堕落した淫魔は夢を見る

雪之丞 親実

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淫魔と感情

02

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 『あ、ぁっ……』

  暗い空間の中、ぐちゅぐちゅと卑猥な音と少し低めの喘ぎ声が響く。
  
(やだっ……)
『ャだ、腰っ、……止まらな、あ、ぁ、ん』

  顔が良く見えな男の上に乗り、自ら一心不乱に腰を振って、恍惚の笑みを浮かべヨゾラは見下ろしている。
  身体中、汗と唾液と精液で塗れ、片手には別の男のぺニスを握っていた。
  下の男は、ヨゾラの腰を掴むと一気に下から突き上げた。

『はぁっ!……ソコっ、も、っとぉ』

  腰を前に突き出し、背中を仰け反らせたヨゾラは、甘い声を響かせた。

(こんな、俺じゃないっ!!)

  大股で跨った男が、下から突き上げる度にヨゾラのぺニスが揺れる。

『そう言う事は好きな奴とヤれ言うたやろ』

  突然、そんな声が響いた。
  蕩ける様な顔で見上げると、冷めきった目で見下す真幸がいる。

(真幸……、これは)
『ま、ゆきぃ~……』

  ヨゾラはヘラっと笑って見上げて居る。

(違うっ!俺じゃないって!!)
『そう言えばお前、フェラは上手い言われとったな』
  
  真幸はそう言うと、ゴソゴソと自分のぺニスを取り出し、ヨゾラの目の前に出した。
  暗い空間のせいか、色型大きさまでは分からない。

『先輩にはしとったんやろ。俺にもしてみ』

  真幸はヨゾラの頭を乱暴に掴むと、その口の中にぺニスを突っ込んだ。
  ヨゾラは嬉しそうに真幸にむしゃぶりついた。

(やめろよ……)
『だらしない顔やな』
(俺はこんなんじゃない……)
『誰でもえぇなんて、やっぱりお前は淫魔やな』
(違うっ!!)
『あはっ……』

  ヘラヘラと笑いながら、ヨゾラは真幸に舌を絡める。

(……俺だって、真幸とこんな)
『俺、××と〇〇になったんや。お前は俺を好きや思うとったけど……、勘違いやったようや』
『す、き……、真幸、すき……』
(好きだけど、違うっ)
『俺やのうて、コレがやろ』

  ヨゾラの頭を自分の股間に押し付けた。

(やだ、違うっ!真幸、気付けって)
『ん、ぐっ』

  前後に頭を揺さぶられても、ヨゾラは苦悶の表情を浮かべながら、されるがままに真幸を受け入れた。

『お前がこんな感情を調べなければ、苦しまずに済んだんに……。可哀想な奴やな……』
(お願いだから気付けってっ!!……俺は、お前が……、っ!!)

  パッと目の前が明るくなった。
  気が付けば、見慣れた壁。
  熱に浮かされながら本で調べ事をしている最中に、気を失っていたらしい。
  身体中は嫌な汗でベタベタし、頭を伏せていた本も汗で湿っている。
  息も荒く、目を見開いた。

(……夢って分かるけど、……くそっ)

  ヨゾラはクラクラする頭をゆっくり上げた。
  それだけでも目眩がしそうだ。
  スポーツドリンクのペットボトルに手を伸ばすが、持ち上げると空だ。 
  額に貼った熱さまシートも、硬く乾いている。
  喉がカラカラだ。
  重たい頭をゆっくりと上げる。
  せめて水分だけでも、と椅子を引いた。
  ずしっと腰周りが重く感じた。

(……あんなんは俺じゃないのに)

  悔しくて唇を噛み締めるも、ゆっくりと立ち上がった。
  熱でフラフラと机や壁にてを付きながら、ドアまで行くとゆっくり開けた。
  廊下を少し歩いてキッチンに行くと、リビングでエルドラが韓流ドラマを見ていた。
  ルシカが居ない。

「……エルドラさん?」

  呼ばれたエルドラは振り向いた。
  ヨゾラの姿を見ると、慌ててソファーを飛び越しヨゾラに近づいた。

「大丈夫かの?寝ていなくて大丈夫かの?」

  ヨゾラの肩を掴むと、心配げにそう聞いた。

「少し寝れたから大丈夫だよ。……それより、ルシ兄は?」

  グラディエットはリビングのソファーの脇に寝そべって居た。

「ルシカは婿殿に連れ出して貰ったわ。……少し落ち込んでのう」
「……そっか。ずっと俺に付きっきりだったからな」
「粥を作って行った。少しでも食せ」

  ありがとう、とヨゾラは呟いた。

「今は水分補給したいから、もう少し寝たら食べるよ……」

  ヨゾラは苦笑いを浮かべると、冷蔵庫から新しい熱さまシートとスポーツドリンクを取り出した。

「そうかのう……。キツかったらちゃんと呼ぶのじゃぞ?あまり役には立たぬが……」

  エルドラは肩を落とした。

「うん。……エルドラさんが居てくれるのは安心するから」

  そう言うと、エルドラは明るい笑顔を見せた。
  ヨゾラはゆっくりと、部屋へと戻った。
  本を閉じ、ベッドに座る。
  熱さまシートを貼り直し、スポーツドリンクを一口飲んだ。
  ベッドボードにスポーツドリンクを置くと、倒れる様にベッドに寝そべった。
  あんな夢を見たなら、眠りたくない。

(……真幸、怒ってたな……。俺じゃねぇのに……)

  熱のせいか、瞼が重い。
  何時になったら熱が下がるのだろう。
  一向に良くなる気がしない。
  脚をベッドに上げた時だった、インターホンが聞こえ、エルドラだろうか廊下を歩く音がした。
  しばらくすると、部屋をノックする音がしておずおずとエルドラが扉を開けた。

