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淫魔と感情
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『あ、ぁっ……』
暗い空間の中、ぐちゅぐちゅと卑猥な音と少し低めの喘ぎ声が響く。
(やだっ……)
『ャだ、腰っ、……止まらな、あ、ぁ、ん』
顔が良く見えな男の上に乗り、自ら一心不乱に腰を振って、恍惚の笑みを浮かべヨゾラは見下ろしている。
身体中、汗と唾液と精液で塗れ、片手には別の男のぺニスを握っていた。
下の男は、ヨゾラの腰を掴むと一気に下から突き上げた。
『はぁっ!……ソコっ、も、っとぉ』
腰を前に突き出し、背中を仰け反らせたヨゾラは、甘い声を響かせた。
(こんな、俺じゃないっ!!)
大股で跨った男が、下から突き上げる度にヨゾラのぺニスが揺れる。
『そう言う事は好きな奴とヤれ言うたやろ』
突然、そんな声が響いた。
蕩ける様な顔で見上げると、冷めきった目で見下す真幸がいる。
(真幸……、これは)
『ま、ゆきぃ~……』
ヨゾラはヘラっと笑って見上げて居る。
(違うっ!俺じゃないって!!)
『そう言えばお前、フェラは上手い言われとったな』
真幸はそう言うと、ゴソゴソと自分のぺニスを取り出し、ヨゾラの目の前に出した。
暗い空間のせいか、色型大きさまでは分からない。
『先輩にはしとったんやろ。俺にもしてみ』
真幸はヨゾラの頭を乱暴に掴むと、その口の中にぺニスを突っ込んだ。
ヨゾラは嬉しそうに真幸にむしゃぶりついた。
(やめろよ……)
『だらしない顔やな』
(俺はこんなんじゃない……)
『誰でもえぇなんて、やっぱりお前は淫魔やな』
(違うっ!!)
『あはっ……』
ヘラヘラと笑いながら、ヨゾラは真幸に舌を絡める。
(……俺だって、真幸とこんな)
『俺、××と〇〇になったんや。お前は俺を好きや思うとったけど……、勘違いやったようや』
『す、き……、真幸、すき……』
(好きだけど、違うっ)
『俺やのうて、コレがやろ』
ヨゾラの頭を自分の股間に押し付けた。
(やだ、違うっ!真幸、気付けって)
『ん、ぐっ』
前後に頭を揺さぶられても、ヨゾラは苦悶の表情を浮かべながら、されるがままに真幸を受け入れた。
『お前がこんな感情を調べなければ、苦しまずに済んだんに……。可哀想な奴やな……』
(お願いだから気付けってっ!!……俺は、お前が……、っ!!)
パッと目の前が明るくなった。
気が付けば、見慣れた壁。
熱に浮かされながら本で調べ事をしている最中に、気を失っていたらしい。
身体中は嫌な汗でベタベタし、頭を伏せていた本も汗で湿っている。
息も荒く、目を見開いた。
(……夢って分かるけど、……くそっ)
ヨゾラはクラクラする頭をゆっくり上げた。
それだけでも目眩がしそうだ。
スポーツドリンクのペットボトルに手を伸ばすが、持ち上げると空だ。
額に貼った熱さまシートも、硬く乾いている。
喉がカラカラだ。
重たい頭をゆっくりと上げる。
せめて水分だけでも、と椅子を引いた。
ずしっと腰周りが重く感じた。
(……あんなんは俺じゃないのに)
悔しくて唇を噛み締めるも、ゆっくりと立ち上がった。
熱でフラフラと机や壁にてを付きながら、ドアまで行くとゆっくり開けた。
廊下を少し歩いてキッチンに行くと、リビングでエルドラが韓流ドラマを見ていた。
ルシカが居ない。
「……エルドラさん?」
呼ばれたエルドラは振り向いた。
ヨゾラの姿を見ると、慌ててソファーを飛び越しヨゾラに近づいた。
「大丈夫かの?寝ていなくて大丈夫かの?」
ヨゾラの肩を掴むと、心配げにそう聞いた。
「少し寝れたから大丈夫だよ。……それより、ルシ兄は?」
グラディエットはリビングのソファーの脇に寝そべって居た。
