FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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 三人があげる嬌声に、春樹が赤くなって破顔した。
「いや、こんなに気に入られるとは――意外」
 女子に囲まれてだらだらと鼻の下を溶かす彼を、暖乃が褒めたたえる。
「本当、高木君てすてき。チョイスがいいよね。そこらのコンビニ菓子じゃないし。そういうところに女子は惚れちゃう」
 確実に一番可愛く見えると思っているであろう、とっておきの笑みを浮かべ、上目遣いで茶色い毛先がかかる瞳を見上げる。
「なんか、好感度上がった音してる?」
 春樹が誰に言うわけでもなく問いを投げる。でもみんなスルー。
 奈緒も晴信餅を見たがったが、三人が厚い壁になって、とりつくことができずにいた。
「あ、杏奈も食べて」春樹が声をかける。
「ありがとう」
 魚子たちが持ち寄った雑誌を選別していた杏奈が、虚を突かれてぴくりと反応してから、そう答えて続ける。
「気が利くよね、高木君。グルメだし」
「まさか」
「いつもなにか食べてる」
「B級ばかりだよ」
「いいなぁ、太らなくて」奈緒が羨望の眼差しを向けた。
「スポーツやってるもん」杏奈は答えて春樹を見る。「バスケ頑張ってね、応援してるから」
 アーモンドみたいな目をした顔が、ぱぁっっと華やいだ。早送りでつぼみが開くように。そして杏奈に対して右手を挙げてから「おう」と元気良く返事をしてリュクを背負いなおす。
 背を向けた春樹に、暖乃が声をかけた。
「今度、川崎か難波の差し入れ期待してるから、よろしくー♥️」
「分かった、探しとく」
 春樹はそう答えて部活へと戻って行った。
 彼が出て行ってからしばらく無言だったが、廊下の気配がなくなるとすぐさま暖乃が口を開く。
「ほんとやんなっちゃう」鼻で笑って「でも楽勝。動揺すごい。なんか高木君、自分が格好いいって思ってるよね。好感度が上がった音がしたって、バカじゃん? 下がってんの。わたし、ヒップホップ系が好き。高木君顔いいけど普通。モテ期今だけだと思うよ、きっと」
 さっきとは打って変わって辛辣にこき下ろすと、魚子、かおり、杏奈の三人は、その話に輪をかけるように笑う。
 四人の変貌ぶりに、奈緒はリスみたいな瞳をまあるくするしかなかった。


作画:緒方宗谷

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