うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第51話 転移の魔道具

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 王城に乗り込んだ日の夜、今日もゼムスさんの屋敷に泊めてもらっているんだけど、割り当てられた部屋のベッドの上で俺は少し悩んでいた。

 異邦人ストレンジャーの7人とダンジョンに行くのは決定事項なんだけど、問題は10階層まで行かないと封印の解除ができない事だ。

 行けるか行けないかで言えば、もちろん行けるんたけど、初心者用のダンジョンに認定されているとは言え、ダンジョンだ。移動にそれなりに時間がかかる。

 俺とかガルムとかはステータスに任せた移動で1日あれば10階層から1階層まで移動できたけど、みんなそう言う訳にもいかない。片道数日はかかるだろう。

 しかし、この色々なゴタゴタの後始末が残っている中で7人を長期間連れ回す訳にもいかない。

 ゴタゴタが片付いてから行くと言う選択肢も無くはないけど、残念ながらポチと会える手段がそこにあるのに待つなんて選択肢は俺の中に無い。

 時間もないので【並列思考】で良い方法がないか考える。通常の2倍の速度で3人の俺が考えるから、良い案もすぐに浮かびそうだ。

《提案ですが、アクモンに協力して貰うのは如何でしょうか?》

 と思ったら、思いつく前に【サポーター】さんから提案があった。アクモンに? なんだろう?

《アクモンには【影移動】と言う移動スキルがあります。それを【万物創造】スキルで【付与】した魔道具を作るのです》

 あ、なるほど。そう言えば上位の悪魔は影を使って移動ができるんだっけ? 影から影への距離をほぼゼロにして移動できるとの事だ。

 よし、その案で行こう! 【並列思考】は今日も仕事できませんでした。そうと決まれば、善は急げ。早速アクモンを呼ぼう。一応、アクモンにも部屋が用意されている。今はそこで休んでるはずだ。

〈アクモン。休んでいるところ申し訳ないけど、ちょっと僕の部屋に来てくれるかな?〉

 【念話】で連絡をする。これで数分もしたら来てくれるだろう。

「大変お待たせ致しました。御用でしょうか?」

「うわっ! びっくりした」

 机の影からアクモンが出てくる。数分どころか、まさかの数秒で来ました。ゆったりとした格好で休んでるのかと思ったら、普通に鎧を着たままだし。

「は、早かったね。ごめんね呼び出したりして」

「いえ、構いません。近くでリョーマ様の警護をさせて頂いていましたので。
 それで何の御用でしょうか? 夜伽ですか?」

 一体何から警護してくれてるんだろうか!? 【マップ】確認してなかったけど近くに居たのか。

《はい。アクモンはいつもマスターの警護をしているようです》

 そうだったのか。【サポーター】さんは常にマップを確認してくれてるとは言え、緊急時しか報告してくれないから、今度から定期的に自分でも確認しよう。と言うか、こんな時こそ【並列思考】の出番では!? やっと仕事ができる。

「ここは安全だから、警護は必要ないよ。アクモンもしっかり休んでね。あ、あと夜伽も大丈夫だから」

「そ、そうですか!? でもリョーマ様にもしもの事があったらポチ殿に顔向けできません! ただでさえ一度大ケガを負わせてしまいましたので」

 アクモンなりに俺がケガをした事をまだ気にしているらしい。そんなに気にしなくてもいいんだけどな。

「それで、その用件を伝えるために呼ばれたのでしょうか?」

「ああ、ごめんごめん。話が逸れてた。
 ここに来てもらったのはお願いがあるからなんだ」

「なんなりとお申し付け下さい。できれば痛いのか良いです!」

 痛いのはありません。

「実はね・・・」

 俺はダンジョンの10階層まで、出来るだけ短時間で向かうために【影移動】を【付与】した魔道具を作りたい事を説明する。

「なるほど。その程度でよろしければ、喜んで協力させて頂きます」

「ありがとう。それで少し聞きたいんだけど、【影移動】する為の条件とかどんな感じなのかな? 知らない場所へは行けないよね?」

「そうですね。悪魔用のスキルと言う事で結構複雑ですが、当然行ったことない場所への移動はできません。近くの影に沈み、移動先の影から出る感じですが、その場を知っている必要があります。
 また影の中はかなり環境が劣悪です。悪魔は耐えれますが普通の人間に耐えれるかどうか・・・。リョーマ様なら問題ないとは思いますが、断言はできません」

 あっと、予想外の答えだった。それだと試しに移動してみるのも躊躇われるね。

「そうなんだね。勉強になるよ。
 因みに、アクモンは封印されたダンジョンの中への移動とかはできないんだよね?」

「はい。申し訳ありませんが、移動はできませんでした。
 見えない壁の様なものに阻まれて移動できません」

 まあ、当たり前だよね。移動できたら封印の意味ないもんね。

 でも、そうするとふりだしに戻ったな。危険な賭けにみんなを付き合わせる訳にもいかないからね。他の案はないか、アクモンも交えて2人でウンウン唸る。


「そう言えば」

 しばらく唸っていたら、アクモンがそんな声をあげる。

「ん? 何か思いついたの?」

「はい。勇者の2人が付けていた首輪。アレには強制転移させる機能が【付与】されていましたよね?
 あれを解析するのはどうでしょう」

 あ! そうだった。解析するために残骸を拾ってたんだった。

「ありがとうアクモン。すっかり失念してたよ」

 そう言いながら【収納】の中で【万物創造】を使って解析を開始する。何とか明日の朝までに解析して使えるようにしたいな。

 ああ、また徹夜かな。そして今日もブラックな夜は更けていくのだった。
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