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淫魔と感情
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身体がダルい。
久々の倦怠感だが、妙に心地よい。
身体は綺麗にされているが、まだ胎の中に千皇が入っている様だ。
カグヤは何気に腹を摩る。
(……俺、千皇に抱かれたんだよな……)
一方的に抱かれた感がある。
背後から抱かれて、顔さえ見れなくて。
(俺だって、いろいろしたかったのにな……)
カグヤを抱いている時、どんな顔をしているかすら分からなかった。
(……口付けも、してくれなかった)
身体は何となくすっきりしている。
ただ抜くだけよりは、全然満たされていた。
(……あんなにされたのはハジメテだ)
一方的だったとは言え、あれ程まで前戯も丁寧で優しかったのは初めてだった。
いろいろしたかったとは言え、今まで数多く抱かれて来た中で一番満たされている自分がいる。
他の相手にもそうだったのか、と思うとモヤモヤするのだが、今は念願の千皇に抱かれたと思えば、少しだけ気は楽になった。
精を取るのが使命だとか、その場を乗切る為の手段だとか、そんな事も考える必要もなく、千皇とすればただ抱いただけかも知れないが、目が覚めても余韻が残るくらいには、身体が喜んで居るのが分かった。
最後は苦しくてあまり覚えて居ないが、今までで一番気持ち良かったのは否めない。
(……アイツ、気持ち良かったかな)
ふと、不安が過ぎった。
(……次は、あるのかな。……もし、あれば……)
カグヤはふぅっと一息着いた。
シャワーでも浴びて飯でも食うか、と上半身を起こした時だった。
腰がビキっと音を立てた気がすると同時に、激痛が走った。
「な、……んだ?」
自分に何が起こったか分からなかった。
取り敢えず、腰が痛い。
下半身が特に重い。
そう言えば喉も痛い。
「俺、……淫魔、なのに……」
奥の更に奥が疼く。
ゆっくりベッドから降りて立ち上がろうとするも、腰がガクガクした。
「マジか……。あんにゃろ……」
腰を抑えながら何とか立ち上がった。
脚がプルプルなりながら、ベッドルームを出ると、ソファーに人影が見えた。
「……あー、シャワー……」
ちょっと気まづい気もするが、一応その背後に声を掛けた。
「ん?」
振り返った人物は、千皇の様で千皇とはちょっと違う。
目付きは同じだが、小柄で髪の毛が長い。
男の様で女にも見える。
「あ、あれ?……千皇、じゃねぇ、気がする」
頭が混乱する。
「俺はアイツの兄貴だ」
「……あ、あにき?」
「兄貴の百瀬。……それより、頭のソレと背中のソレは本物か?」
百瀬と名乗った人物は、カグヤの背中を指さした。
「へ……?あっ!」
カグヤは羽やらを出しっぱにして居た事を思い出した。
見られたっ!カグヤは頭を抱えながら座り込んだ。
「何を見ても驚くなって言われたが、……なるほど」
百瀬は驚く訳でも無くそう呟いた。
「別に誰かに言いふらす気はねぇから安心しろ。起きたら飯食わせろって」
カグヤは恐る恐る顔を上げた。
「……それに、高熱が続いてんだろ?君の弟君。……俺なら診てやれるぞ」
「……熱?……ルシカか?」
「名前は知らん。姫神の彼氏君では無いみたいだ」
「……ヨゾラ?」
カグヤの表情が険しいものに変わった。
「まぁ、人外っての?診るのは初めてだけどさ。何とかなるかも知んないけど、何とかならねぇかも知れねぇ。けど、何もしねぇよりはマシ」
こっちおいでー、と百瀬は手招きした。
カグヤは戸惑う。
「千皇に似てんからドキドキしてんのか?」
それもあるが、本当に信用して良いのだろうか。
