うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第2章 学園入学編

従話 ポチの右腕(2)

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 拙者の名はアドラン。殿の右腕でござる。ん? 自称じゃないでござるよ!

 さて、実は今とても困った事が起きているでござる。発端は昨日、拙者の配下であるシルクからの【念話】が届いた事だったでござる。


 ☆


〈アド! アド! 大変大変! 大変だよ!〉

 拙者が新しい階層の探索をしていたらシルクから連絡が来たでござる。

〈どうしたでござる? そちらの調査に進展があったでござるか?〉

〈進展と言うか、事件ね。
 ・・・単刀直入に言えば、ミルクが消えたの〉

 ん? シルクは何を言ってるのでござるか? ミルクが消えた? 消えたとはどう言う意味でござろう。探索が嫌になって逃げた? いや、そんな子ではないでござるよ。

〈あ、ありのままに起こった事を話すね。
 突然、目の前の空間に割れ目ができて、そこにミルクが吸い込まれたんだよ。
 何を言ってるのか分からないかも知れないけど、私も良く分からないよ〉

 聞いても、状況が理解できないでござる。目の前の空間が割れた? どう言う事でござる? そして深刻な場面なのに殿が話してたマンガ? なる物のネタを挟んでるのはワザとでござるか!?

 うむむ、殿の配下で初めて犠牲者が出たと言う事でござるか? 拙者達、今まで向かうところ敵なしだったので慢心していたでござる。

 浅い階層なら全く危険はないと思い込んで、配下を危険にさらすとは、拙者・・・殿の右腕失格でござるな。

〈一応、パーティ機能はそのまま維持されてるから、生きているとは思うけど、【念話】も通じないし心配だよ〉

 良かった。まだ生きてるみたいでござる。でも急いで助けに行く必要があるでござる。

〈とりあえず、殿に報告したらすぐにそっちに向かうでござる。ただ、100階層以上あるからちょっと時間がかかるでござる〉

〈分かった。待ってるね〉

 そこで拙者はシルクとの【念話】を終了すると、次は殿に【念話】を送る。ああ、胃が痛いでござる。

〈殿、殿! 少し良いでござるか? 一大事でござる〉

〈アドランどうしたのだ? 結構近くにいるからすぐそっちに向かうのだ〉

 そう返信があった次の瞬間、目の前の空間が揺らぐと、目の前に殿が現れたでござる。

「ジンとゴブ・リーンもちょうど近くにに居たので声をかけたのだ。少ししたら来るはずなのだ。
 それで、一大事とは何なのだ?」

 ジンは前にも紹介したでござるが、拙者の次に殿の配下となった精霊で殿の直属2匹目。ゴブ・リーンは先日仲間になった魔ドワーフで殿直属6匹目でござる。

 ちなみに3匹目は魔エルフでキャラが若干ジンと被ってるでござる。4匹目は・・・。

 はっ、今はそれどころではなかったでござる。

「実は・・・、浅い階層に調査に行っていた妖精シルクのパーティメンバーのミルクが行方不明になったでござる」

「行方不明・・・なのだ? もしかしてあの深淵に落っこちたのだ?」

「いや、そうではないようでござる。シルクの報告にとると突然目の前の空間が割れて、そこに吸い込まれたとか言っていたでござる」

「うーん。ダンジョンのトラップなのだ? でも、そんな階層のトラップに引っかかるメンバーでもなかったはずなのだ。うーん」

 首をコテンと倒して悩んでいる殿がかわいいでござる。ヨシヨシしたいでござる。

 はっ、今はそれどころではなかったでござる。

「生きてるみたいでござるが、シルクの説明だけだと分からないので、拙者も上の階層に行ってみようと思うでござる」

「生きているなら、まず一安心なのだ。
 救助が必要かも知れないから我輩も一緒に行くのだ」

 と、そこでジンとゴブがやって来たでござる。

「やあ、アド。一大事だって? 何があったんだい?」

 これは、同じ事をもう一度話す流れでござるか・・・。


「なるほどねー。ミルクちゃん心配だね。
 でもこの不祥事でアドはボスの右腕レースから脱落かな? 後はアタシに任せなさい」

「くっ! 言うと思っていたでござる」

 ジンも殿の右腕を狙ってるのでござる。ここぞとばかりに畳み掛けてくるでござるか!?

