NPCのストーカーの件について

草薙翼

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記憶の底の大切な思い出

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※アズサ視点

生暖かい液体で全身が包まれて、気持ち悪くて顔を青ざめる。
意識が遠くなるほど強烈な生臭いにおいに、指先が痺れる。

こんなところで死ぬくらいなら、リーフリードの幸せな姿を見てからが良かった。

その隣に俺がいなくても、それで幸せなんだ。

短い間でも、リーフリードの恋人でいれて良かった。
どんなに偽物だって言われても、俺のこの気持ちは……

生臭いにおいの中で、嗅いだ事があるようなにおいがした。
うっすらと目を開けると、そこにあったのは忘れ草だった。
リーフリードと初めて会った日に見たものだからよく見ている。

体が動かなくて、ただ見つめる事しか出来ない。

意識がなくなる寸前まで、リーフリードの事だけを想っていた。

俺はなんで、リーフリードに会ったんだっけ。
確かあの日、幻キノコを取りに忘幻の森に来たんだ。
なんで幻キノコを取りに来たんだっけ……そうだ、聞いたんだ…あの日…

俺には兄弟が沢山いて、お父さんは仕事で滅多に家に帰らなかった。
俺を含めた幼い兄弟達をお母さんは一人で育てていた。

あまり体が丈夫じゃないお母さんは、ある日体調を崩してしまった。
このままじゃ、お母さんが死んでしまうと思った俺は村の医者に頼んだ。

でも医者はお金がないと何もしてくれなくて、俺はお母さんを助けるために薬草を取りに森に向かった。
村と忘幻の森は近くにあるが、当時の俺は何も分からなかった。

薬草がどんなのか知らず、近くにあった草を引っこ抜いた。
手のひらでパラパラと地面に落ちる草の葉を見て泣きそうな気分になった。

こんなもので本当に元気になるかなんて分からない。
でも、男の子は泣いちゃいけないんだとお母さんの言葉を思い出して袖で涙を拭った。

「どうしたんだ?そんなところで」

「うっ、う…お母さん…」

「迷子?」

何処からか聞こえた声に首を横に振って目の前を見た。
そこにいたのは、とても綺麗な顔をした子だった。

真っ暗で恐ろしく風が唸り声を上げている中を照らす光のようだった。

俺は綺麗な子にお母さんの病気の話をした。
何となく、聞いてもらうだけだった…馬鹿にされてもいいと思った。
黙って聞いてくれて、話し終わる綺麗な子は考え事をしていた。

「この森には幻キノコっていうのがあるんだ、どんな病でも治す伝説のキノコ」

「お母さんの病気も治る!?」

「治るよ、でもこの森は危ないから君じゃ無理だよ」

「…そ、そんな…事…」

無理だと言われて、また目元が熱くなって涙が出そうになった。
でも、それがないとお母さんは助からない……だからどんなに危なくても俺は行かなきゃいけないんだ。

綺麗な子は忠告してくれたが、俺は忠告を無視して歩き出した。

後ろから誰かが付いて来る足音が聞こえる。

きっと綺麗な子が心配してきているんだと何となく分かった。
でも危ないなら俺一人で大丈夫だ、無理に来る必要はない。

「俺は大丈夫だから、君は早く家に帰った方がいいよ」

「俺の家、あっちだから」

綺麗な子はそう言って、森の奥を指差していて俺を心配して付いて来ていたわけではないと分かって恥ずかしくなった。
自惚れていたみたいで、俺は自然と足を早めて進む。

幻キノコが何処にあるのか分からないが、俺は手に入れるまで帰らない。

キノコだというなら下に生えているのかもしれないと、下をずっと見ていたらなにかに身体をぶつけた。
衝撃で尻餅をついて、起きあがろうとして前を見た。

そこにいたのは、大きな木の化け物で恐怖で固まった。
その木には七色に光るキノコが生えていた。
まさか、あれが幻キノコ?思ったよりすぐに見つけられたけど、どうやって取ればいいんだ。

せっかく見つけたものだから逃げたくなかったが、戦う術もなく見つめる事しか出来なかった。

「何やってんだ!早く逃げろっ!!」

「あっ、でも…幻キノコが」

「あれは幻キノコじゃない!」

綺麗な子に腕を掴まれて、宛てもない道を走った。
どのくらい走ったのか、無我夢中だったから森の奥深くまで入ってしまった。

息を乱しながら、もう一歩も歩けないと地面に座った。
綺麗な子は周りを警戒しながらも、俺の隣に座った。

幻キノコだと思ったのに違った、じゃあ幻キノコは何処に…
また泣きそうになり、拳を握りしめて我慢した。

「大丈夫か、怪我は?」

「…ぅ、幻キノコ…」

「あの魔物は幻キノコを狙う奴を食らう生き物だ、だから幻キノコのようなカタチのキノコが身体に生えていて狙っていた」

「俺、絶対に幻キノコを持って帰る…」

「ごめん、教えた俺にも責任がある…俺も探すよ」

綺麗な子はそう言って、俺の頭を優しく撫でた。

いつも弟や妹の世話で忙しいお母さんを傍で見ていて、頭を撫でてもらった記憶を忘れていた。
我慢していた涙が溢れて止まらなくて、綺麗な子の前で大声で泣いた。

それから涙が枯れて、一緒に手を繋ぎながら幻キノコを探した。
綺麗な子は森の中をよく知っているみたいで、魔物が少ない安全な場所を通った。
それでも魔物はいるから、逃げながら幻キノコの場所をやっと見つけた。

七色に光っていて、最初に見た幻キノコに似ていた。
でもこのキノコは真珠のようにキラキラ輝いていて、神秘的だった。
幻キノコが生えている木も、枝が曲がっていて先端に丸い光がある不思議な木だった。

丁寧に優しく幻キノコを取って、大事に抱える。

「ありがとう、これで…俺…」

「お礼はいい、病気なんだろ…早く行ってあげて」

「必ずお礼しに来るから!だから、また会える?」

「会えるよ、君が会いたいって思ってくれるなら」

そして、俺は森の外まで綺麗な子と一緒に向かって別れた。

お母さんは病気が治り、俺はあの子に会いに森に向かった。

それからどうなったか、俺にはその後の記憶が曖昧だった。

そうか、そうだったんだ……俺とリーフリードの出会いは忘れ草のまえではなかったのか。
なんでこんな大切な事を忘れていたんだろう。

リーフリードの本当の好きな子って…誰なんだろう。

「アズサッ!!」

これは幻聴なのか、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
臭いにおいに包まれている中、それに混じって俺の大好きなにおいがする。

リーフリードの記憶が戻ったら、俺は自分の気持ちを伝えたい。
俺を選んでくれなくても、このままでいたくない。

記憶を戻した代償として、俺の事を忘れてしまったとしても…

うっすらとした意識の中、俺の目の前にリーフリードがいた。

俺の腕を引いて、そこから連れ出されていく。
まるで、あの時化け物から一緒に逃げたように…

「リー……くん」

「やっと、記憶が戻ったんだな…アズサ」

記憶喪失なのはリーくんなのに、変なの…と思いながらリーくんに微笑んだ。

魚の中にリーくんがいるって事はわざわざ飲み込まれたって事なのかな。
リーフリードは魚の口を弓で破壊して、俺を抱きしめながら沼から飛び出した。
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