不安も心配もある。
「あの鉄仮面の何考えてんか分からない奴が俺を頼ったんだ。信用してやれよ」
確かに、千皇が楼依以外を頼るのは初めてだ。
しかも、兄弟がいるのは知って居たがこうして会うのも初めてだ。
「ヨゾラっつったっけ?俺、その子とも会ってる」
「……へ?」
「黒槌の連中に喧嘩売られて、俺の友達が助けたの。そんでな」
初見だ。
それなら大丈夫なのだろうか。
カグヤは立ち上がると、ゆっくり百瀬に近づいた。
「弟の奴は店に行った」
「……そうか」
百瀬の横に座る。
間近で見ると、千皇にますますそっくりで落ち着かない。
「名前は?」
「……カグヤ」
「姫さんか」
久々に言われた。
何だかちょっと腹が立つ。
「で、ビッチ君は……」
「びっち?」
「セックス好きであちこち食い散らかしてたんだろ?弾ともセフレでお気に入りって聞いたし」
弾とも知り合いだったとは、世の中狭い。
「で、千皇とはどうだった?」
「……どう?」
「抱かれたんだろ?」
百瀬は普通に無表情で聞いて来たが、思えば質問がストレート過ぎて恥ずかしい。
「あ……、ぇ?」
今までなら、カグヤも戸惑う事無くすんなり答えられて居た。
アイツはこーだ、ドイツはあーだと恥ずかしげもなく言えた。
だけど、どう説明して良いか分からない。
「説明つかないくらい気持ち良かったのか?」
百瀬はにっと笑った気がした。
「……大抵の奴は気持ち良かったって言うけど」
そうだとは思う。
気持ちは良かった。
「俺より、……アイツだろ」
ぶっちゃけ、そっちのが気掛かりだ。
弾を含め大抵は行為中、終わった直後はこっちが聞かなくても気持ち良いとか、良かったと言ってくれる。
抱き合ったり、口付けしたり、フェラチオや騎乗位何かは当たり前にしていただけに、そう言ってくれるのも当然だろう。
しかし、千皇とはそう言う触れ合う様な行為はさせて貰えなかった。
行くなと言わせといて他に行った奴だ。
他と同じは嫌だと言っても、もしかしてアレが通常かも知れない。
「アイツ次第ねぇ……」
百瀬は立ち上がるとキッチンへと行った。
何かを作業すると、キッチンの椅子に座った。
百瀬の目線はオーブンレンジに向いている。
沈黙が流れる。
ジーと言う小さい電子音が微かに聞こえるだけで、何だか落ち着かない。
こっちから話しかけるべきなのだろうと思っても、話題が見付からない。
それにしても、チーズが焦げるいい匂いがする。
そわそわしてる間に、チーンと音が部屋に響いた。
百瀬は立ち上がると、鍋つかみをはめるとオーブンレンジからグラタンを取り出す。
カグヤの目が輝いた。
百瀬はカグヤの目の前にグラタンを置いた。
「これ、食っていーのかっ!?」
輝いた目線を百瀬に向ける。
「……なるほどな」
百瀬は呟いた。
「何?」
「いや、食って良い。味の保証はねぇが」
カグヤは眩しいぐらいに目を輝かせると、両手を合わせていただきます!と元気よく叫んだ。
スプーンを取り、一掬いすると息で冷ますと、それを口に入れた。
幸せそうに口を動かすと、それを表すかのようにしっぽがユラユラ揺れた。
そのシッポを百瀬はギュッと握った。
「みぎゃっ!?」
驚いたカグヤは、変な声を上げ背中をピンと伸ばした。
「やっぱり本物か……」
カグヤのシッポを引っ張ってみたり、左右に動かしたりした。
「ちょっ……」
「あー、悪ぃ。初めて見るもんだから」
そりゃそうだろう。
ファンタジーの生き物なのだから。
「で、千皇が気持ち良いか、だっけ?」
百瀬はカグヤのシッポから手を離した。
話は続いていたのか、と思うとスプーンが止まった。
「俺は千皇じゃねぇから分かんねぇ」
そりゃそうだ。
