっ子のイタズラかもしれない
考えても仕方がないので ライラさんの狩りの獲物を見せてもらう事にした。

ライラさんはニッコリ微笑むと 森で収穫してきた食材を並べる
「お待たせしました ショウスケさん」
キノコ類のほかにお肉まで 取って来てくれたようだ。
「さすが エルフですね。キノコにお肉まで!」

ガネーシャたちも 帰ってきた
「ワレも 魚とエビを取ってきたぞ がははは」
かなりの食材が集まったな。
それなら バーベキューがいいだろう。


キノコにエビに 魚にお肉に 色々な食材が炭火で美味しく焼けていった。
ガネーシャが カレー粉のかかった海苔のようなものを焼いてくれた。
「ショウスケ これを食べるのだ がははは」
こんな食材あったっけ?

モグモグ ゴックン・・。

のどの奥でウネウネする感覚があった。
まさかこれは ビスナトの村で倒した魔獣じゃないのか?
「魔獣の死骸なのか?」

「さすが ショウスケじゃ グルメじゃのう」
「いいや 途中からウネウネの方が俺の胃に向かって進み始めてから 魔獣なんて食べても大丈夫なのか?」
「案ずるな 倒したお主ならば魔獣は従順、血肉となるであろう がははは」
血肉になるとしても それはそれで大丈夫なのか?

バーベキューのフィナーレはライラさんが森から取って来てくれた珍しい食材らしく
「これです」といって葉っぱにくるまれた包みをみんなに手渡した。
開けてみると 魚のすり身のような生肉だ。
ユッケやお寿司のような文化のある俺と言ってもひき肉を塊で見せられると抵抗がある。
すると ライラさんが「これは生のまま食べるのです」といって一口でペロリと食べて見せてくれた。
そして 次に食べてくれる人を探して周りを見渡す。
唯一食べられるとしたら俺くらいだろう。
でも 食べるのか?

「カレーに最高じゃ!」といってガネーシャはカレーに生肉を入れて煮込みだした。
ガネーシャが逃げた。
ライラさんが悲しそうになったぞ
「ショウスケさん・・」

すがるような目で見られると俺は食べないわけにはいかない
「うえぇぇ・・」
だけど 魔獣を食べた感覚がのどの奥に残っていて食べることが出来なかった。

仕方がないのでツクネを焼いて食べることになった。
それを見ていたリザリアが「ショウスケ 私はどうしたらいいのかしら?」と生肉を突き出してくるので二人でツクネを焼くことになってしまった。

「ライラさん 私はいただきます」
残されたクロレラはライラさんの気持ちを汲んで 手をブルブルと震わせながら最後まで食べ終わると
いつものダンスよりもキレのある動きで 体をクネクネと動かしていた。
「まあ クロレラさん 踊るほどおいしかったですか? 嬉しいです」

辺りが暗くなってきたころリザリアが キノコの傘を指さした
「見て!きれい・・」

キノコを見上げると 巨大なキノコの傘から光る胞子が降り始めている。
青白く光る胞子や緑色に光る胞子は そよ風に舞、どこか遠くへ飛ばされていくようだった。
美しさに見とれていると リザリアがビスナトの村で手に入れた「ナスビランタン」を持ってきて
両手に持つと虫取りのアミで 虫を捕まえるように胞子を捕まえはじめた。

「ショウスケ いっぱい集まったわよ」

二つのランタンには いっぱいの胞子が入り、炭火の明かりよりも明るく周囲を照らしていた。

ライラさんが思いついたようにショウスケのところへやってきた
「そうだショウスケさん トリデを探索する約束を覚えてますか?今行きましょう」
「今なのか?」
「ええ そうです。ランタンが二つありますし二人一組になって探索しましょう・・いいですよね?せっかくの生肉もツクネに代わってしまいましたし探索にいきましょう。でないと私は・・シクシク」


ライラさんの提案で二人一組になって 砦の奥の部屋まで行き
何でもいいので 証拠になりそうな遺物を拾ってくるという度胸試しをしようという話になった。
トリデだし暗い場所を探索するのは抵抗がある。
だけど生肉を食べなかった手前、断るわけにはいかないわけで行くことになった。

「カレーが好きなお化けがおるかもしれぬ 楽しいぞ、がはは」
ガネーシャは乗り気だったけどクロレラの方は「私は休んでいます」と言い出した。
クロレラは参加しなくてもいいだろう。
だけど 
ぶ~~~!!

と音がしてガネーシャが幼児退行を始めてクロレラも行くことに
「ガネーシャ様 仕方がないですね」
クロレラは ガネーシャに足裏のツボをマッサージさせ始めるとガネーシャは少しずつ復活していった。

「あの?・・逆なのでは??」
「ああ 気にしないでください」

ガネーシャとクロレラが一組になるとして問題は 俺と組むのは誰かということだ。
ライラさんとリザリアの視線は 早くも火花を散らせていた。

「ショウスケ 私はどうしたらいいのかしら? ねえ ショウスケ!」

「ショウスケさん 私と探索すると約束しましたよね。 それに苦労して見つけた生肉が・・シクシク」

どっち?!

「俺は・・・だ。」

俺の取り合いになった結果・・・俺が両手にランタンを持って一人で行くことになった。
「そうよね ショウスケには一人で行ってもらいましょうよ ねぇライラさん」
「そうですね。 残念ですが、選べないショウスケさんが悪いですよ? ねえ?」

そして 二人は仲良くなっていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,554pt お気に入り:3,510

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,667pt お気に入り:2,363

異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:16,466pt お気に入り:992

そんな拗らせた初恋の話

椿
BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:48

処理中です...