「ヨゾラ……、同級生とやらが見舞いに来たのじゃが……」

  いつもは楼依が追い返す。
  と言うか、常磐が来ては楼依が追い返していた。
  さっきも来ていたが、楼依が居る時間だった為に追い返した。

「いつもの奴では無い。二人で来ておる」

  御手洗と富岡だろうと思うと、ヨゾラは身体を起こした。

「……大丈夫。……あんまり長い時間は無理だけど」

  そう言うと心配げな表情を浮かべたエルドラは、一瞬躊躇うも、御手洗達を部屋に入れた。

「……浅霧、押しかけて悪かった」

  御手洗はヨゾラの顔を見ると、済まなさそうにそう謝罪した。

「まさか、こんなに長く休むなんてさ……。タイミングがタイミングだったし……」

  富岡も座りながら頭を下げた。

「ごめん……、心配掛けちまって……」

  ヨゾラも俯いた。

「いやいやっ!俺達も調子に乗り過ぎたしっ!」
「傍から見ても、浅霧と神崎は仲が良いし、……つい」

  御手洗と富岡は頭を深々下げた。

「あ……、気、気にすんな……、っ」

  ヨゾラは慌てて立ち上がろうとしたが、身体がフラつく。
  尻餅を付くように、ヨゾラはベッドにへたり込んだ。

「無理すんなって。まだ良くねぇんだろっ!?」

  御手洗は立ち上がって、ヨゾラを支えた。
  熱で熱い身体、火照った息。
  一瞬、御手洗の背中がゾクッとした。

「あぁ……、悪ぃ……」

  ヨゾラは御手洗の手を振り解くと、小さく謝った。
  富岡はあ、と小さく声を上げると、鞄からガサゴソとファイルを取り出す。

「授業のノート、花井にコピーして貰ったんだった」

  花井は学年1の優等生である。
  ヨゾラはそれを受け取った。
  
「ありがと……」

  富岡の指先がヨゾラに触れると、富岡の指がピクっと動いた。

「……ゴメンな?迷惑、……掛けて」

  ヨゾラは困った様に笑顔を作り、そう言った。
  御手洗と富岡は、その笑顔に何故か見惚れてしまった。
  そして、二人は同時に首を横に振った。
  富岡の目に、壁に立て掛けてあるギターが入った。 

「あれ?浅霧ギターすんの?」

  富岡がそう聞くと、御手洗もギターに目を向けた。

「あー……、真幸のなんだ、それ……」

  ヨゾラもチラッとギターを見た。
  富岡はすみません、と謝った。 

「まぁ……、俺が家に居たら……、取りに来れないよな……。早く、熱下げねぇと……」

  ボソッとヨゾラは元気なく呟く。
  何故かヨゾラの表情が愁いを帯びて艶っぽく見える。
  
「あー……、なんだ。神崎は……、唐島が居るからな。余計に来れないかも」

  そう言いながら、富岡はヨゾラから目を逸らした。
  
「……そう、なんだな」

  夢の中で、聞き取れなかったのは唐島と付き合ったって言ったのだろうか。
  何だか胸の奥がキュッと痛くなった。

「でも、何かまた戻ったよなー、神崎。……黙って唐島に着いて行ってるみたいな?」
「そうそう、浅霧と違ってオカン崎が発動しねぇっての?なーんかつまんなくなったっつーか?」
「唐島はそれでも満更じゃねぇみたいだけどさ。結構、楽しかったんだけどなー……」

  御手洗と富岡の会話が頭に入らない。
  さっきの夢の真幸が頭を過ぎる。
  自分じゃない自分を冷たくて、軽蔑している様な視線。
  
「揶揄うって言い方は良くないけどさ。浅霧とつるんでた神崎なら、雰囲気が良い感じだったからついってのがあったんだ」
「そうそう。唐島相手だとオカン崎にならないからさ。それくらい神崎も素だったんじゃないかって」
「唐島が神崎の横に居るより、浅霧が居る方が人間味がある、気がする」

  御手洗と富岡は共に腕を組んで頷き合った。
  
「……そんな事はないと思うよ。俺は何も出来ないからさ……」

  ヨゾラは俯くと、寂しそうに言った。
  
「神崎みたいな世話焼きっては、世話焼きだから自分の事が分からないのかも」
「ベッド変わったってだけでも嬉しかったと思うし」

  そうかな、……ヨゾラは首を傾げる。
  
「壊しちまったのは俺らだけど……、浅霧が早退した日、神崎が唐島にブチ切れたし」
「……うん、メッセージ、見たし……」

  でも、真幸は出て行った。
  ヨゾラが我慢して早退なんかしなければ、真幸は出て行く事はなかったのに。
  考える程、熱が上がった様に頭がクラクラする。
  額に手を当て、深く深呼吸をする。
  少し紅い頬に、ゾクッとする。

「あ、身体キツイよな?ゴメンな、突然来てさ」
「そ、そうだな。ゆっくり身体休めて、また学校来いよ」

  突然、二人は慌て出した。
  
「ゴメン……、せっかく来てくれたのに……。何も出来ないで……」

  二人を見るヨゾラの目は、熱のせいか潤んでいた。

「いやいや、そんじゃ良くなったら連絡しろよ?」

  富岡が立ち上がると、御手洗も立ち上がった。
  そして、じゃーなー、と一声掛けると二人は部屋を出て行った。
  ドアが閉まると、ヨゾラは倒れこむようにベッドに身体を沈めた。
  エルドラが二人を見送る。
  何故か顔を赤らめている御手洗と富岡を見ながら、怪訝げに眉を潜めた。 
  



  











   


        
 
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