「ビッチ君は、今までそう思ってセックスしてた?」
百瀬に聞かれて、スプーンを下ろすとカグヤは首を横に振った。
「相手が言ってたから、そうなんだなって。……でも、アイツ……、言わねぇし、どんな顔してんかも分かんなかったし……」
ボソボソとカグヤは答えた。
「……ふーん」
「それでなくてもさ……、モヤモヤしてたから、仕方なくだろうし……」
「モヤモヤ?」
「他の奴、相手にしに行ってたんだ。……行くな、って言ったけど、聞いてくんなかったし。俺が言えた義理はねぇんだけど」
ゆっくりとグラタンを掬った。
「……俺が思うに。アイツ、顔とか態度に出さねぇから読めねぇけど。今、ビッチ君をここに居させているっての、まぁまぁの奇跡なんだよな」
「……奇跡?」
「まずは誰かを入れるって、余程信頼してねぇと入れねぇし、誰かの事で俺に話すっつー事もなかった。誰かとセックスする時はホテルか知り合いのSMバーでヤってた」
「ここに俺を置いてるのは、……成り行きで」
「それに、……付いてる」
百瀬はカグヤの首筋を指差した。
「ここ……、濃厚な痕」
カグヤはそっとその首筋に手を当てた。
「見える位置にわざわざ付けるって、今まで無かったんだよなー。興味無さそうに見えて、結構独占欲強いのな」
独占欲、その言葉に身体が熱くなる。
魔王や弾も強そうだが、けして他とセックスをするな、とは言わない。
翠も独占欲が強そうだが、あくまでもお気に入りのセフレ程度だろう。
「珍しい事ばっかで、結構戸惑ってんの、コレでも」
千皇と同じで、百瀬からも感情を読み取れない。
「百瀬君は……」
「モモちゃんと呼べ」
その無表情でちゃん呼びはないだろう、とカグヤは思った。
でも、そう呼んでやらないと面倒になりそうだ。
「……モモちゃんは」
「おう」
「アイツがどうなって欲しいの?」
戸惑いながら、カグヤがそう聞くと百瀬は宙を見て首を傾げる。
「どうなって欲しいっつーか、……産まれた瞬間から鉄仮面だったんだ。そんな奴が人並みに感情あんなら、どんな面で相手を見るか見てみてぇだけ」
「……感情」
「ビッチ君だって、弟の幸せを願うだろ?俺も幸せまでは大袈裟だけど、……それなりにな」
「……」
「それに、あー言う奴が君見たいなビッチに振り回されるとか、面白い」
ククッと百瀬は笑った。
その笑いは若干不気味だ。
「惚れた相手がビッチとは思わなかったけど」
「……俺は、イマイチ良く分からねぇんだ。好きだ、とか、惚れたとか。……こっちに来る前から、アイツと会って余計に」
カグヤはグラタンを口に入れると、モグモグと口を動かし飲み込む。
「最初はヤケだったと思う。誘ってもしてくんねぇし。それでも、いろいろ教えてくれて、楽しいのも嘘じゃねぇ」
「……」
「こっちに来て、ルシカが楼依君と出逢って、お互い本心でそう言う関係になって、……すげぇ羨ましくて、悔しくて……。初めて弟を恨んじまって……」
「……」
「何度もアイツからの手ぇ振り払ったのに、……それでも、アイツが迎えに来てくれた時に、……嬉しかった。でも、モヤモヤが増えた」
「モヤモヤの原因は……?」
「分からねぇ……。けど、アイツが他の奴を抱くのに、俺は……」
ふーんと、百瀬は呟いた。
「……そんなにいろいろ感情があるなら、答えは出て居るんだけどな……」
「……答え?」
「まぁ、二人の心の問題だから、俺からは言えないけど、自信持っても良いんじゃねぇか、って話だ」
百瀬はカグヤの肩をポンポンと叩いた。
カグヤはスプーンを咥えると、それでも俯いた。
そう言われても、どうして良いか分からない。
「簡単じゃねぇけどな。アイツの周りは厄介な奴ばかりだ。でも、俺が知る限り、ここまで目を向けているのはビッチ君が初めてだ」