「ルシカは婿殿に連れ出して貰ったわ。……少し落ち込んでのう」
「……そっか。ずっと俺に付きっきりだったからな」
「粥を作って行った。少しでも食せ」
ありがとう、とヨゾラは呟いた。
「今は水分補給したいから、もう少し寝たら食べるよ……」
ヨゾラは苦笑いを浮かべると、冷蔵庫から新しい熱さまシートとスポーツドリンクを取り出した。
「そうかのう……。キツかったらちゃんと呼ぶのじゃぞ?あまり役には立たぬが……」
エルドラは肩を落とした。
「うん。……エルドラさんが居てくれるのは安心するから」
そう言うと、エルドラは明るい笑顔を見せた。
ヨゾラはゆっくりと、部屋へと戻った。
本を閉じ、ベッドに座る。
熱さまシートを貼り直し、スポーツドリンクを一口飲んだ。
ベッドボードにスポーツドリンクを置くと、倒れる様にベッドに寝そべった。
あんな夢を見たなら、眠りたくない。
(……真幸、怒ってたな……。俺じゃねぇのに……)
熱のせいか、瞼が重い。
何時になったら熱が下がるのだろう。
一向に良くなる気がしない。
脚をベッドに上げた時だった、インターホンが聞こえ、エルドラだろうか廊下を歩く音がした。
しばらくすると、部屋をノックする音がしておずおずとエルドラが扉を開けた。
「ヨゾラ……、同級生とやらが見舞いに来たのじゃが……」
いつもは楼依が追い返す。
と言うか、常磐が来ては楼依が追い返していた。
さっきも来ていたが、楼依が居る時間だった為に追い返した。
「いつもの奴では無い。二人で来ておる」
御手洗と富岡だろうと思うと、ヨゾラは身体を起こした。
「……大丈夫。……あんまり長い時間は無理だけど」
そう言うと心配げな表情を浮かべたエルドラは、一瞬躊躇うも、御手洗達を部屋に入れた。
「……浅霧、押しかけて悪かった」
御手洗はヨゾラの顔を見ると、済まなさそうにそう謝罪した。
「まさか、こんなに長く休むなんてさ……。タイミングがタイミングだったし……」
富岡も座りながら頭を下げた。
「ごめん……、心配掛けちまって……」
ヨゾラも俯いた。
「いやいやっ!俺達も調子に乗り過ぎたしっ!」
「傍から見ても、浅霧と神崎は仲が良いし、……つい」
御手洗と富岡は頭を深々下げた。
「あ……、気、気にすんな……、っ」
ヨゾラは慌てて立ち上がろうとしたが、身体がフラつく。
尻餅を付くように、ヨゾラはベッドにへたり込んだ。
「無理すんなって。まだ良くねぇんだろっ!?」
御手洗は立ち上がって、ヨゾラを支えた。
熱で熱い身体、火照った息。
一瞬、御手洗の背中がゾクッとした。
「あぁ……、悪ぃ……」
ヨゾラは御手洗の手を振り解くと、小さく謝った。
富岡はあ、と小さく声を上げると、鞄からガサゴソとファイルを取り出す。
「授業のノート、花井にコピーして貰ったんだった」
花井は学年1の優等生である。
ヨゾラはそれを受け取った。
「ありがと……」
富岡の指先がヨゾラに触れると、富岡の指がピクっと動いた。
「……ゴメンな?迷惑、……掛けて」
ヨゾラは困った様に笑顔を作り、そう言った。
御手洗と富岡は、その笑顔に何故か見惚れてしまった。
そして、二人は同時に首を横に振った。
富岡の目に、壁に立て掛けてあるギターが入った。
「あれ?浅霧ギターすんの?」
富岡がそう聞くと、御手洗もギターに目を向けた。
「あー……、真幸のなんだ、それ……」
ヨゾラもチラッとギターを見た。
富岡はすみません、と謝った。
「まぁ……、俺が家に居たら……、取りに来れないよな……。早く、熱下げねぇと……」
ボソッとヨゾラは元気なく呟く。
何故かヨゾラの表情が愁いを帯びて艶っぽく見える。
「あー……、なんだ。神崎は……、唐島が居るからな。余計に来れないかも」
そう言いながら、富岡はヨゾラから目を逸らした。
