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魔族とハーフ
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気が付いたのは自分の部屋のベッドの上。
不思議と身体はだるくないが、どれくらい眠って居たのだろう。
手足首にはまだ痣が残っている。
(……帰って来れたのか)
記憶は飛び飛びだ。
最後は、手足首を鎖に繋がれベッドに貼り付けられたのは覚えて居る。
苦しくて痛かった。
でも、次第に気持ち良くなって行ったのは分かる。
カグヤは右手を額に当てた。
右手に巻かれた布が目に入る。
(……何で弾いたりするんだろ)
右手の平がじんわり熱い気がする。
(初めてやった事だから、反動かなんかあるのかな……)
布越しの右手をじっと見詰める。
そして、その布を取って見た。
右の手の平には何も無く、至って普通だった。
ふと、千皇の顔が浮かぶ。
と同時にチクチクと胸が痛くなった。
(アイツは……)
何を思おうとしたのか、カグヤは頭を左右に激しく振った。
右手を握ると、それを胸元に置く。
天井を向いても、千皇の顔が消えない。
ほぼほぼ呆れた様な無表情でしかないのだが、時折見せる真っ直ぐで綺麗な瞳が忘れられない。
チクチクする胸の痛みは止まること無く、次第にカグヤの下半身が疼き出した。
あれだけ何日も犯され続けていたにもかかわらず、まだ足りない。
最初にされた口付けの感触は未だ覚えていて、握っていた右手の指が、カグヤの唇をなぞった。
(もし、アイツに抱かれたら、どんな風に抱かれたんだろ……)
そう思いながら、カグヤは指を咥えた。
「ん、……はぁ」
自分の指に舌を絡める。
左手は服の上から胸元をまさぐり、優しく乳首周辺を撫でた。
指の根元や付け根、指の間に舌を這いずらせ、愛おしげにしゃぶった。
ゆるゆると動く尻尾は、下着を掻い潜り半勃ち状態のカグヤのペニスをゆっくりと撫でた。
『……カグヤ』
低くて優しい声で名前を呼ばれた気がする。
「ふっ、んっ」
脳内に響く声が、全身に甘い痺れを走らせた。
「も、もっと……、触っ……」
身体中を撫でて、抱き締めて欲しい。
優しくなくても良い。
口付けで溶かして、今までの誰よりも強く、激しく抱いてくれたなら。
指を口から離し、両脚を開くとそっと入り口に唾液まみれの指を伸ばした。
「ぁ、っはぁ……」
軽く撫でると、キュンとすぼまった。
ちょっとだけ押すと、蕾が指を飲み込んで行った。
「ふ……、ん」
千皇の一部を吸い込んだ右手の指が、カグヤの中を掻き回す。
そう思うと疼きは強さを増し、一気に指を埋め込んだ。
ペニスに絡んだ尻尾は、上下に擦りながら尻尾の先で這いずり、服をたくし上げた左手はキュッと乳首を摘んでは指先で転がした。
中を掻き回す指は二本に増え、ぐちゃぐちゃと音を響かせた。
あの冷たい眼差しに見下ろされ、息をする事すら忘れそうなくらい激しい口付けをされたら……。
「はっ、……ち、お……」
思わず口に出してしまった名前。
『カグヤ……』
それに答えるかの様に、頭の中に残る声。
前も後ろもトロトロで、指も尻尾も動くスピードが早くなった。
「ちお……、んあぁあっ」
ビクビクと中が痙攣し、ペニスからは白濁とした精液が飛び出し、腹に尻尾に飛び散らした。
腹に付いた自分の精液を見詰めると、次第に我に返った。
「……やべっ。ルシカに怒られる」
服やシーツにも精液が飛び散っていた。
慌てて腹を拭き、服を着替えシーツと一緒に丸めると、それを抱えてそっと自室のドアを開けた。
台所付近の部屋には、ヨゾラが何やら本を読んでいる。
「カグ兄、声がデカい」
ヨゾラは本を見ながら一言そう言った。
カグヤは罰が悪そうに部屋から出て来ると、台所まで行き洗濯籠にシーツを入れた。
洗濯物が溜まっている。
「……ルシカは?体調悪いのか?」