百瀬は頬杖を付くと、少しだけ表情を緩めた。
久々の倦怠感だが、妙に心地よい。
身体は綺麗にされているが、まだ胎の中に千皇が入っている様だ。
カグヤは何気に腹を摩る。
(……俺、千皇に抱かれたんだよな……)
一方的に抱かれた感がある。
背後から抱かれて、顔さえ見れなくて。
(俺だって、いろいろしたかったのにな……)
カグヤを抱いている時、どんな顔をしているかすら分からなかった。
(……口付けも、してくれなかった)
身体は何となくすっきりしている。
ただ抜くだけよりは、全然満たされていた。
(……あんなにされたのはハジメテだ)
一方的だったとは言え、あれ程まで前戯も丁寧で優しかったのは初めてだった。
いろいろしたかったとは言え、今まで数多く抱かれて来た中で一番満たされている自分がいる。
他の相手にもそうだったのか、と思うとモヤモヤするのだが、今は念願の千皇に抱かれたと思えば、少しだけ気は楽になった。
精を取るのが使命だとか、その場を乗切る為の手段だとか、そんな事も考える必要もなく、千皇とすればただ抱いただけかも知れないが、目が覚めても余韻が残るくらいには、身体が喜んで居るのが分かった。
最後は苦しくてあまり覚えて居ないが、今までで一番気持ち良かったのは否めない。
(……アイツ、気持ち良かったかな)
ふと、不安が過ぎった。
(……次は、あるのかな。……もし、あれば……)
カグヤはふぅっと一息着いた。
シャワーでも浴びて飯でも食うか、と上半身を起こした時だった。
腰がビキっと音を立てた気がすると同時に、激痛が走った。
「な、……んだ?」
自分に何が起こったか分からなかった。
取り敢えず、腰が痛い。
下半身が特に重い。
そう言えば喉も痛い。
「俺、……淫魔、なのに……」
奥の更に奥が疼く。
ゆっくりベッドから降りて立ち上がろうとするも、腰がガクガクした。
「マジか……。あんにゃろ……」
腰を抑えながら何とか立ち上がった。
脚がプルプルなりながら、ベッドルームを出ると、ソファーに人影が見えた。
「……あー、シャワー……」
ちょっと気まづい気もするが、一応その背後に声を掛けた。
「ん?」
振り返った人物は、千皇の様で千皇とはちょっと違う。
目付きは同じだが、小柄で髪の毛が長い。
男の様で女にも見える。
「あ、あれ?……千皇、じゃねぇ、気がする」
頭が混乱する。
「俺はアイツの兄貴だ」
「……あ、あにき?」
「兄貴の百瀬。……それより、頭のソレと背中のソレは本物か?」
百瀬と名乗った人物は、カグヤの背中を指さした。
「へ……?あっ!」
カグヤは羽やらを出しっぱにして居た事を思い出した。
見られたっ!カグヤは頭を抱えながら座り込んだ。
「何を見ても驚くなって言われたが、……なるほど」
百瀬は驚く訳でも無くそう呟いた。
「別に誰かに言いふらす気はねぇから安心しろ。起きたら飯食わせろって」
カグヤは恐る恐る顔を上げた。
「……それに、高熱が続いてんだろ?君の弟君。……俺なら診てやれるぞ」
「……熱?……ルシカか?」
「名前は知らん。姫神の彼氏君では無いみたいだ」
「……ヨゾラ?」
カグヤの表情が険しいものに変わった。
「まぁ、人外っての?診るのは初めてだけどさ。何とかなるかも知んないけど、何とかならねぇかも知れねぇ。けど、何もしねぇよりはマシ」
こっちおいでー、と百瀬は手招きした。
カグヤは戸惑う。
「千皇に似てんからドキドキしてんのか?」
それもあるが、本当に信用して良いのだろうか。
不安も心配もある。
「あの鉄仮面の何考えてんか分からない奴が俺を頼ったんだ。信用してやれよ」
確かに、千皇が楼依以外を頼るのは初めてだ。