「……そう、なんだな」
夢の中で、聞き取れなかったのは唐島と付き合ったって言ったのだろうか。
何だか胸の奥がキュッと痛くなった。
「でも、何かまた戻ったよなー、神崎。……黙って唐島に着いて行ってるみたいな?」
「そうそう、浅霧と違ってオカン崎が発動しねぇっての?なーんかつまんなくなったっつーか?」
「唐島はそれでも満更じゃねぇみたいだけどさ。結構、楽しかったんだけどなー……」
御手洗と富岡の会話が頭に入らない。
さっきの夢の真幸が頭を過ぎる。
自分じゃない自分を冷たくて、軽蔑している様な視線。
「揶揄うって言い方は良くないけどさ。浅霧とつるんでた神崎なら、雰囲気が良い感じだったからついってのがあったんだ」
「そうそう。唐島相手だとオカン崎にならないからさ。それくらい神崎も素だったんじゃないかって」
「唐島が神崎の横に居るより、浅霧が居る方が人間味がある、気がする」
御手洗と富岡は共に腕を組んで頷き合った。
「……そんな事はないと思うよ。俺は何も出来ないからさ……」
ヨゾラは俯くと、寂しそうに言った。
「神崎みたいな世話焼きっては、世話焼きだから自分の事が分からないのかも」
「ベッド変わったってだけでも嬉しかったと思うし」
そうかな、……ヨゾラは首を傾げる。
「壊しちまったのは俺らだけど……、浅霧が早退した日、神崎が唐島にブチ切れたし」
「……うん、メッセージ、見たし……」
でも、真幸は出て行った。
ヨゾラが我慢して早退なんかしなければ、真幸は出て行く事はなかったのに。
考える程、熱が上がった様に頭がクラクラする。
額に手を当て、深く深呼吸をする。
少し紅い頬に、ゾクッとする。
「あ、身体キツイよな?ゴメンな、突然来てさ」
「そ、そうだな。ゆっくり身体休めて、また学校来いよ」
突然、二人は慌て出した。
「ゴメン……、せっかく来てくれたのに……。何も出来ないで……」
二人を見るヨゾラの目は、熱のせいか潤んでいた。
「いやいや、そんじゃ良くなったら連絡しろよ?」
富岡が立ち上がると、御手洗も立ち上がった。
そして、じゃーなー、と一声掛けると二人は部屋を出て行った。
ドアが閉まると、ヨゾラは倒れこむようにベッドに身体を沈めた。
エルドラが二人を見送る。
何故か顔を赤らめている御手洗と富岡を見ながら、怪訝げに眉を潜めた。
暗い空間の中、ぐちゅぐちゅと卑猥な音と少し低めの喘ぎ声が響く。
(やだっ……)
『ャだ、腰っ、……止まらな、あ、ぁ、ん』
顔が良く見えな男の上に乗り、自ら一心不乱に腰を振って、恍惚の笑みを浮かべヨゾラは見下ろしている。
身体中、汗と唾液と精液で塗れ、片手には別の男のぺニスを握っていた。
下の男は、ヨゾラの腰を掴むと一気に下から突き上げた。
『はぁっ!……ソコっ、も、っとぉ』
腰を前に突き出し、背中を仰け反らせたヨゾラは、甘い声を響かせた。
(こんな、俺じゃないっ!!)
大股で跨った男が、下から突き上げる度にヨゾラのぺニスが揺れる。
『そう言う事は好きな奴とヤれ言うたやろ』
突然、そんな声が響いた。
蕩ける様な顔で見上げると、冷めきった目で見下す真幸がいる。
(真幸……、これは)
『ま、ゆきぃ~……』
ヨゾラはヘラっと笑って見上げて居る。
(違うっ!俺じゃないって!!)
『そう言えばお前、フェラは上手い言われとったな』
真幸はそう言うと、ゴソゴソと自分のぺニスを取り出し、ヨゾラの目の前に出した。
暗い空間のせいか、色型大きさまでは分からない。
『先輩にはしとったんやろ。俺にもしてみ』
真幸はヨゾラの頭を乱暴に掴むと、その口の中にぺニスを突っ込んだ。
ヨゾラは嬉しそうに真幸にむしゃぶりついた。
(やめろよ……)
『だらしない顔やな』
(俺はこんなんじゃない……)
『誰でもえぇなんて、やっぱりお前は淫魔やな』
(違うっ!!)