家事はルシカがしていた。
洗濯物が溜まっている事に、カグヤは不信感を持った。
「……城に行ったまま、まだ帰って来てない」
素っ気なく答えるヨゾラに、カグヤは驚いた。
「……城って、……何で」
「淫魔になったから」
「だからって……。ジルバが連れて行ったのかっ!?」
「違う……、自分から行った」
カグヤは目を丸くした。
あの気の弱いルシカが自分の意志で行くなんて、何かあったに違いない。
「連れ戻して来る」
「カグ兄が行ったらルシ兄は返してくれる。だけどまた、ルシ兄が行けばカグ兄が戻る。……この繰り返しでキリがねぇ」
ヨゾラの言い方は冷静だ。
カグヤは頭を搔くと俯いた。
「……ちお、って、カグ兄が悩んでたニンゲン?」
目線は相変わらず本のままヨゾラが聞いた。
右手の平がズキっとした。
「さっき呼んでた。別に話をしたくねぇなら良いよ。俺に話したってどうにもならねぇって思ってるだろうし」
「何だってさっきから刺々しいな」
ヨゾラは、別に、と口を尖らかせた。
「反抗期かよ」
「そう言う風に兄さん達がさせてる。困らせたくねぇのは分かるけど、ガキ扱いしてる時点で困らせせるだろ。だから、別に良い。俺は兄さん達には相談しないし、やりたい様にやる」
突き放す言い方に、カグヤは溜息を吐いた。
一切こっちを見ずに本に集中するヨゾラを見るも、ヨゾラは何も言わなくなった。
「……ヨゾラ、ゴメン」
カグヤはそう言うと、ヨゾラの前に座った。
「お前が考えてる事、教えてくれねぇか?」
「ヤダ。無理だと言われる」
「……んな事言わねぇから」
本越しにチラッとカグヤを見る。
相変わらずムッとした顔だ。
「ヨゾラ……」
ヨゾラは視線を本に戻した。
カグヤは俯くと、右手をテーブルの上に置いた。
「……千皇は、俺に魂……、身体の一部をくれたニンゲン」
「……」
「交尾は……、してくんねぇの。すんげぇしたかったのに。交尾はしねぇくせにさ、……ここに帰るのに、こう言う事はすんなりすんの」
「……身体の何処を貰ったの?」
目線は本を見たままヨゾラは聞いた。
「左目……」
「何で左目?」
「……冷たいけど綺麗なんだ、アイツの眼差し。だから、左目を貰った」
「何で布巻いてたの?」
「巻かれたんだ。魔王様の手、弾くんだ。魔力封じの布らしい」
ヨゾラは本を閉じた。
カグヤの右手を見る。
「……そのニンゲンは、カグ兄が淫魔って知ってるんだ」
「……あぁ。知ってる。それに、拘束されていたわけじゃねぇ。千皇と交尾をしたくて、自分で残っただけ」
「交尾なんて他の奴と出来ただろ?そしたら、もっと早く帰って来れた」
「なんでだろな、他の奴とはする気も、しようとも思えなかった」
右手を見詰めるカグヤが、フッと笑う。
「いろいろ教えてくれるんだ。飯も美味いし、楽しい遊びとか。一緒に居るのが楽しくなっちまった」
カグヤの話を聞いて、ヨゾラは顎に手を添えた。
ヨゾラも真幸の話は聞いていて面白かった。
ギターの音色も興味が沸いたし、ラーメンは美味かった。
また知りたい事も沢山ある。
「やっぱり、下界に行こう」
「……何言ってんだよ」
「無理だとか言わねぇっつっただろ」
「そう言うのじゃねぇんだ。下界じゃ俺達の生活が出来ない。オカネって言うのが必要だし、住む所だって……。それに、連れ戻されたらルシカだって今度はさ……」
カグヤの尻込みに、ヨゾラはムッとした。
「俺、あんな風になるカグ兄は嫌だ。いくら交尾が好きでも」
「……あんな風って」
「傷だらけも嫌だけど、ジジイ相手でさえ善がってた」
ここに戻って何をされたかカグヤには分からない。
交尾の一部でも見られたなら、溜まったもんじゃない。
「でも、……俺達は交尾しないと生きて行けない」
「そのニンゲンと一緒に居た時は腹が減らなかったなら、方法は必ずある」
「ただ、アイツとやりたくて忘れてただけだって」
「それじゃ、ルシ兄もカグ兄みたいになるのを黙って見てろって?……冗談じゃないっ!」