しかも、兄弟がいるのは知って居たがこうして会うのも初めてだ。
「ヨゾラっつったっけ?俺、その子とも会ってる」
「……へ?」
「黒槌の連中に喧嘩売られて、俺の友達が助けたの。そんでな」
初見だ。
それなら大丈夫なのだろうか。
カグヤは立ち上がると、ゆっくり百瀬に近づいた。
「弟の奴は店に行った」
「……そうか」
百瀬の横に座る。
間近で見ると、千皇にますますそっくりで落ち着かない。
「名前は?」
「……カグヤ」
「姫さんか」
久々に言われた。
何だかちょっと腹が立つ。
「で、ビッチ君は……」
「びっち?」
「セックス好きであちこち食い散らかしてたんだろ?弾ともセフレでお気に入りって聞いたし」
弾とも知り合いだったとは、世の中狭い。
「で、千皇とはどうだった?」
「……どう?」
「抱かれたんだろ?」
百瀬は普通に無表情で聞いて来たが、思えば質問がストレート過ぎて恥ずかしい。
「あ……、ぇ?」
今までなら、カグヤも戸惑う事無くすんなり答えられて居た。
アイツはこーだ、ドイツはあーだと恥ずかしげもなく言えた。
だけど、どう説明して良いか分からない。
「説明つかないくらい気持ち良かったのか?」
百瀬はにっと笑った気がした。
「……大抵の奴は気持ち良かったって言うけど」
そうだとは思う。
気持ちは良かった。
「俺より、……アイツだろ」
ぶっちゃけ、そっちのが気掛かりだ。
弾を含め大抵は行為中、終わった直後はこっちが聞かなくても気持ち良いとか、良かったと言ってくれる。
抱き合ったり、口付けしたり、フェラチオや騎乗位何かは当たり前にしていただけに、そう言ってくれるのも当然だろう。
しかし、千皇とはそう言う触れ合う様な行為はさせて貰えなかった。
行くなと言わせといて他に行った奴だ。
他と同じは嫌だと言っても、もしかしてアレが通常かも知れない。
「アイツ次第ねぇ……」
百瀬は立ち上がるとキッチンへと行った。
何かを作業すると、キッチンの椅子に座った。
百瀬の目線はオーブンレンジに向いている。
沈黙が流れる。
ジーと言う小さい電子音が微かに聞こえるだけで、何だか落ち着かない。
こっちから話しかけるべきなのだろうと思っても、話題が見付からない。
それにしても、チーズが焦げるいい匂いがする。
そわそわしてる間に、チーンと音が部屋に響いた。
百瀬は立ち上がると、鍋つかみをはめるとオーブンレンジからグラタンを取り出す。
カグヤの目が輝いた。
百瀬はカグヤの目の前にグラタンを置いた。
「これ、食っていーのかっ!?」
輝いた目線を百瀬に向ける。
「……なるほどな」
百瀬は呟いた。
「何?」
「いや、食って良い。味の保証はねぇが」
カグヤは眩しいぐらいに目を輝かせると、両手を合わせていただきます!と元気よく叫んだ。
スプーンを取り、一掬いすると息で冷ますと、それを口に入れた。
幸せそうに口を動かすと、それを表すかのようにしっぽがユラユラ揺れた。
そのシッポを百瀬はギュッと握った。
「みぎゃっ!?」
驚いたカグヤは、変な声を上げ背中をピンと伸ばした。
「やっぱり本物か……」
カグヤのシッポを引っ張ってみたり、左右に動かしたりした。
「ちょっ……」
「あー、悪ぃ。初めて見るもんだから」
そりゃそうだろう。
ファンタジーの生き物なのだから。
「で、千皇が気持ち良いか、だっけ?」
百瀬はカグヤのシッポから手を離した。
話は続いていたのか、と思うとスプーンが止まった。
「俺は千皇じゃねぇから分かんねぇ」
そりゃそうだ。
「ビッチ君は、今までそう思ってセックスしてた?」
百瀬に聞かれて、スプーンを下ろすとカグヤは首を横に振った。
「相手が言ってたから、そうなんだなって。……でも、アイツ……、言わねぇし、どんな顔してんかも分かんなかったし……」
