あはれの継続

宮島永劫

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平成十七年 修学旅行

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大好きなしんちゃんへ

 しんちゃん、元気にしているかい?
 僕は元気だけど、しんちゃんといるときよりは元気がないよ。
 あのね、この前の火曜日から木曜日、学校の修学旅行で京都に行ったんだ。一班五人で一緒に京都市内を観光するんだ。班決めの時、僕は相変わらず意気地なしで『一緒の班になろう』ってお願いが出来ず、最後まで一人ぼっち、どうしていいか分からず、結局、幼馴染のさくらちゃんのいる班に入れてもらったんだ。同じクラスにしんちゃんがいてくれたらいいのにっていつも思うんだ。
 見学するところを決める話し合いで、さくらちゃんが金閣寺に行きたいって言ったからついでに近くにある龍安寺、仁和寺に行きたいって言ったんだよ。僕が珍しく発言したんだよ。
 龍安寺はお庭がきれいだよ
 仁和寺には愉快で豊かな和尚さんがいたんだよ、ご先祖様と仲良しだったんだよ
って、しんちゃんが教えてくれたからさ。いいよ、行こうよって班のみんなに言われて嬉しかったよ。
 修学旅行の二日目に金閣寺、龍安寺、仁和寺の順番で見学したんだ。「きぬかけのみち」って名前の散策路なんだけど三つの世界遺産を巡る2.5キロの観光道路なんだ。たくさんの観光客が歩いていたよ。海外から来た人が多くてびっくりさ。小さな僕を見て笑うんだよ。こっそり写真を撮られたよ、困っちゃうよ。
 金閣寺はキラキラしてたよ。室町時代の足利義満って人はすごいね。建物全体を金ぴかにするなんて思いもよらないよね。観光客がたくさんいて写真を撮っていたよ。
 龍安寺は静かなお寺だったよ。有名な石庭はしんちゃんが教えてくれた通り、きれいだったよ。おじいちゃんの屋敷のお庭も山田寺もきれいな白砂だよね。しんちゃんがお手伝いしてきれいにしているんだよね。びっくりしちゃうよ。僕は白砂のきれいな波の模様の上を歩くのが好きだったけど、悪いことしちゃったな。
 仁和寺は大きくて広くて驚きさ。入り口の二王門が凄いんだよ。両脇に金剛力士像が安置されているんだけど、不思議としんちゃんに似ているんだ。怖いんだけど、なんだか似てるのさ。本当に不思議だよ。怖いけど優しいのかな? 立っていてくれると安心っていう感じかな。しんちゃんもいてくれるだけで僕はとても安心するもんね。中に入って行くと不思議なことに懐かしかったんだ。僕は初めて来たのに、初めてじゃないような気がしたんだ。僕らの先祖が仁和寺と交流があったってことをしんちゃんから聞いていたからかな? それに塾でも習ったんだ、『徒然草』の仁和寺の法師の話さ。僕はいつの間にか笑っていたよ、自分でびっくりしたよ。
昔はお坊さんがいっぱいいたのかな? しんちゃんから聞いていたお坊さんはいなかったよ。会いたかったけど会えなかったよ。修学旅行に行く前に調査したんだけど、いっぱい宝物がありそうだよ。皇族との関わりがあって、美術品が多いんだ。ふすまをHPで見たけど山田寺の襖絵に似ていたよ。
 どのお寺も立派だったけど、山田村の山田寺は結構、凄いんだね。誰も見に来ないけど見たらみんな驚くんじゃないかな? 仁和寺と同じくらい、それよりももっと前の建物なんだよね。仁和寺の金堂が寛永年間(1624~43)に移築とHPに書いてあったよ。山田寺や雷山神社は僕らの先祖が山田村に定着してから建てたのだから、もっと古いんだよね。僕らのご先祖は本当に凄いね。
 僕はスケッチをしたよ。下手くそだけど、しんちゃんみたいに描きたくなったのさ。仁和寺は僕を絵描きにしたよ、不思議だね。絵師が多かったって聞いてたからかな。さくらちゃんはうまいって褒めてくれたよ。
 今回の修学旅行で僕らの先祖と関係がある仁和寺に行けてよかったよ。しんちゃんと一緒だったらもっと良かったのにね。僕らの先祖のようにね。
 僕は日本の歴史を勉強しているんだ。塾だけじゃ物足りなくて自分でも勉強しているんだ。図書館で『奥深い日本の歴史』『ご機嫌な日本史』とか借りて読んでいるんだ。僕はなんとなく歴史に惹かれるんだ。歴史を知れば知るほど自分のことがもっと分かるような気がするんだ。しんちゃんやおじいちゃん、お父さん、桐間さんの言う『ずっと一緒』の意味がもっと分かる気がするんだ。
 
 いつか一緒に行こうね。
 この手紙と一緒にお土産の『たべよ』を送るよ。しんちゃん、食べてね。

よっちゃんより



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