ヨゾラはテーブルを殴った。
「交尾が気持ちイイって刷り込まれたんだ。……仕方ねぇだろ」
「好きな奴同士でする事だって、真幸が言ってた」
「誰だよ、まゆきって」
「誰だっていーだろっ」
「好きな奴同士って何だよ」
「説明が難しい」
「とりあえず、交尾が楽しけりゃいいだろ?」
「カグ兄はそれでいいかも知んねぇけどっ!ルシ兄は、カグ兄が戻って来れる様に城に行ったんだ」
はぁ?とカグヤの眉間に皺が寄った。
ヨゾラは目を伏せて、溜息を吐く。
「……こんな事、ただ同じ事を繰り返してるだけじゃん。魔王様の手の平で踊らされてるだけじゃん」
「仕方ねぇよ……、生かせて貰ってるだけでもありがたいと……。恩は返せる時に返すもんだし。それを忘れちまった俺が悪い」
「ほら、否定するじゃん。……俺、一人でもルシ兄連れて下界に行く」
ヨゾラは再び本を開いた。
「……ヨゾラ」
「……」
カグヤの呼び掛けにもヨゾラは答えない。
カグヤは頭を搔いた。
「精を取らねぇと生きて行けねぇのは分かるだろ……」
「兄さんは生きてる。必死なのはカグ兄だけじゃない」
これ以上話しても無理だろうと、ヨゾラは席を立った。
カグヤはヨゾラが自分達をどうにかしたいのは分かっている。
だけど、危険な目には遭わせたくない。
交尾は好きだ。
痛かろうが、気持ち良くなれればそれでいい。
何も考えないですむ。
何も……。
カグヤは右手を握った。
「……分かった。下界に行こう」
小さくカグヤが言った。
ヨゾラの動きが止まり、カグヤの方を向いた。
「下界に行って、ヨゾラは何がしたい?」
「……もし、精を取らずに生きて行ける方法があるなら、それを調べたい。そうすれば、カグ兄だってルシ兄だって普通に生きて行けるし、……それに」
「それに?」
「……『好き』って言う感情を知りたい。それが、もしかしたら、精を取らずに済む方法に繋がるかもしれない」
「何でそう思うんだ?」
「カグ兄は千皇ってニンゲンと一緒に居て腹が減らなかった。一緒に居て楽しかったって、交尾抜きでそう思ったから離れたくなかったんだろうし、ルシ兄も……」
ルシカの名前に、カグヤは首を傾げた。
「ルシ兄は、夢の中で多分ニンゲンの雄と逢って居るんだ。……凄く安心して、自分を奪ってって、約束したんだって」
「そんなもん、夢の中だろ……」
「いるよ。下界に」
「何で言い切れる?」
「下界に行ったから。そのニンゲンとは会話もしてないけど、夢の中でルシ兄と逢ってる。……誰かにそう話してた」
下界に行った。
カグヤは驚いて、椅子から立ち上がった。
「下界に行ったって、どうやってっ!?」
「それはまだ言えない。でも、下界で俺も真幸に逢った。俺は真幸にも逢いたい。カグ兄だって、千皇ってニンゲンと逢いたいんじゃないの?」
ヨゾラの質問にカグヤは答えを躊躇った。
交尾はしたい。
それはある。
でも、それだけなんだろうか。
「……魔王様から逃げ切れないのは分かる。捕まったら何をされるか分からない。だけど、だからと言って何もしないのは嫌だ」
「……失敗するかも知れねぇだろ。淫魔として開花してないお前にまで何かあったら……」
「1回で成功するとは思ってない。……兄さん達が俺の為にそう言う事をするなら、俺は兄さん達の為にこう言う事はする、何度でも」
ヨゾラは諦めようとはしない。
何か確信めいた物でもあるのだろうか。
「……分かった。俺は今から城に行ってルシカを戻して来る。……そしたら、下界に先に行け。俺は後から行くから」
「それだとカグ兄が帰って来れなくなる」
「お前が危険を犯すなら、俺も甘える訳には行かねぇの。少しでも安全に行きてぇだろ?」
カグヤはヨゾラに歩み寄った。
「大丈夫。絶対に行くからさ。どうやって行くか今は聞かねぇけど、俺が居たとこは分かってるな?そこの地域の安全なとこに行っとけ」
そして、頭を撫でる。
「グラディエット連れて行くから、絶対逢える。お前は強いがルシカは弱い。守れるな?」