ボソボソとカグヤは答えた。
「……ふーん」
「それでなくてもさ……、モヤモヤしてたから、仕方なくだろうし……」
「モヤモヤ?」
「他の奴、相手にしに行ってたんだ。……行くな、って言ったけど、聞いてくんなかったし。俺が言えた義理はねぇんだけど」
ゆっくりとグラタンを掬った。
「……俺が思うに。アイツ、顔とか態度に出さねぇから読めねぇけど。今、ビッチ君をここに居させているっての、まぁまぁの奇跡なんだよな」
「……奇跡?」
「まずは誰かを入れるって、余程信頼してねぇと入れねぇし、誰かの事で俺に話すっつー事もなかった。誰かとセックスする時はホテルか知り合いのSMバーでヤってた」
「ここに俺を置いてるのは、……成り行きで」
「それに、……付いてる」
百瀬はカグヤの首筋を指差した。
「ここ……、濃厚な痕」
カグヤはそっとその首筋に手を当てた。
「見える位置にわざわざ付けるって、今まで無かったんだよなー。興味無さそうに見えて、結構独占欲強いのな」
独占欲、その言葉に身体が熱くなる。
魔王や弾も強そうだが、けして他とセックスをするな、とは言わない。
翠も独占欲が強そうだが、あくまでもお気に入りのセフレ程度だろう。
「珍しい事ばっかで、結構戸惑ってんの、コレでも」
千皇と同じで、百瀬からも感情を読み取れない。
「百瀬君は……」
「モモちゃんと呼べ」
その無表情でちゃん呼びはないだろう、とカグヤは思った。
でも、そう呼んでやらないと面倒になりそうだ。
「……モモちゃんは」
「おう」
「アイツがどうなって欲しいの?」
戸惑いながら、カグヤがそう聞くと百瀬は宙を見て首を傾げる。
「どうなって欲しいっつーか、……産まれた瞬間から鉄仮面だったんだ。そんな奴が人並みに感情あんなら、どんな面で相手を見るか見てみてぇだけ」
「……感情」
「ビッチ君だって、弟の幸せを願うだろ?俺も幸せまでは大袈裟だけど、……それなりにな」
「……」
「それに、あー言う奴が君見たいなビッチに振り回されるとか、面白い」
ククッと百瀬は笑った。
その笑いは若干不気味だ。
「惚れた相手がビッチとは思わなかったけど」
「……俺は、イマイチ良く分からねぇんだ。好きだ、とか、惚れたとか。……こっちに来る前から、アイツと会って余計に」
カグヤはグラタンを口に入れると、モグモグと口を動かし飲み込む。
「最初はヤケだったと思う。誘ってもしてくんねぇし。それでも、いろいろ教えてくれて、楽しいのも嘘じゃねぇ」
「……」
「こっちに来て、ルシカが楼依君と出逢って、お互い本心でそう言う関係になって、……すげぇ羨ましくて、悔しくて……。初めて弟を恨んじまって……」
「……」
「何度もアイツからの手ぇ振り払ったのに、……それでも、アイツが迎えに来てくれた時に、……嬉しかった。でも、モヤモヤが増えた」
「モヤモヤの原因は……?」
「分からねぇ……。けど、アイツが他の奴を抱くのに、俺は……」
ふーんと、百瀬は呟いた。
「……そんなにいろいろ感情があるなら、答えは出て居るんだけどな……」
「……答え?」
「まぁ、二人の心の問題だから、俺からは言えないけど、自信持っても良いんじゃねぇか、って話だ」
百瀬はカグヤの肩をポンポンと叩いた。
カグヤはスプーンを咥えると、それでも俯いた。
そう言われても、どうして良いか分からない。
「簡単じゃねぇけどな。アイツの周りは厄介な奴ばかりだ。でも、俺が知る限り、ここまで目を向けているのはビッチ君が初めてだ」
百瀬は頬杖を付くと、少しだけ表情を緩めた。
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