『あはっ……』
ヘラヘラと笑いながら、ヨゾラは真幸に舌を絡める。
(……俺だって、真幸とこんな)
『俺、××と〇〇になったんや。お前は俺を好きや思うとったけど……、勘違いやったようや』
『す、き……、真幸、すき……』
(好きだけど、違うっ)
『俺やのうて、コレがやろ』
ヨゾラの頭を自分の股間に押し付けた。
(やだ、違うっ!真幸、気付けって)
『ん、ぐっ』
前後に頭を揺さぶられても、ヨゾラは苦悶の表情を浮かべながら、されるがままに真幸を受け入れた。
『お前がこんな感情を調べなければ、苦しまずに済んだんに……。可哀想な奴やな……』
(お願いだから気付けってっ!!……俺は、お前が……、っ!!)
パッと目の前が明るくなった。
気が付けば、見慣れた壁。
熱に浮かされながら本で調べ事をしている最中に、気を失っていたらしい。
身体中は嫌な汗でベタベタし、頭を伏せていた本も汗で湿っている。
息も荒く、目を見開いた。
(……夢って分かるけど、……くそっ)
ヨゾラはクラクラする頭をゆっくり上げた。
それだけでも目眩がしそうだ。
スポーツドリンクのペットボトルに手を伸ばすが、持ち上げると空だ。
額に貼った熱さまシートも、硬く乾いている。
喉がカラカラだ。
重たい頭をゆっくりと上げる。
せめて水分だけでも、と椅子を引いた。
ずしっと腰周りが重く感じた。
(……あんなんは俺じゃないのに)
悔しくて唇を噛み締めるも、ゆっくりと立ち上がった。
熱でフラフラと机や壁にてを付きながら、ドアまで行くとゆっくり開けた。
廊下を少し歩いてキッチンに行くと、リビングでエルドラが韓流ドラマを見ていた。
ルシカが居ない。
「……エルドラさん?」
呼ばれたエルドラは振り向いた。
ヨゾラの姿を見ると、慌ててソファーを飛び越しヨゾラに近づいた。
「大丈夫かの?寝ていなくて大丈夫かの?」
ヨゾラの肩を掴むと、心配げにそう聞いた。
「少し寝れたから大丈夫だよ。……それより、ルシ兄は?」
グラディエットはリビングのソファーの脇に寝そべって居た。
「ルシカは婿殿に連れ出して貰ったわ。……少し落ち込んでのう」
「……そっか。ずっと俺に付きっきりだったからな」
「粥を作って行った。少しでも食せ」
ありがとう、とヨゾラは呟いた。
「今は水分補給したいから、もう少し寝たら食べるよ……」
ヨゾラは苦笑いを浮かべると、冷蔵庫から新しい熱さまシートとスポーツドリンクを取り出した。
「そうかのう……。キツかったらちゃんと呼ぶのじゃぞ?あまり役には立たぬが……」
エルドラは肩を落とした。
「うん。……エルドラさんが居てくれるのは安心するから」
そう言うと、エルドラは明るい笑顔を見せた。
ヨゾラはゆっくりと、部屋へと戻った。
本を閉じ、ベッドに座る。
熱さまシートを貼り直し、スポーツドリンクを一口飲んだ。
ベッドボードにスポーツドリンクを置くと、倒れる様にベッドに寝そべった。
あんな夢を見たなら、眠りたくない。
(……真幸、怒ってたな……。俺じゃねぇのに……)
熱のせいか、瞼が重い。
何時になったら熱が下がるのだろう。
一向に良くなる気がしない。
脚をベッドに上げた時だった、インターホンが聞こえ、エルドラだろうか廊下を歩く音がした。
しばらくすると、部屋をノックする音がしておずおずとエルドラが扉を開けた。
「ヨゾラ……、同級生とやらが見舞いに来たのじゃが……」
いつもは楼依が追い返す。
と言うか、常磐が来ては楼依が追い返していた。
さっきも来ていたが、楼依が居る時間だった為に追い返した。
「いつもの奴では無い。二人で来ておる」
御手洗と富岡だろうと思うと、ヨゾラは身体を起こした。
「……大丈夫。……あんまり長い時間は無理だけど」
そう言うと心配げな表情を浮かべたエルドラは、一瞬躊躇うも、御手洗達を部屋に入れた。
「……浅霧、押しかけて悪かった」
御手洗はヨゾラの顔を見ると、済まなさそうにそう謝罪した。
「まさか、こんなに長く休むなんてさ……。タイミングがタイミングだったし……」
富岡も座りながら頭を下げた。
「ごめん……、心配掛けちまって……」