ヨゾラは頷いた。
カグヤはにっこりと笑みを浮かべた。
不思議と身体はだるくないが、どれくらい眠って居たのだろう。
手足首にはまだ痣が残っている。
(……帰って来れたのか)
記憶は飛び飛びだ。
最後は、手足首を鎖に繋がれベッドに貼り付けられたのは覚えて居る。
苦しくて痛かった。
でも、次第に気持ち良くなって行ったのは分かる。
カグヤは右手を額に当てた。
右手に巻かれた布が目に入る。
(……何で弾いたりするんだろ)
右手の平がじんわり熱い気がする。
(初めてやった事だから、反動かなんかあるのかな……)
布越しの右手をじっと見詰める。
そして、その布を取って見た。
右の手の平には何も無く、至って普通だった。
ふと、千皇の顔が浮かぶ。
と同時にチクチクと胸が痛くなった。
(アイツは……)
何を思おうとしたのか、カグヤは頭を左右に激しく振った。
右手を握ると、それを胸元に置く。
天井を向いても、千皇の顔が消えない。
ほぼほぼ呆れた様な無表情でしかないのだが、時折見せる真っ直ぐで綺麗な瞳が忘れられない。
チクチクする胸の痛みは止まること無く、次第にカグヤの下半身が疼き出した。
あれだけ何日も犯され続けていたにもかかわらず、まだ足りない。
最初にされた口付けの感触は未だ覚えていて、握っていた右手の指が、カグヤの唇をなぞった。
(もし、アイツに抱かれたら、どんな風に抱かれたんだろ……)
そう思いながら、カグヤは指を咥えた。
「ん、……はぁ」
自分の指に舌を絡める。
左手は服の上から胸元をまさぐり、優しく乳首周辺を撫でた。
指の根元や付け根、指の間に舌を這いずらせ、愛おしげにしゃぶった。
ゆるゆると動く尻尾は、下着を掻い潜り半勃ち状態のカグヤのペニスをゆっくりと撫でた。
『……カグヤ』
低くて優しい声で名前を呼ばれた気がする。
「ふっ、んっ」
脳内に響く声が、全身に甘い痺れを走らせた。
「も、もっと……、触っ……」
身体中を撫でて、抱き締めて欲しい。
優しくなくても良い。
口付けで溶かして、今までの誰よりも強く、激しく抱いてくれたなら。
指を口から離し、両脚を開くとそっと入り口に唾液まみれの指を伸ばした。
「ぁ、っはぁ……」
軽く撫でると、キュンとすぼまった。
ちょっとだけ押すと、蕾が指を飲み込んで行った。
「ふ……、ん」
千皇の一部を吸い込んだ右手の指が、カグヤの中を掻き回す。
そう思うと疼きは強さを増し、一気に指を埋め込んだ。
ペニスに絡んだ尻尾は、上下に擦りながら尻尾の先で這いずり、服をたくし上げた左手はキュッと乳首を摘んでは指先で転がした。
中を掻き回す指は二本に増え、ぐちゃぐちゃと音を響かせた。
あの冷たい眼差しに見下ろされ、息をする事すら忘れそうなくらい激しい口付けをされたら……。
「はっ、……ち、お……」
思わず口に出してしまった名前。
『カグヤ……』
それに答えるかの様に、頭の中に残る声。
前も後ろもトロトロで、指も尻尾も動くスピードが早くなった。
「ちお……、んあぁあっ」
ビクビクと中が痙攣し、ペニスからは白濁とした精液が飛び出し、腹に尻尾に飛び散らした。
腹に付いた自分の精液を見詰めると、次第に我に返った。
「……やべっ。ルシカに怒られる」
服やシーツにも精液が飛び散っていた。
慌てて腹を拭き、服を着替えシーツと一緒に丸めると、それを抱えてそっと自室のドアを開けた。
台所付近の部屋には、ヨゾラが何やら本を読んでいる。
「カグ兄、声がデカい」
ヨゾラは本を見ながら一言そう言った。
カグヤは罰が悪そうに部屋から出て来ると、台所まで行き洗濯籠にシーツを入れた。
洗濯物が溜まっている。
「……ルシカは?体調悪いのか?」
家事はルシカがしていた。
洗濯物が溜まっている事に、カグヤは不信感を持った。
「……城に行ったまま、まだ帰って来てない」
素っ気なく答えるヨゾラに、カグヤは驚いた。
「……城って、……何で」