「ふふ、冗談だよ。今はそれどころじゃないでしょ? ミルクちゃんを助けに行かないと!」

「も、もちろんでござる! でも遠いのでちょっと時間がかかるでござる」

「我輩だけなら、【転移】スキルですぐに移動できるのだ。でも、みんなで行った方が良いのだ」

「フハハ、こんな事もあろうかと・・・」

 ゴブがそう言いながら作業着のポケットに手を入れる。

 拙者は知っている。あのポケットは【収納】が付与された魔道具でござる。そう、四次元・・・はっ! これ以上は言ってはいけない気がするでござる。

「こんな魔道具を作っておいたのじゃ!」

 ゴブのポケットから出てきたのは、長い紐の両端が結ばれた物だったでござる。

「こんな魔道具では全く分からないよ。説明してくれるかな?」

「説明しよう! コレはポチ殿の話からヒントを得て作成した魔道具、その名も〝電車ごっこ〟である。
 ポチ殿を先頭にワシらが後ろに連なり、ポチ殿が【転移】をすると全員で【転移】できる優れのもじゃ! まだ試運転していないが、多分大丈夫じゃろう」

 な、なんか使うのが恥ずかしい感じの魔道具キターでござる・・・。しかもぶっつけ本番チックでござる。

「確かに凄いけど、我輩は手で持てないのだ」

「な、なんと言う事だ! 電車ごっこができないではないか!」

「ボスは紐を咥えたら良いんじゃないかな?」

「む、むう。仕方ないがそれでも機能するはずじゃ」

 結局、一番前で殿が紐を咥えて、その後ろにジン、ゴブ、そして一番後ろに拙者の順に並ぶ事になったでござる。

「これで【転移】したらよいのだ?」

「うむ、よろしく頼む」

「分かったのだ。では行くのだ」

 殿がそう言うと、すぐに浮遊感が襲ってきたでござる。


 ☆


 と言うのが、昨日の話。やっぱり試作品だったからか、何故か拙者だけ数m転移されただけで置いて行かれ、ポツーンとなったでござる。

 そしてつい先ほど、やっと自力で移動して合流したところでござる。

「アドラン遅かったのだ。待ちくたびれたのだ」

「ええっ! 拙者は置いていかれただけでござる。殿ひどいでござる」

「冗談なのだ。迎えに行きたかったけど、魔道具が壊れて無理だったのだ」

「すまなかったな、アドラン殿。やはり試運転はしておくべきだった。紐がワシの後ろで切れてしまったようでな。原因を解明するまで使用禁止にする事にしたんじゃ」

 そう言いながらゴブは切れた紐をブラブラさせて見せてくれたでござる。

「アハハ。まあ無事に合流できたから結果オーライだね」

 全然オーライじゃないでござるが・・・。

 はっ、今はそれどころではなかったでござる。

「それで、状況は如何でござるか?」

「それが、全く分からないのだ。
 あの後、極微量だけどミルクから経験値が送られてきたので、無事だとは思うのだ。
 だけど、空間の割れ目と言う奴の手掛かりが何も・・・んんん!?」

 話してる途中で殿は急に何かに驚いたようでござる。

「殿、どうしたでござるか!?」

「あ、ありのままに起こった事を話すのだ。
 今、【アナウンス】で《配下ミルクにマスターリョーマによってパートナーが設定されました》と報告があったのだ。ご主人が何かしたのだ? ミルクはご主人のところに居るのだ?
 何を言っているか分からないかも知れないけど、我輩も何が何だか分からないのだ」

 ただ1つ分かってる事があるでござる。そのネタは昨日既にシルクが使ったでござる。

 でも、無事である事は確認できたようなので安心したでござる。
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