ヨゾラも俯いた。
「いやいやっ!俺達も調子に乗り過ぎたしっ!」
「傍から見ても、浅霧と神崎は仲が良いし、……つい」
御手洗と富岡は頭を深々下げた。
「あ……、気、気にすんな……、っ」
ヨゾラは慌てて立ち上がろうとしたが、身体がフラつく。
尻餅を付くように、ヨゾラはベッドにへたり込んだ。
「無理すんなって。まだ良くねぇんだろっ!?」
御手洗は立ち上がって、ヨゾラを支えた。
熱で熱い身体、火照った息。
一瞬、御手洗の背中がゾクッとした。
「あぁ……、悪ぃ……」
ヨゾラは御手洗の手を振り解くと、小さく謝った。
富岡はあ、と小さく声を上げると、鞄からガサゴソとファイルを取り出す。
「授業のノート、花井にコピーして貰ったんだった」
花井は学年1の優等生である。
ヨゾラはそれを受け取った。
「ありがと……」
富岡の指先がヨゾラに触れると、富岡の指がピクっと動いた。
「……ゴメンな?迷惑、……掛けて」
ヨゾラは困った様に笑顔を作り、そう言った。
御手洗と富岡は、その笑顔に何故か見惚れてしまった。
そして、二人は同時に首を横に振った。
富岡の目に、壁に立て掛けてあるギターが入った。
「あれ?浅霧ギターすんの?」
富岡がそう聞くと、御手洗もギターに目を向けた。
「あー……、真幸のなんだ、それ……」
ヨゾラもチラッとギターを見た。
富岡はすみません、と謝った。
「まぁ……、俺が家に居たら……、取りに来れないよな……。早く、熱下げねぇと……」
ボソッとヨゾラは元気なく呟く。
何故かヨゾラの表情が愁いを帯びて艶っぽく見える。
「あー……、なんだ。神崎は……、唐島が居るからな。余計に来れないかも」
そう言いながら、富岡はヨゾラから目を逸らした。
「……そう、なんだな」
夢の中で、聞き取れなかったのは唐島と付き合ったって言ったのだろうか。
何だか胸の奥がキュッと痛くなった。
「でも、何かまた戻ったよなー、神崎。……黙って唐島に着いて行ってるみたいな?」
「そうそう、浅霧と違ってオカン崎が発動しねぇっての?なーんかつまんなくなったっつーか?」
「唐島はそれでも満更じゃねぇみたいだけどさ。結構、楽しかったんだけどなー……」
御手洗と富岡の会話が頭に入らない。
さっきの夢の真幸が頭を過ぎる。
自分じゃない自分を冷たくて、軽蔑している様な視線。
「揶揄うって言い方は良くないけどさ。浅霧とつるんでた神崎なら、雰囲気が良い感じだったからついってのがあったんだ」
「そうそう。唐島相手だとオカン崎にならないからさ。それくらい神崎も素だったんじゃないかって」
「唐島が神崎の横に居るより、浅霧が居る方が人間味がある、気がする」
御手洗と富岡は共に腕を組んで頷き合った。
「……そんな事はないと思うよ。俺は何も出来ないからさ……」
ヨゾラは俯くと、寂しそうに言った。
「神崎みたいな世話焼きっては、世話焼きだから自分の事が分からないのかも」
「ベッド変わったってだけでも嬉しかったと思うし」
そうかな、……ヨゾラは首を傾げる。
「壊しちまったのは俺らだけど……、浅霧が早退した日、神崎が唐島にブチ切れたし」
「……うん、メッセージ、見たし……」
でも、真幸は出て行った。
ヨゾラが我慢して早退なんかしなければ、真幸は出て行く事はなかったのに。
考える程、熱が上がった様に頭がクラクラする。
額に手を当て、深く深呼吸をする。
少し紅い頬に、ゾクッとする。
「あ、身体キツイよな?ゴメンな、突然来てさ」
「そ、そうだな。ゆっくり身体休めて、また学校来いよ」
突然、二人は慌て出した。
「ゴメン……、せっかく来てくれたのに……。何も出来ないで……」
二人を見るヨゾラの目は、熱のせいか潤んでいた。
「いやいや、そんじゃ良くなったら連絡しろよ?」
富岡が立ち上がると、御手洗も立ち上がった。
そして、じゃーなー、と一声掛けると二人は部屋を出て行った。
ドアが閉まると、ヨゾラは倒れこむようにベッドに身体を沈めた。
エルドラが二人を見送る。
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