「淫魔になったから」
「だからって……。ジルバが連れて行ったのかっ!?」
「違う……、自分から行った」
カグヤは目を丸くした。
あの気の弱いルシカが自分の意志で行くなんて、何かあったに違いない。
「連れ戻して来る」
「カグ兄が行ったらルシ兄は返してくれる。だけどまた、ルシ兄が行けばカグ兄が戻る。……この繰り返しでキリがねぇ」
ヨゾラの言い方は冷静だ。
カグヤは頭を搔くと俯いた。
「……ちお、って、カグ兄が悩んでたニンゲン?」
目線は相変わらず本のままヨゾラが聞いた。
右手の平がズキっとした。
「さっき呼んでた。別に話をしたくねぇなら良いよ。俺に話したってどうにもならねぇって思ってるだろうし」
「何だってさっきから刺々しいな」
ヨゾラは、別に、と口を尖らかせた。
「反抗期かよ」
「そう言う風に兄さん達がさせてる。困らせたくねぇのは分かるけど、ガキ扱いしてる時点で困らせせるだろ。だから、別に良い。俺は兄さん達には相談しないし、やりたい様にやる」
突き放す言い方に、カグヤは溜息を吐いた。
一切こっちを見ずに本に集中するヨゾラを見るも、ヨゾラは何も言わなくなった。
「……ヨゾラ、ゴメン」
カグヤはそう言うと、ヨゾラの前に座った。
「お前が考えてる事、教えてくれねぇか?」
「ヤダ。無理だと言われる」
「……んな事言わねぇから」
本越しにチラッとカグヤを見る。
相変わらずムッとした顔だ。
「ヨゾラ……」
ヨゾラは視線を本に戻した。
カグヤは俯くと、右手をテーブルの上に置いた。
「……千皇は、俺に魂……、身体の一部をくれたニンゲン」
「……」
「交尾は……、してくんねぇの。すんげぇしたかったのに。交尾はしねぇくせにさ、……ここに帰るのに、こう言う事はすんなりすんの」
「……身体の何処を貰ったの?」
目線は本を見たままヨゾラは聞いた。
「左目……」
「何で左目?」
「……冷たいけど綺麗なんだ、アイツの眼差し。だから、左目を貰った」
「何で布巻いてたの?」
「巻かれたんだ。魔王様の手、弾くんだ。魔力封じの布らしい」
ヨゾラは本を閉じた。
カグヤの右手を見る。
「……そのニンゲンは、カグ兄が淫魔って知ってるんだ」
「……あぁ。知ってる。それに、拘束されていたわけじゃねぇ。千皇と交尾をしたくて、自分で残っただけ」
「交尾なんて他の奴と出来ただろ?そしたら、もっと早く帰って来れた」
「なんでだろな、他の奴とはする気も、しようとも思えなかった」
右手を見詰めるカグヤが、フッと笑う。
「いろいろ教えてくれるんだ。飯も美味いし、楽しい遊びとか。一緒に居るのが楽しくなっちまった」
カグヤの話を聞いて、ヨゾラは顎に手を添えた。
ヨゾラも真幸の話は聞いていて面白かった。
ギターの音色も興味が沸いたし、ラーメンは美味かった。
また知りたい事も沢山ある。
「やっぱり、下界に行こう」
「……何言ってんだよ」
「無理だとか言わねぇっつっただろ」
「そう言うのじゃねぇんだ。下界じゃ俺達の生活が出来ない。オカネって言うのが必要だし、住む所だって……。それに、連れ戻されたらルシカだって今度はさ……」
カグヤの尻込みに、ヨゾラはムッとした。
「俺、あんな風になるカグ兄は嫌だ。いくら交尾が好きでも」
「……あんな風って」
「傷だらけも嫌だけど、ジジイ相手でさえ善がってた」
ここに戻って何をされたかカグヤには分からない。
交尾の一部でも見られたなら、溜まったもんじゃない。
「でも、……俺達は交尾しないと生きて行けない」
「そのニンゲンと一緒に居た時は腹が減らなかったなら、方法は必ずある」
「ただ、アイツとやりたくて忘れてただけだって」
「それじゃ、ルシ兄もカグ兄みたいになるのを黙って見てろって?……冗談じゃないっ!」
ヨゾラはテーブルを殴った。
「交尾が気持ちイイって刷り込まれたんだ。……仕方ねぇだろ」
「好きな奴同士でする事だって、真幸が言ってた」
「誰だよ、まゆきって」
「誰だっていーだろっ」
「好きな奴同士って何だよ」
「説明が難しい」
「とりあえず、交尾が楽しけりゃいいだろ?」
「カグ兄はそれでいいかも知んねぇけどっ!ルシ兄は、カグ兄が戻って来れる様に城に行ったんだ」
はぁ?とカグヤの眉間に皺が寄った。
ヨゾラは目を伏せて、溜息を吐く。
「……こんな事、ただ同じ事を繰り返してるだけじゃん。魔王様の手の平で踊らされてるだけじゃん」
「仕方ねぇよ……、生かせて貰ってるだけでもありがたいと……。恩は返せる時に返すもんだし。それを忘れちまった俺が悪い」
「ほら、否定するじゃん。……俺、一人でもルシ兄連れて下界に行く」
ヨゾラは再び本を開いた。
「……ヨゾラ」
「……」
カグヤの呼び掛けにもヨゾラは答えない。
カグヤは頭を搔いた。
「精を取らねぇと生きて行けねぇのは分かるだろ……」
「兄さんは生きてる。必死なのはカグ兄だけじゃない」
これ以上話しても無理だろうと、ヨゾラは席を立った。
カグヤはヨゾラが自分達をどうにかしたいのは分かっている。
だけど、危険な目には遭わせたくない。
交尾は好きだ。
痛かろうが、気持ち良くなれればそれでいい。
何も考えないですむ。
何も……。
カグヤは右手を握った。
「……分かった。下界に行こう」
小さくカグヤが言った。
ヨゾラの動きが止まり、カグヤの方を向いた。
「下界に行って、ヨゾラは何がしたい?」
「……もし、精を取らずに生きて行ける方法があるなら、それを調べたい。そうすれば、カグ兄だってルシ兄だって普通に生きて行けるし、……それに」
「それに?」
「……『好き』って言う感情を知りたい。それが、もしかしたら、精を取らずに済む方法に繋がるかもしれない」
「何でそう思うんだ?」
「カグ兄は千皇ってニンゲンと一緒に居て腹が減らなかった。一緒に居て楽しかったって、交尾抜きでそう思ったから離れたくなかったんだろうし、ルシ兄も……」
ルシカの名前に、カグヤは首を傾げた。
「ルシ兄は、夢の中で多分ニンゲンの雄と逢って居るんだ。……凄く安心して、自分を奪ってって、約束したんだって」
「そんなもん、夢の中だろ……」
「いるよ。下界に」
「何で言い切れる?」
「下界に行ったから。そのニンゲンとは会話もしてないけど、夢の中でルシ兄と逢ってる。……誰かにそう話してた」
下界に行った。
カグヤは驚いて、椅子から立ち上がった。
「下界に行ったって、どうやってっ!?」
「それはまだ言えない。でも、下界で俺も真幸に逢った。俺は真幸にも逢いたい。カグ兄だって、千皇ってニンゲンと逢いたいんじゃないの?」
ヨゾラの質問にカグヤは答えを躊躇った。
交尾はしたい。
それはある。
でも、それだけなんだろうか。
「……魔王様から逃げ切れないのは分かる。捕まったら何をされるか分からない。だけど、だからと言って何もしないのは嫌だ」
「……失敗するかも知れねぇだろ。淫魔として開花してないお前にまで何かあったら……」
「1回で成功するとは思ってない。……兄さん達が俺の為にそう言う事をするなら、俺は兄さん達の為にこう言う事はする、何度でも」
ヨゾラは諦めようとはしない。
何か確信めいた物でもあるのだろうか。
「……分かった。俺は今から城に行ってルシカを戻して来る。……そしたら、下界に先に行け。俺は後から行くから」
「それだとカグ兄が帰って来れなくなる」
「お前が危険を犯すなら、俺も甘える訳には行かねぇの。少しでも安全に行きてぇだろ?」
カグヤはヨゾラに歩み寄った。
「大丈夫。絶対に行くからさ。どうやって行くか今は聞かねぇけど、俺が居たとこは分かってるな?そこの地域の安全なとこに行っとけ」
そして、頭を撫でる。
「グラディエット連れて行くから、絶対逢える。お前は強いがルシカは弱い。守れるな?」
ヨゾラは頷いた。
カグヤはにっこりと笑みを浮かべた。
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